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2015年12月14日月曜日

もし終わりがあるなら教えてほしい。 - BABYMETAL@横浜アリーナ2Days




中学生の頃、映画に没頭した。近所にシネコンが出来たのをきっかけに毎週のように劇場に通い、日常生活では決して体験できない場所に誘ってもらった。恐らく、田舎の狭苦しい教室と繰り返される通学路から、どこか遠くの世界へ連れ出してもらいたかったんだろう。
それから何年もの月日が流れた。今度は全身を持っていかれた。しかもそれは平面ではなく立体で、映画ではなく生身の10代の女の子たちに。まさか現実で、見たことのない世界に足を踏み入れるとは思ってもみなかった。
例えようがない。目の当たりにした時、言葉を探してみても「物凄いものを観た」としか言えない。

巨大なキツネの神々のオブジェが煌々とその存在を照らし、ピラミッド型のゴンドラが3人を乗せて横浜アリーナの上空を一周するクライマックス。天を仰ぎ見る人々の手の届かない領域に達し、想像の遥か彼方へと飛んでいく。
それは、まるで全ての答えがここにあると確信してるかのような自信に満ちた表情。恐竜の鳴き声のような強大な轟音を味方に付けて、全力を振り絞る。
"トリロジー"の完結編。
これが、7人組のメタルバンド・BABYMETALの真髄に迫る2日間だ。

『BABYMETAL WORLD TOUR in JAPAN"THE FINAL CHAPTER OF TRILOGY"』1日目、ACT-1。
1月のさいたまスーパーアリーナ『新春キツネ祭り』、6月の幕張メッセ『巨大天下一メタル武道会』、そして12月の今日。この3点を繋げるトライアングルが示す2015年の締め括りと、"THE FINAL CHAPTER"の意味を探るべく横浜アリーナへ。

会場の外は相変わらず赤と黒のグッズTを着た人々でごった返している。コープスペイントで"世を忍ぶ仮の姿"を捨てた人、海外から来たであろう外国人など、幅広い客層が目に入る。会場前の飲食店ではBABYMETALのCDが大音量で流れていて、開演を待つ人々を暖房の効いた室内へ手招きしていた。
寒空の中、スタンディングのCブロックのチケットを握りしめながら待機する。1時間近く半袖で立っていてもそれほど苦痛に感じないのは、すぐそこに新たな祭りが待ち構えているからか、YUIMETALが観れるからか。





3ヶ月ぶりにBABYMETALの登場を待つことが、いつになく体調を全快させてくれる。睡眠不足を身体がすっかり忘れるし、エナジードリンクでも飲んだかのように目が冴える。どんな薬より効いている。ようやく入場列が動き出し、Cブロックの後方に位置を決める。
ここから眺めるステージは真っ暗闇に包まれ、何も見えない。この時点ではシンプルなステージだと思っていた。WORLD TOURの一環として、歌とパフォーマンスと演奏の一本勝負で決めるものだと勘違いしていた。
開演前BGMとして、『Kerrang! Awards』で邂逅したイギリスで絶大な人気を誇るメタルコアバンド・Bring Me The Horizonの最新アルバムから2曲流れている。ボーカルのOliver SykesがREADING FESTIVALでBABYMETALのタンクトップを着用し、公式Twitterに「一緒にツアーしよう」と絡んでいた。そのラブコールに応えるかのごとく、開演を待つモッシュッシュメイトたちの耳に大音量で降り注いでいる。





横浜アリーナは2Daysとはいえ、さいたまスーパーアリーナや幕張メッセと比べると規模は小さめだ。とはいえ、360度見渡すと人がお米粒サイズに見えて1万数千人のスケールをやっぱり感じる。
開演前のアナウンスが始まり、ステージ両サイドのモニターにBABYMETALのロゴが赤く照らされる。すでに客席はBABYMETALコールで沸き立ち、やがて会場が真っ暗闇に包まれると歓声が地鳴りのように響く。
ついに始まる。今日と明日で何が終わり、何が始まるのか。新たな世界の扉を開くBABYMETALの2日間が、ようやく幕を開ける。

