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2015年8月21日金曜日

空は紅く染まり、我々は白く染まる。 - BABYMETAL APOCRYPHA - THE BLACK MASS - II@新木場STUDIO COAST

 (BABYMETAL 公式Twitterより)


黒ミサっていうか……白くね?

BABYMETALが再びヨーロッパへ飛び立つ直前、いわば前哨戦とも呼べる国内でのライブ。イギリスの世界最大級のロックフェス・READING&LEEDS FESTIVALがすでに目前に迫っている。
新たな伝説を刻む寸前、最新のBABYMETALを堪能する。『THE BLACK MASS - II(通称:黒ミサ)』は一切油断のない完璧なステージと、堂々とした振る舞いに胸を打たれる。その勢いに呼応し、客席は狂乱の宴に。
結果、これは「WHITE MASS」の間違いではないかと疑うほど、夕暮れ時間に空は紅く染まり、我々は白く染まった。

この日を来るのを待ち望んでいた反面、恐れていた。なぜなら顔面を白塗りにしないといけないからだ。
THE ONE(早い話、ファンクラブみたいなもの)限定のイベントに当選し、ライブの一週間前までは浮かれていた。が、一週間後に迫ると《ドレスコード:コープスペイント》というハードルに現実味が増す。
生まれてこの方、顔面を白く塗ったことがない。 今まで慎ましく生きてきた身分として、街角で顔面白塗りで歩くなんてあまりに攻めすぎてる。
前回の『THE BLACK MASS - I』は当選しなかったものの、今回と同じくコープスペイントの縛りがあったので「絶対面白い!」と思って野次馬感覚で会場の渋谷TSUTAYA O-EAST付近を見回った。それぞれ思い思いの白塗りがそこにあった。ワクワクした。羨ましくなった。これに参加したいと思った。渋谷は立地からして近くにカラオケルームやトイレなど、至るところに《世を忍ぶ仮の姿》から真の姿へと変貌を遂げるための場所があった。
しかし、今回のステージは新木場STUDIO COAST。周囲にほとんど商業施設のないこの地でいつ、どこで、どのように塗ればいいのか。まるで「5W1H」に首を絞められ、あたかも1人のH(変態)に5人がwwwwwと指差して笑ってくる構図が目に浮かぶ。

3日前、新宿のメイク専門店「三善」で白塗りの品々を揃える。『THE BLACK MASS - I』が開催される頃から「当店にお任せください」といった様子でTwitterでBABYMETALファンの呼びかけていたので、三善の"三"にBABYMETALの"三"と親和性を勝手に感じて直行した。
店員のおばさんに丁寧にレクチャーを受け、万全の態勢になる。が、それでも不安なのでライブ前日に仕事で泊まった京都のホテルで練習する。震える手を抑えながら、この緊張はメイクのせいかライブのせいか判然としない。
約31年間、メイクと無縁の人生を送ってきた顔がみるみるうちに白く染まっていく。鏡に映る変わり果てゆく姿を見ながら、「とうとうここまで来てしまったか」と昨年夏にBABYMETALのライブを観るためにイギリスのヒースロー空港に着いた時と同じ感情を抱いた。




Yが何を意味するかはご想像にお任せします。

塗るのも落とすも入念にシュミレーションするが、仕事の都合で明日、新木場に着くのが18時半。ライブは19時にスタート。つまり開演まで30分間で顔面を白く塗り、白い目で見られ、白々しく振る舞い、面白い気分にならなきゃいけない。もう最後は白木屋で飲みたい。

ライブ当日、予定通り18時半に新木場駅に到着する。自分と同じように遅れて到着するモッシュッシュ・メイトがすでに白塗りに出来上がっており、不安を覚える。5W1Hの課題を抱えたまま歩いていると、自分の「THE ONE」Tシャツに反応した見知らぬおじさんに声をかけられる。
「メイク道具……貸してくれませんか?」
このセリフは通常なら異常事態だが、「もちろん構いませんが、その代わり一緒にメイクしませんか?」と自分のセリフも特例中の特例である。まさかShall we?な会話が生まれるとは思ってもみなかった。見知らぬおじさんとトイレに駆け込むという事案を発生させながら、三善で揃えたメイク道具で瞬く間に《世を忍ぶ仮の姿》を捨てていく。そして顔面を白く塗りながら互いの参戦歴を語り合う。
「へー赤い夜からですかー」「聖誕祭は行かれたんですか?」「前回の黒ミサは……」
単語の数々が現世から遠く離れている。額から鼻を伝って顎先まで黒字で「Y」を描くと、おじさんに「攻めますね~」って野球解説者のように言われた。

