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2015年6月21日日曜日

BABYMETALが日本に帰ってきた! - BABYMETAL in 巨大天下一メタル武道会@幕張メッセ 展示ホール1〜3


BABYMETALが日本に帰ってきた!

ピラミッドが崩壊すると三位一体のトライアングルが火柱の中を突っ走り、その鋭く尖った三角形の先端で客席を裂く。モッシュピット・オンリーのフロアで2万5000人が一斉にフォックスサインを掲げ、その中央に立つ少女が「かかってこいよ!」と煽るとそれに呼応する。

その存在を知った頃は、「なんじゃこりゃ」だった。「イジメ、ダメ!」「キツネ、トベ!」とテレビで飛び跳ねている姿を観た当初は、なんだこのフザけた曲は、また変なアイドルが出てきたのか、なんて思っていた。
だけど、初めてライブを体験した時に全てが覆された。頭を殴られるような衝撃を味わった。
政治、メディア、経済が巨大勢力“アイドル”に支配された世界で、十字架に掲げられる少女。新しいメタルの誕生を意味する“BABYMETAL”はメタルを司る神・キツネ様のお告げに従い、“メタルレジスタンス”を敢行する。白装束に身を包んだ少女がコルセットを捧げ、偶像を打ち壊すかのように女神像が崩壊する。やがて棺桶に入れられた少女たちが天空に消え、異国の地へ旅立つ。

あたかも映画の中に放り込まれたような非現実感と、目の前で地鳴りの歓声と爆音のバンドサウンドがせめぎ合う現実感。怪獣の鳴き声のようなギター、地震のように揺らすベース、マシンガンのように撃ち抜くドラム、その殺伐とした音の中でひたすら笑顔の理由を作り出す3人の少女たち。
やがて「なんじゃこりゃ」が興奮に変わり、熱狂へとたどり着いた。
そのストーリーは映像の中の物語を越えて、現実に海外へ羽ばたいていった。ビルボードチャートにランクインし、レディー・ガガがオープニングアクトに抜擢し、ついにはワールドツアーへ。
フィクションとノンフィクションを織り交ぜた壮大なスケールで描かれるアクション映画。その主人公が今日、ステージに立つ。
これが観たかった。待ち望んでいた。今、目の前に現れた。そう、ついに日本に帰ってきたのだ。
6月21日、BABYMETALのワールドツアー・日本公演『巨大天下一メタル武道会』が幕張メッセ 展示ホール1〜3で開催された。

“メタルレジスタンス 第3章”は今年1月の『キツネ祭り』で告知された通り“日出ずる国”=日本で幕を開けると思いきや、ワールドツアーから始まった。
メキシコからオーストリアまで海外10ヶ所で、国境と人種と言語と世代の壁を越えて次々と成功を収めてきた。久しぶりのワンマンライブなのになぜかご無沙汰に思えないのは、その様子をネットを通じて見てきたせいか。Twitter、インスタグラム、Vine、YouTubeで世界各国のファンが写真や動画を次々とアップし、それをリアルタイムで追うと時差によって深夜3時まで起きないといけない。気になって仕方がないから眠れない。いわば睡魔へのレジスタンスだった。

やがて創刊から30年以上世界中の音楽ファンに愛読されているイギリスの雑誌『Kerrang!』の主催するKerrang! Awardsで、日本人アーティストとして初めて受賞する。贈られた賞は“THE SPIRIT OF INDEPENDENCE AWARD”。これは独自性溢れるアーティストに贈られる賞で、SU-METALがインタビューで何度も掲げてきた目標=オンリーワンにふさわしい。
これまでにNapalm Death、THE PRODIGYといった個性豊かな大物が受賞しており、グラインドコアの始祖的存在と、ロックのテクノを融合した先駆者と、アイドルとメタルを融合したダンスメタルユニットの名前がついに並んでしまった。

それだけでは終わらない。さらに、同じくイギリスの雑誌『METAL HAMMER』主催の“METAL HAMMER GOLDEN GODS 2015 AWARD CEREMONY”に出席し、今年活躍が期待される新人アーティストに贈られるBREAKTHROUGH部門を受賞する。
ここで共演したDragonForceとはその後、イギリスのロックフェス・DOWNLOAD FESTIVAL 2015でもサプライズゲストとしてコラボライブを行ない、それをリアルタイムで追うことでさらに睡魔とのレジスタンスが続いた。