「メタルレジスタンス第3章"トリロジー"。それは三篇が重なり合い、我々を奇跡へと導く物語。選ばれし者たちのメタルの魂は光となり、BABYMETALを輝かせる。」

ナレーションとともに、映像の中には『新春キツネ祭り』と『巨大天下一メタル武道会』の光景が映し出され、"THE ONE"を示すトライアングルが浮かび上がる。
メキシコ、カナダ、アメリカ、ドイツ、フランス、スイス、イタリア、オーストリア、イギリス、そして日本と続いたメタルレジスタンス第3章。その2015年の総括として、この日のライブが用意されていることを告げる。そして次の瞬間、客席は大きな歓喜の声に包まれる。

「その光を集めて、"新たな調べ"がもたらす奇跡によって我々はひとつになるのだ。」

BABYMETAL用語、"新たな調べ"=新曲。映像から「僕らの声」「僕らの夢」「僕らのあの場所へ」という聞いたことのない言葉のテロップが飛び込んでくる。まさか、まさか、と思っていたら息を継ぐ暇もなく、ステージが眩い光に包まれてその全貌が明かされる。
スフィンクスを模した巨大なキツネの神々のオブジェ3体が、中2階でその存在を誇らしげに示している。ギターの神、ベースの神、ドラムの神のそれぞれが中2階から1階へと伸びる3つの階段を隔てて立ち、まるでBABYMETALの3人を召喚するように演奏を鳴らす。
2015年の締め括りとして豪華なステージのセットが用意されていたのだ。『LEGEND"1997"』を思い起こす巨大な像の登場に目を奪われ、その時点で今日が特別なものになると確信してしまう。
この曲はどこか聴き覚えが……と思ったら、『巨大天下一メタル武道会』のエンディング。3人が観客に背を向け、トライアングルへと姿を消していくシーンで鳴っていた「ラララ〜♪」のメロディが印象的な曲。これが"新たな調べ"なのか。あれからストーリーは続いていたのだ。
次の瞬間、再び大きな声が漏れてしまう。3人がステージ天井からピラミッド型のゴンドラに乗って姿を現し、観客はそこにめがけて一斉にフォックスサインを掲げる。まるで儀式のように厳かに、壮大なイントロとともにそのゴンドラはステージにゆっくりと降りていく。

地上に着地した3人は毅然とした態度で真っ直ぐ前を見つめ、ついにSU-METALが口を開く。すると、まさかの英語歌詞。歌声が放たれた瞬間、興奮と感嘆が混じった歓声が響く。ほとんどの観客が地蔵と化す。いまだかつて無い始まり方にいきなり度肝を抜かれ、その新曲のクオリティにただ黙って聴き入れるしか術はない。

「We are the one, together we are the only one......」

YUIMETALとMOAMETALはバラードの曲調に合わせて、表情を変えずにゆっくりフォックスサインを掲げる。SU-METALの歌唱力は凄みを増し、彼女が17歳であることをすっかり忘れてしまう。海外の様々なシーンで英語力の上達を垣間見れたけど、この新曲の英語歌詞はその総括といったところか。いわゆる"J-POP的な英語"ではない。ワールドワイドを視野に入れた本格的なもので、野心溢れるものでしかない。
ついこないだ、ベーシストの亀田誠治氏が自身のラジオでBABYMETALをこのように分析していたばかりなのに。
「驚くことに、BABYMETALの歌は全編日本語歌詞です。我々日本人が昭和の時代から挑戦し続けてきた海外進出のカギは、実は英語歌詞ではなかったんです。言語ではなかったんです。アーティストは得意技で勝負すればいい。そんな答えをBABYMETALは教えてくれたんです。」
ここからまた新たにBABYMETALは旅立つ。 SU-METALの英語歌詞を武器に、本気でグラミー賞獲るのかしらってなくらいのクオリティに震え上がる。
「僕らの声 僕らの夢 僕らのあの場所へ」
後半にかけてYUIMETALとMOAMETALが次第に笑顔を浮かばせて、タイトル不明の"新たな調べ"が終わる。この時点でもう帰ってもいいんじゃないかってくらい満足する。が、ここからBABYMETALはさらに畳み掛けるように総攻撃を仕掛ける。