横断歩道を渡る。会社帰りのサラリーマンたちとすれ違うと二度見され、笑い声が痛く突き刺さるが、STUDIO COASTに近づくにつれて白塗り率が増して安心感を覚えた。もう何も恐れない。隣にはおじさんがいる。一人じゃない。その後ろにも出遅れたメイトが数人いて、《赤信号、みんなで渡れば怖くない》をまさか青信号で感じるとは思わなかったし、BABYMETALの掲げる「THE ONE=みんなが一つになる」をこのように実感してしまうなんて。

STUDIO COASTのスタッフまで顔面を白く染めていた。なぜか顔面白塗りの状態でチケットの不正売買を避けるための顔認証をされる。きっと肉親ですら「変わり果てた姿」と我が子の亡骸に嘆くであろう姿だが、あっけなくゲートを通過。
会場に入ると、四方八方コープスペイントのメイトが量産されていて、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のウォーボーイにしか見えない。


開演ギリギリに着いたので、視界が十分に確保できない。すでに後方の階段までウォーボーイで埋め尽くされ、怒りのDEATHロードの開通をいまかいまかと待ち望んでいる。
顔面白塗りさえ克服したら、あとは神に導かれるようにBABYMETALのライブを堪能する。客電が消え、スクリーンに紙芝居ムービーが映し出される。
一斉に雄叫びを上げる。男性限定イベントだけあって、野太い声だけがけたたましく鳴る。本当にウォーボーイとしか感じられない。現に客席最前付近はまだメンバーが現れていないのに戦場と化し、圧縮で身動き一つ取れない人々で溢れていた。

オープニングの紙芝居ムービーは、『最後の晩餐』をモチーフにした顔面白塗りの集団のイラスト。
「諸君、首の準備はできているか?」「もう一度聞く。首の準備はできているか?」
念入りにヘドバンの覚悟を尋ねるナレーション。そのたびに雄叫びが上がり、白塗りの狂乱の宴の幕が上がる。

シンバルのカウントから『BABYMETAL DEATH』へ。この瞬間にいつも鳥肌が立つ。神バンドの演奏に合わせて、この地に降臨したように粛々とした様子でステージ中央に歩み寄るSU-METAL、YUIMETAL、MOAMETAL。無表情でクールに登場するのが常だが、目の前が顔面白塗りで埋め尽くされているせいか、若干「笑ってはいけない」的な緊張感がステージを満たしていた。実際、ちょっと笑っていたかも知れない。
同じ服装、同じメイク、同じフォックスサイン。「DEATH!」と何度も声を揃えてまるで儀式のように始まるが、次の『メギツネ』で一気に祭りへと姿を変える。「それっそれっそれっそれっ♪」と3人に倣って踊るウォーボーイたち。すでにメイクが汗で落ちかけている者もいる。
SU-がキツネのお面を取り出して、MOAの方を向く場面。海外のライブでMOAの変顔が話題になったせいか、この時はMOAの表情と顔を隠すSU-の震える手に注目してしまう。『Road of Resistance』でも後ろを向く場面でドラムの神と変顔対決したりと、MOAMETALに余裕が出てきたのが伺える。

『ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト』の「アタシん家」の三角形は日に日に完成度が増すが、額に描いたYの三角形が汗で落ちかけていく感覚が分かる。そのまま新曲の『あわだまフィーバー』へ続き、夏の終わりを一切感じさせない熱気が充満する。サビでSU-METALが「Ah Yeah!」のコールを「Say!」と促し、終盤には客席の掛け声が完全に仕上がる。間奏でSU-が腰に手を当ててウルトラマンみたいなポーズをし、その腕をYUIとMOAが両サイドから掴むシンメトリーが美しい。音が激しくなると動きが増し、静まると動きが減る。まるで波形のようなパフォーマンスで、神バンドの演奏と一心同体に思える。
STUDIO COASTはやっぱり音がいい。客としてもスタッフとしても何度も訪れた場所だけど、ここでBABYMETALを観るのは自分にとって今日が初めて。海外アーティストも頻繁に利用するステージなので、もはや「来日」感が強い彼女たちにふさわしいのかも知れない。
ところで、メンバーは楽屋内のプールには入ったのだろうか。という想像はこれ以上は進めないでおこう。あっ、神バンドのことです。