聴き覚えのあるノイズとともに、「Give me......Give me......」という声がどこからともなく聞こえ、あの曲の到来を何度も何度も溜め込む。「Give me......」心拍数が上がる。「Give me......」もう我慢できない。と思ったその瞬間、音が鳴り止む。
「Chocolate」バーーーーーーン!!!!!
某メタル雑誌の名前じゃない。『ギミチョコ!!』の始まりとともに爆竹が鳴り、先ほどまで静止していた3人がメタルダンスユニットとしての本領を発揮する。か、か、かっこええ。その演出含めて、思わず走り出したくなる衝動にかられる。実際に、すぐ近くでサークルモッシュが発生。走りたいよね。うんうん、その気持ちよーく分かるよ。

"新たな調べ"で地蔵と化していたはずの客席が、途端に指で掻き乱されるように荒れ狂う。まるで戦場になる。間奏のコールアンドレスポンスが始まると、SU-METALが「お前らもっと声出せるだろが!」と体育会系のごとく叫び、えっ!?はい!すみません!頑張ります!!!と文化系の自分は萎縮する。大人になって女の子に「お前ら」って言われるなんて思ってもみなかったよ。
しかし、その直後に3人が1つのマイクに顔を寄せ合って「やるときゃやるぞ!」なんて可愛らしい声で呼び掛けるのだから、顔がにんまり。今日はいきなり感情が忙しいです。

『いいね!』が始まるとレーザービームがキツネの神々の目から離れたれ、その壮大な演出に思わず笑ってしまう。「よーこアリッ!」とレスポンスを求めるSU-METALの笑顔は、先ほど新曲で見せたオーラを一切消して無邪気なもの。振り幅が大きい。得体が知れない。今回のライブは『SU-METAL聖誕祭』とは銘打ってはいないが、どこかしら"主人公感"が半端ない。
『あわだまフィーバー』はまだ音源化されていないのに、客席では3人に倣って両腕で輪を描く振りが完成されている。神バンドのソロ後、『Catch me if you can』で意識が爆発する。この曲がきっかけでBABYMETALに取り憑かれた身としては「1、2、1、2、3、4!」から入る瞬間の興奮といったら、たぶん言語化したら「あああーーーーーぎゃーーーーあああーーーーー」と事案が発生せざずをえない。
ダブステップの間奏のダンスに見入る『ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト』、寝込んでから起き上がる姿が愛らしい『ド・キ・ド・キ☆モーニング』と、深夜から朝にかけて胸の鼓動は収まらない。モニターに映し出される中継カメラのスイッチングがいつも以上に素晴らしく、3人が目覚める瞬間の「リンッリンッリンッ♪」で即座にそれぞれの寝起きの表情を映し出す。他にも「分かってる」としか思えない、WOWOWさんのカットのセンスに脱帽です。

BABYMETALが7人組のメタルバンドである証拠となる、神バンドのソロ演奏。すでにある会場では披露されたらしいが、この曲を聴くのは初めて。
『Road of Resistance』を思わすギターリフから始まり、中盤にかけて"泣き"のベースラインがたまらない。マシンガンのように打ち鳴らされるドラムと、完璧に作り上げられた構成。決して3人の休憩時間ではない。一切止むことなく鳴らされる音が頼もしく、この世界観から一時も抜け出す余地を無くさせる。
こうして始まる『紅月-アカツキ-』。先ほど"主人公感"と表したけど、この日は正直もはやSU-METALのものです。「アカツキだーーーっ!!!」からマントを翻し、ダークヒロイン然として振舞う。これが世界を迎え撃つオーラなのか。間奏で中2階から降りる階段の途中で立ち止まり、交互に繰り出す超絶プレイのギターの神に指を差す。かっこよすぎるよ……。
シリアスな曲調から一転、客席を笑顔で満開にさせる『4の歌』。YUIMETALとMOAMETALのBLACK BABYMETALが横浜アリーナの端から端までダッダッダダダッダダダダッのリズムに合わせて「ヨンヨンッ!」と叫ばせる。
会社ではスーツに身を包み、部下を何人も従えるおじさんもヨンヨンッ。家では堅く経済新聞を広げ、普段無口なお父さんもヨンヨンッ。日本人から外国人まで、子どもから会社の重役まで、全員がヨンヨンッ。人類が皆、4の倍数でおかしくなっていく。最高じゃないですか。
中盤の煽りで、「上手ーーー」と叫びながらステージの端へ駆け抜ける2人。MOAMETALが「おっきい声だせよーーー」と力強く煽り、YUIMETALが「横アリ~全力で声出していくぞ~」とふわっとした言い方で煽る。この2人の似てるようで真逆のコントラストが面白い。

YUIMETAL「みんなの全力ってそんなもんか~〜〜?」

これが今日の一撃必殺の格言。力強く煽っているつもりでも、YUIMETALはどこかオットリしているのが素晴らしい。いつの間にかSU-METALの背丈に近いほど大きくなった。ぼ、ぼ、僕たちの全力とはそんなものだろうかね、ぜ、ぜ、全力とは一体何なのかね、と存分に哲学に浸ったのでソクラテスかニーチェかプラトンの名言と並べてみたい。みんな悩んで大きくなった。(追悼、野坂昭如)

笑顔は絶えることがない。その後、見たことのない紙芝居ムービーが始まる。「君には聞こえるだろうか?命をかけて戦う魂の叫び声が。」武術のシルエットが炎を背景に浮かび上がり、カンフー映画のサントラのような音楽が鳴り響く。
次の瞬間、見覚えのある顔がドーンと映像に現れる。「熱く。もっと熱く。極限まで熱くなった時、人は本当の自分に出会えるのだ。」ナレーションとともに松岡修造とみられる顔が浮かび上がり、客席が爆笑に包まれる。雑誌『GQ』のMEN OF THE YEAR 2015の授賞式でBABYMETALと横に並んだばかり。どうりで冬なのに暑苦しいわけだ。今までレディー・ガガやフレッド・ダースト(リンプ・ビズキット)など紙芝居に登場したスターにはそれなりに意味を感じたが、そこかよ!って戸惑いの笑いに溢れていた。どこかで加山雄三を期待していたのは僕だけじゃないはずだ。
「過去も未来も捨て、今に一生懸命なひとつの人生に命をかけて戦うのだ。"新たな調べ"とともに魂の戦いは始まる。」
って、また新曲を楽しめるとは。今回は2015年の総括だけでなく、2016年の展望から感じさせる。鈍い音が鳴り出し、重厚感のあるメタルサウンドとともに3人が空手のような振り付けで動き始める。
「セイヤソイヤ戦うんだ〜♪」とSU-METALが歌うサビと、合間合間に入る「オスッ!」というYUIMETALとMOAMETALの掛け声が印象的。『ギミチョコ!!』『あわだまフィーバー』が初めて繰り出された時同様、まだ完全には乗り切れないが、今後定番になっていくのだろう。
間奏で倒れたYUIMETALとMOAMETALをSU-METALが手を差し伸べて起こし、「ありがとう。うん。顔笑るよっ」といった様子で小さくガッツポーズを作るMOAMETAL。力強いように見えて、その根本には血と汗が滲んでいる。そこではまるで、完成されたステージばかり魅せてくれるBABYMETALの普段は見せない特訓の日々を覗けた気がして、ちょっぴり泣けてくる。
そのまま別の新曲(通称:違う)が立て続けに繰り出され、こうなると音源化にますます期待が高まる。「違う  違う♪」の歌に合わせて、YUIMETALとMOAMETALが両手を勢い良く振りながら歩く仕草が可愛すぎる。

「キツネ〜♪キツネ〜♪」と遠くで響く歌声とともに『メギツネ』が始まり、横浜アリーナは一気にお祭りモードに。『イジメ、ダメ、ゼッタイ』はいつものウォール・オブ・デスを呼びかけるムービーで始まり、Cブロックでも大きな空洞が生まれる。
「ウォール・オブ・デス!ウォール・オブ・デス!ウォール・オブ・デス!」
ナレーションの声を掻き消すほど大きな掛け声が客席から生まれるが、SU-METALがルルル〜♪と歌い始めると途端に黙り込むので礼儀正しい。やがて演奏が始まるとともにステージ前に炎が幾つも柱を立て、目の前で両腕をクロスするSU-METALがそれを解くと、横浜アリーナの景色が一変する。
ステージの端から端へ全力疾走するYUIMETALとMOAMETALに倣い、ウォール・オブ・デスが幾つも発生。ステージから離れたCブロックでも距離を関係なくし、整然と立ってはいられない衝動にかられる。
クライマックスは『ヘドバンギャー!!』『Road of Resistance』。「命が続く限り 決して背を向けたりはしない」に2015年、どれほど勇気づけられたことだろうか。歌詞の通りに「今日が明日を作る」としたら、ACT-1からACT-2にかけて作り出される新たな伝説の基盤として受け止める。
「See You!」と言われても、明日もまた会える安心感がある。2日間連続は日本武道館以来で、もっと言えばこの安心感は初めての体験だ。あの時はYUIMETALの転落事故もあって気が気じゃなく、満を持して2Daysを心から参戦できる。
BABYMETALを導く"伝説"とは何か。エンディングムービーのナレーションが語り始める。