神バンドのソロが始まり、『Catch me if you can』へ。一旦ステージ脇に引っ込んだ3人が「ハイッ!ハイッ!」と可愛らしい掛け声で再びステージに戻り、「ワン、ツー、ワンツースリーフォー!」から始まる瞬間にいつも何かが弾け飛ぶ。この頃には自分が顔面白塗りである事実すら忘却の彼方に飛ばし、客席後方ながらも十分なスペースを確保した上で頭を振る。
「まーだだよ♪」このかくれんぼ、もうすぐREADING FES.で見つかるのか。初めて観たライブで初めてこの曲に触れ、衝撃を受けると同時にもっと広くこの遊びが知られてほしくなった。もはや限度がないくらい全世界にかくれんぼが見つかり、今やどちらかというと鬼ごっこに近いかも知れない。
見つけるのは容易い。見つけた人が追いかけるようになった。まさに、ここにいる誰もが「鬼」だろう。もちろん見た目も含めて。

やがて、まだ聴き慣れていないイントロが始まり、「あれも違う、これも違う」といった歌詞の新曲が。
客席はまだ馴染んでいないせいかノリ方が定まっていない様子だけど、『あわだまフィーバー』同様、今後ライブを重ねるごとに楽曲とパフォーマンスが鍛えられていくのだろうか。YUIとMOAの「ピッポパッポピッポパッポピー♪」という意味不明な掛け声が可愛らしく、一度聴いたら忘れられないメロディであることは間違いない。

その後、『4の歌』『紅月-アカツキ-』とBLACK BABYMETALとSU-METALのそれぞれのソロが披露される。
SU-のマントを翻すアクションが、回を重ねるごとに凛々しさが増す。もし同性に生まれていたのなら彼女を目指したい。人生は一度きりしか体験できないが、もしもう一人分の人生を歩めるとしたら、14才くらいの女の子としてSU-METALをカリスマに掲げたい。三十路のおっさんが何を言っても説得力がないかも知れないが、『紅月-アカツキ-』でまるで女優のように表情を何度も変え、歌詞を自分のものにして歌う姿は女の子の目標になってもいい。事実、言語の壁を越えて世界中の女の子たちが歌っているのだから。
演奏は獰猛と激しいが、歌はしっとりと穏やか。といっても力強い。ヘドバンもできれば、聴き入ることもできる。『紅月-アカツキ-』はそんな両極端の自由を許してもらえる。ワンマンでしか披露されないけど、いつかフェスでも繰り出してもらいたい必殺曲だ。
ステージからはすでに「笑ってはいけない」的な緊張感が消え、白塗りがあたかも当たり前の雰囲気になってきた。それはこのタイミングで会場に入った人には狂気にしか思えないだろう。

スクリーンに『戦国ウォール・オブ・デス』の紙芝居ムービーが流れ、客席では着々とその準備が始まる。
イントロが始まるとともにステージがライトアップされ、BABYMETALの巨大フラッグを持った3人の姿が。その勇ましい表情は明らかにこれまでと違い、YUIMETALに至っては別の何かが憑依したようにかっこいい。このサウンドと衣装とシチュエーションと旗がなければ、そのキリッとした表情を「激おこぷんぷん丸」「ムカ着火ファイアー」「カム着火インフェルノォォォオオオウ」「げきオコスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム」と可愛らしく形容したくなるが、ここではそれらの言葉が一切思い出せない。
客席は今にも発電できそうなくらいエネルギーが充満している。さあ、『Road of Resistance』がいよいよ始まる。鞭を打たれたかのように走り出す顔面白塗りのメイトたちと、鞭を打つ3人のパフォーマンス。その光景に参加するのも端から見るのもどちらも楽しく、ギターソロのメロディと3人のダンスが涙腺を刺激し、彼女たちの今後に今以上のドラマを予感せずにいられない。
こないだのサマソニに続いて、今日も『ギミチョコ!!』のコール&レスポンスで3人が1つのマイクに寄り集まって「シンギン!」と促し、客席が歌うと「サンキュー!」って声を合わせて元の位置に戻る一連の動作が卒倒レベルで可愛い。
客席はもはや白塗りメイクが落ちていき、《世を忍ぶ仮の姿》へ戻っていく。それが現実世界に戻るかのように見えて少し切なく、非現実世界のライブはあっという間に終盤に差し迫る。