「トリロジー。それは三編が重なり合い、我々を奇跡へと導く物語。新たな時代の幕開けとともに動き出したのだ。」

トライアングルが亜空間で回転し、3人のその後の運命を示す映像が流れる。「三位一体から生み出される強大なパワーによって、ついにトリロジー最終章は完成する。」一体どうなってしまうのか。「終わりの先の向こう側には、一体何が待っているのか。」何の告知が来るのか。「その結末は、キツネ様のみぞ知る……」えっ?

"To be continued......"

新たな時代の幕開けを告げるエンディングは、2015年のBABYMETALのトリロジー=さいたまスーパーアリーナ・幕張メッセ・横浜アリーナの3点を繋げたトライアングルの中心にズームして終わる。
何が終わり、何が始まるのか。度肝を抜かれる準備はできている。明日、その真相が明かされる!



(BABYMETAL 公式Twitterより)


そして挑んだ、2日目のACT-2。あいにくの雨模様でも、開場時間の15時半頃には雨が上がっていた。

昨日の"新たな調べ"の衝撃から抜け出せず、ほとんど寝付けなかった。ACT-1の余韻とACT-2の期待が相まって興奮が増し、2Days参戦の贅沢な悩みでしかない。遠足前の小学生の気分と言い表したいが、当時は遠足が苦手な少年だったので遅れてやって来た少年心とでも言っておきたい。

今回は友人のおかげもあって、落選続きのチケットを同伴させていただくことに。ギターの神、ベースの神、ドラムの神がいれば、チケットの神もいる。シート席のCブロック。ステージと客席が真正面に一望できる位置に立ち、開演を心待ちにする。
アナウンスが終わり、会場全体が真っ暗闇に包まれる。ついに始まる。2015年の総締めくくりとなる、"THE FINAL CHAPTER OF TRILOGY"の正体がようやく明かされるのだ。
昨日とは違い、定番のあのイントロが流れる。時計の針のように回転する"THE ONE"のトライアングルを背景に、物々しいナレーションから今日がとんでもない事件が起きる予感しかない。

「ついにその時がやってきた。メタルレジスタンス第3章"トリロジー"の終焉。物語の行く末に未来はあるのか?未来を変えることはできるのだろうか?」

幾度となく"終わり"を匂わせてきたナレーションは相変わらず、今日で何かが終わることを告げている。 「その答えを導くために、我々は最後の力を振り絞る。メタルレジスタンス第3章"トリロジー"が、いよいよ最終章を迎える。」

ステージが光に照らされ、昨日同様に巨大なキツネの神々のオブジェが中2階に立ちはだかる。『BABYMETAL DEATH』のイントロとともにBABYMETALの3人が現れ、「DEATH!DEATH!DEATH!DEATH!」の掛け声とともに客席が一斉に飛び跳ねる。
シート席後方から見ると、客席含めた光景が壮大で言葉を失う。BABYMETALのライブは近くからでも遠くからでも、別の楽しみ方がある。スケールを感じるなら断然後方だが、臨場感を楽しむからやはり前方。しかし、どこにいてもその迫力を損なうことはない。以降、SU-METALのソロ曲が『紅月-アカツキ-』から『悪夢の輪舞曲』、BLACK BABYMETALの『4の歌』が『おねだり大作戦』に変わった以外はセットリストは全く同じ。
ただ、クライマックスの"事件"を除いては。

SU-METALのオーラが昨日より格段に違う。何がそうさせているのか分からない。昨日彼女に視線を奪われた分、今日はYUIMETALとMOAMETALに注目しようとしていた。それでも、SU-METALの圧倒的な存在感にひれ伏してしまう。
 『悪夢の輪舞曲』は相変わらず、一人で自分自身と戦っているようなSU-METALの振り付けがかっこいい。BABYMETALは信念を貫いている。そこに勝敗は存在しない。他者と比べない。戦いの相手がいるとすればそれは己自身だ。
ヘミングウェイの言葉に「真の気高さとは他人より優れることではなく、過去の自分を超えることだ」とあるけど、まさにその通り。彼女たちが目指す"オンリーワン"には限りがない。
限りがない分、どこまでも突き進めるのかも知れない。『おねだり大作戦』の可愛さにも限りがなく、MOAMETALがYUIMETALの肩に手を回す「パパ大好き♪」はいつだって変な声が漏れる。
 