最後は『イジメ、ダメ、ゼッタイ』。お馴染みの紙芝居ムービーが流れるが、今回に限りそこに映るメタル界の大御所たちが顔面白塗りになっていて、 ナレーションが「思いっきり白塗りをするといいよ、ってロン毛のお兄さんが教えてくれた」に変わっていて笑いを誘う。
イントロが始まるとSU-METALが目の前で両手をクロスし、ステージ脇両サイドに目を向けて合図し、「アーーーッ!」と叫ぶとYUIMETALとMOAMETALが全速力でステージを駆け抜ける。今回は後方ということもあってウォール・オブ・デスに参加できず、ステージを静観することができた。MOAMETALのほうが少し速い。と冷静に見るが、心の中では猛スピードでダッシュしている。
顔面白塗り同士が向かい合い、ぶつかり合う。この光景に既視感を覚えた。絵本『ちびくろさんぼ』 の虎がバターになるように、白塗りのモッシュッシュメイトがチーズになればいい。そのチーズが美味しいかどうかは別にして、統一感のあるウォール・オブ・デスはいつも以上に壮絶な光景に見えた。

最後は「We are!」「BABYMETAL!」と何度もコール&レスポンスし、紅と黒と白に塗れた『THE BLACK MASS - II』が終わりを告げる。

目立った演出もなく、歌と演奏とパフォーマンスの一本勝負。セトリもガラリと変わるほどストックはなく、毎回同じ曲を続けられてもまた観たくなってしまう。その中毒性はタバコを辞められないようなもの、ビールから逃れられないようなものと同じだろうか。

「今、観ておかないといけない」感はいつまで経っても消えない。
最近、2012年の『LEGEND"I"』から2013年の『LEGEND"1997"』まで、Blu-rayを何枚も見返した。そこで現在に至るまでBABYMETALが著しく成長しているのが分かる。
幾らYouTubeやFacebookなどネットから世界へ飛び火したといっても、今の形が飛び道具のように簡単に出来上がったわけではないことが改めて伺える。一つずつ着実と階段を登って進化を遂げている。たとえば2012年の渋谷O-EASTの公演から急に海外へ飛び立っていたら、全く別のシナリオを歩んでいただろう。そこからZepp Tokyo、幕張メッセ、日本武道館と少しずつ規模を拡げ、あの時のアクシデントを乗り越えてヨーロッパ進出、レディー・ガガのアメリカツアー、そしてイギリスのメタルフェス・SONISPHEREという流れがあった。
成長期という身分含めて、彼女たちに目が離せないのは現在進行形のドラマがある。それはあらかじめ決められたシナリオではなく、一つずつ正確に《道なき道》を切り開いていったからこそ劇的に思える。予想を裏切る。想像を遥かに超える。どのアーティストにも共通することであるが、見た目を含めて《成長》が分かりやすい年頃だからこそより一層面白く感じられる。

帰り道、STUDIO COAST付近は顔面白塗りを洗い落とす人々で溢れかえっていた。駅前は《世を忍ぶ仮の姿》に戻ったメイトが憑き物がとれたかのような笑顔を見せている。
BABYMETALのステージは「成り切っている」。メンバー3人も神バンドも、BABYMETALという物語の中の登場人物を演じている。だからこそコープスペイントをすることでその脇役に成り切れた気がして、白塗りというハードルを乗り越えられたことに勝手に達成感を覚える。
すでに「Y」の字は汗で落ちかけ、おどろおどろしい「Y」に変わっている。メイトたちはそのイニシャルの意味を分かってくれるだろうが、道行く人々にとっては狂気にしか思えないだろう。

8月末、READING&LEEDS FESTIVALを終えたらBABYMETALはその後どこへ向かうのだろうか。
このドラマ、起承転結でいうと現在はどこにあたるのか。転、転、転と続いているので、そのまま転がり続けて360度回り回って何度も起、承、転を繰り返してほしい。どこかで結を恐れている自分がいる。 でも、やがてその日は来てしまうのだろう。
その時まで、心の中を白塗りにしてこの物語の脇役を演じていたい。


2015年8月21日 THE BLACK MASS - II@新木場STUDIO COAST
〈セットリスト〉
01、BABYMETAL DEATH
02、メギツネ
03、ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト
04、あわだまフィーバー
05、Catch me if you can
06、新曲
07、4の歌
08、紅月-アカツキ
09、Road of Resistance
10、ギミチョコ!!
11、イジメ、ダメ、ゼッタイ


1 件のコメント:

  1. NHKの特集が再放送された後くらいから、ハマりました❗( ^∀^)
    白塗りしてでも、すぅさんの生歌聴きたい!
    ヽ(・∀・)ノ
    ブログ楽しみにしてま~す。

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