『Road of Resistance』が終わり、場内が明るくなる。鳴り止まないBABYMETALコールが続く。途端に会場が暗くなり、昨日のオープニングを予感させるムービーが流れる。まさか、まさか、と思ったらやはり。
"新たな調べ"が最後に再び鳴り始める。昨日は衝撃により、意識が飛び散らかっていたが今日はまともに受け止められた。昨日と違うのは、3人がステージに着地しないこと。ピラミッド型のゴンドラに乗ったままSU-METALが歌い続け、3人は共に正面を見ずに3つの別々の方角を向いている。
それが終盤になると、ゴンドラが動き出して横浜アリーナの空中を一周する。「ラララ〜♪」と歌いながら、時折不安定に揺れるピラミッドの上で一寸の狂いも見せず堂々と振舞う。人々は天を仰ぐようにフォックスサインを3人に掲げ、360度客席の上を移動するゴングラを目で追う。
ここまで平然と書いてみたが、なんか違う。あれも違う。これも違う。気になっちゃってどうしよう。気になっちゃってどうしよう。何度推敲しても、この興奮を書き表そうが「何か違う」。BABYMETALは神話に近づいていく。伝説とは名ばかりではない。ライブでのゴンドラ演出はジャニーズなどの公演でよく話には聞くので、別段変わったことでもない。それなのに、この光景を特別に感じずにはいられない。
こんな景色、いまだかつて見たことがない。映画でもライブでも何でも、現実では決して味わうことのできない体験を目的にしている。その全ての衝撃をまた新たに更新したのが、この日の"新たな調べ"だ。

「もし終わりがあるなら教えてほしい」

英語歌詞に溢れる中、この日本語歌詞が耳から離れない。SU-METALが歌う"終わり"とは何なのか。いつ訪れるのか。そんなことを考えながら、遠く離れたシート席のCブロックにも近づいてくるゴンドラを前に、全身の感覚がなくなる。今、自分は何を観ているのか。昨日のYUIMETALの「みんなの全力ってそんなもんか~〜〜?」同様、この歌詞を格言として掲げたい。
ピラミッドはやがてステージの奥へと消えていく。それは、BABYMETALの新たな旅立ちを暗示していたのだ。

「終わりの先の向こう側には、一体何が待っているのか。」この答えがついに明かされる時が来た。
2015年のバイオグラフィーが『スターウォーズ』のオープニングのテロップのように奥へと流れていき、やがて『E.T.』を模したフォックスサインを異星人?らしき手と交わすイラストが映し出される。
「ついに、メタルレジスタンス第3章"トリロジー"は完結したのだ。BABYMETALは消える事のない光を集めながら、新たなステージへと旅立った。我々を頂点へと導く、奇跡の物語。」
ナレーションはメタルレジスタンス第3章の終焉を告げ、そして2016年の活動の指標を表す。

「運命の時ーー。迫り来るフォース・インパクトとともに、メタルレジスタンス第4章の幕が上がる。」

新たな章が始まる。2nd ALBUMリリースの文字。"World Wide"という言葉に興奮が収まらない。4月1日に全世界同時発売することと、新たなメタルレジスタンス第4章の始まりが告げられる。さらに、すでにアナウンスされている「異国史上最大」のイギリス・ウェンブリーアリーナのワンマンライブ。もはやBABYMETALに限界はない。

「2016年のワールドツアーはここ日本で最終公演、史上最大のメタルレジスタンスを行う。"THE ONE"が集い、奇跡を起こす時が来たのだ。」

"史上最大のメタルレジスタンス"を日本で!
この時点で歓声の大きさは臨界点を突破していたのに、さらに畳み掛けてくる。
昨日同様に、映像がトリロジー=さいたまスーパーアリーナ・幕張メッセ・横浜アリーナの3点を繋げたトライアングルの中心にズームする。
「歴史は繰り返される。」
その言葉とともにかつての『コルセット祭り』の光景がフラッシュバックし、次の瞬間、いまだかつてないほどの大歓声で横浜アリーナが揺れる。
「あの日、あの時、あの場所で。運命の時計の針は動き出したのだ。もう、誰にも止めることはできない。」

浮かび上がる"TOKYO DOME"の文字。
大きな歓声が上がる。
メタルレジスタンスの最終楽章として、東京ドーム公演が発表される。その真相は4月1日=FOX DAYにすべてが明かされるという。
ライブが終わっても拍手と歓声が鳴り止まない。興奮を消化しようとしてもすぐには難しい。有り余る熱量を叫び声で少しでも放出することで、この衝撃を受け止めるしか術はない。
周囲から次々とため息が漏れる。「はぁ〜」「うわぁ〜」「すげぇ〜」みんなしてボキャブラリーを失っている。今なら誰とでも仲良くなれる気がする。それくらいの出来事をここにいる全ての人と共有している。そしてその感動はやがて横浜アリーナを突き抜けて、全世界へと届いていくのだろう。

これが歴史に残る瞬間か、と噛み締めた。ずっと伏線を敷かれていたのだ。
1月のさいたまスーパーアリーナ、6月の幕張メッセ、12月の横浜アリーナ。その3点を結ぶトライアングルの中央に東京ドームが位置する。
よく出来た物語だが、これがフィクションではなくノンフィクションであることに改めて驚く。そしてこの物語がX JAPANの軌跡をなぞっていると考えると、東京ドーム公演が意味するものとは一体何なのか。「惑星に還る」『E.T.』のイラストと、映し出される赤き月は何を示すのか。『青い夜』が『赤い夜』に、『白い夜』が『黒い夜』に反転した。そう考えると、X JAPANの東京ドームでのラストライブ『最後の夜』は、BABYMETALの場合は一体どうなってしまうのか。
「歴史は繰り返される。」その言葉の意味とはーー。

 『最後の夜』が『最初の夜』に反転することを予想する。希望的観測を含めて、BABYMETALの物語はまだまだ序章に過ぎないと思っている。



(BABYMETAL 公式サイトより)


数々の謎を残したまま、メタルレジスタンスの第3章は幕を閉じた。トリロジー最終章のモチーフとなった映画『ダークナイト ライジング』のキャッチコピーを借りるなら、「伝説が、壮絶に、終わる。」まさにその通りだ。
その本当の結末はどう迎えるのか。「もし終わりがあるなら教えてほしい」とはいえ、どことなく"終わり"から遠ざかりたくなる。すべてものには必ず終わりが来る。それはBABYMETALが幾度となく告げてきたことだ。

音楽でこんなことが出来るんだ、って衝撃を新たに更新する。SU-METALのボーカルはさらに凄みを増し、風を切るようなYUIMETALのキレキレの ダンス、観る人の笑顔の理由にさせるMOAMETALの表情が三位一体で迫り、モッシュッシュピットが指で掻き乱されたように荒れ狂う姿が壮観でしかない。
BABYMETALは"応援"が似合わない。徹底的に完成されたものを見せてくれるから、応援する間もなくこっちがもっと頑張れよって言われてる感覚に陥る。
幼さに甘えず、可愛さに頼らない。昨日と今日の90分間ノンストップのショーで改めて感じたのは、真の可愛さとはかっこよさから生まれるということだった。

2016年、3度目のワールドツアーが始まる。すでにイギリスのウェンブリーアリーナとアメリカのロックフェスの出演が決定し、昨年にも増して海外での活動が盛んになるだろう。
先日のフランス・パリのライブハウスのテロ事件を受けて、真っ先にBABYMETALのことを考えてしまった。いつも以上に海外の凄惨な出来事を生々しく感じてしまう。彼女たちもかつて行ったことのある国でのエンターテイメントの場における悲劇を、決して他人事とは思えない。

"THE ONE"=「メタルで世界をひとつにする」なんて、夢物語でしかない。世界がひとつになるわけがない。そのはずなのに、まるで少年のように夢を追いかけてしまう。なぜなら、BABYMETALは絶対にありえない事を成し遂げてきた。フィクションをノンフィクションに変えてきた。その力から希望を抱いてしまう。
音楽は言葉の壁を越え、人種や性別や世代すら越える。その光景をBABYMETALを通して見てきた。YouTubeで、Twitterで、この目で。見た目の恐い全身タトゥーのニイちゃんが愛らしい笑顔を浮かべ、やがてさくら学院のフラッグすら掲げてステージに目を輝かせるなんて。
これは今までにあり得たことだろうか。日本から海外まで、あらゆる角度で常識を覆してきた。だとしたら、くだらない世界の常識すら変えられるのではないか?バカげた誇大妄想と思われるかも知れないが、『Road of Resistance』を全身に受けてしまったら、彼女たちのノンフィクションを期待せずにはいられないのです。

『スターウォーズ』から『ダークナイト』、そしてついに『E.T.』へ。
映画を超越する現実のストーリーは今後、『未知との遭遇』を果たし、その『トワイライト・ゾーン』で何を見つけるのか。『太陽の帝国』で産み落とされたその存在は、この『ロスト・ワールド』でどんな景色を見せてくれるのか。
しかし、誰も追いつけやしない。だって、『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』ってかくれんぼしてるんだもの。
ということで、いつかスティーブン・スピルバーグ監督がBABYMETALを映画化してください。


BABYMETAL WORLD TOUR 2015 in JAPAN - THE FINAL CHAPTER OF TRILOGY -
2015.12.12@横浜アリーナ

セットリスト
01:新曲

02:ギミチョコ!!
03:いいね!
04:あわだまフィーバー
05:Catch me if you can

06:ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト
07:ド・キ・ド・キ☆モーニング
 
08:紅月-アカツキ-
09:4の歌
10:新曲

11:新曲 12:メギツネ
13:イジメ、ダメ、ゼッタイ
14:ヘドバンギャー!
15:Road of Resistance



2015.12.13@横浜アリーナ
セットリスト
01:BABYMETAL DEATH

02:ギミチョコ!!
03:いいね!
04:あわだまフィーバー
05:Catch me if you can

06:ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト
07:ド・キ・ド・キ☆モーニング
08:悪夢の輪舞曲
09:おねだり大作戦
10:新曲

11:新曲
12:メギツネ
13:イジメ、ダメ、ゼッタイ
14:ヘドバンギャー!
15:Road of Resistance

アンコール
16:新曲

10 件のコメント:

  1. さすが作家。とても良かったで。

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    1. そう言っていただき励みになります。読んでくださり、ありがとうございました!

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  2. ACT-1参加の記憶が、昨日の事のようによみがえりました!

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    1. ACT-1の衝撃は忘れられませんね。読んでくださり、ありがとうございます!

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  3. さすが!一気に読んでしまいました!
    参戦出来なかったので、感動しちゃいましたよ!

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    1. ありがとうございます!現場の雰囲気が少しでも伝えられていたらと思います。

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  4. この記事を見て絶対東京ドームは行こう!と思いました。
    來麗 さんも参戦すると誓ってました!

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    1. そう言っていただきありがたいです。東京ドーム、絶対ですよね…

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  5. 私もACT-1参加しました。初参加です。最高でしたね。
    14歳になる孫を持つ爺さんとしては30年ぶりのlive参加にはハードルがたくさんありました。
    爺さんがアイドル?4の歌の合いの手?チケットの買い方は?
    スタンディングは体力的に無理。
    zepp等THEONE先行三度の落選の後、やっと手にしたHP先行チケットです。
    娘から「お父さんはスタンディングはダメよ」と言われてもいましたが、
    HP先行はシートのみ。でも紅月で少し座っただけでずっと立ち通しでした。
    ダメジャンプはすると着地でよろめいて他の席に迷惑を掛けるので、
    ジャンプしてる振りでしたけど。
    ドームもそうですけど、zeppのような小さな会場でも見てみたいですね。

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    1. 元日から熱いコメントを書いてくださり、ありがとうございます。ご年配の方にコメントを戴き、すごく嬉しいです。

      30年ぶりとは!観に行かなきゃ、と思わせるのがやはりBABYMETALなのでしょうか。チケットを手に入れるのも、現場の雰囲気に立ち向かうのも、覚悟が要したと思いますが、楽しめたようでよかったです。
      ダメジャンプなど身体を動かすものが多いですが、ライブが終わったら疲労感より満足感が残るなぁといつも思います。

      次回はどこで観られるのか、今から楽しみですね。僕も、ドームもいいですが小さめのライブハウスでも観たいです。

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