この日の幕張メッセはもちろん時差はなく、日本時間。日出ずる国に帰ってきた姿を睡魔レジスタンスではなく、ちゃんとメタルレジスタンスとしてリアルタイムで目撃できる。

15時半、次第に雨がちらつく中で開場が始まる。A、B、C、D、E、X、Y、特別価格の“超・モッシュピット”のZのブロックに分かれ、1ブロックごとにたっぷり時間をかけながら2万5000人が壮大なモッシュピットへと誘われていく。
会場に入ると、センターステージに大きなピラミッド型の幕が目に入る。魔法陣の柄が赤くライトアップされたその姿は不気味で、これから繰り広げられる光景へ期待感を煽る。Limp Bizkit『My Generation』、Judas Priest『Painkiller』といった今回のワールドツアーで邂逅を果たしたアーティストの楽曲が流れ、オマージュとリスペクトに満ちたBGMに歓声が上がる。

それにしても、いまだに目を疑うフォトセッション。



世界中の誰もが近寄れない、容易に会うことのできない天空界の存在が、まるで近所に住む優しげなおじさんみたいになってしまっている。
非常識を常識に変えている。それも、超〜朗らかに。

Eブロックの100番台のチケットを握りしめ、早足に最前付近にたどり着く。なるほど、すっごく遠い。「見る」より「感じる」という選択肢を迫られる。SU-METALがアメリカの「APTV」のインタビューで「No thinking. Just feeling!」と答えたように。
さすが“超・モッシュピット”はステージから近い。なるほど、“Z”とはつまりそういうことか。『巨大天下一メタル武道会』のタイトルにふさわしく、光る雲を突き抜けてファーラウェイした彼女たちを間近で迎えることができるのか。
セキュリティが続々と各ブロックを隔てる柵の前に現れる。これが全員、屈強な黒人。まるで海外のフェスのようなセーフゾーンに安心感を覚えるも、隣の人がピラミッドを撮ろうと携帯を掲げると険しい表情で「NO!」と止められてちょっと恐い。場内アナウンスではモッシュ・連続するジャンプ・前に詰める行為といったBABYMETALのライブで起こりうるアクションをことごとく禁止する旨が伝えられる。

やがて17時を過ぎると、会場が暗転する。怒号のような歓声が鳴り、約15分押しでいよいよライブが始まる。
オープニング映像では昨年3月に日本武道館で開催された『天下一メタル武道会ファイナル』の映像が流れ、 「漆黒の闇が紅に染まり、己の限界を越えた時、新たなLEGEND“伝説”が誕生する。」とナレーションが始まると『巨大天下一メタル武道会』のタイトルが。
以前のようにノンストップで繰り広げられるスタイル同様に、今回もどうやら止まることがないようだ。

「己の限界を試される時が来た。回り始めた時計の針はもう止めることできない。すなわち、MCもなければアンコールもない。武道会に召喚されたその瞬間から、すでにバトルは始まっているのである。そう、破滅へ向かって…」

いよいよ始まる。ここから、休憩する間が一切ない怒涛の1時間半が幕を切る。

「いよいよ、新たなLEGEND“伝説”を作る時が来た。諸君、首の準備は出来ているか?『巨大天下一メタル武道会』の幕開けだ!」

地鳴りのような演奏が始まると、映像の中に巨大な“BABYMETAL”の文字が浮かび上がる。奥の方のステージに神バンドが立ち、2万5000人を堂々と迎え入れる。
『BABYMETAL DEATH』のイントロから爆発音が鳴る。センターステージのピラミッドの幕が降りる。するとSU-METAL、YUIMETAL、MOAMETALの3人が現れ、歓声は絶叫に、興奮は発狂に変わる。

後ろから人が押し寄せる。幾つも悲鳴が上がる。Eブロックにも関わらず冒頭から混乱の渦に巻き込まれ、身の危険を感じる。そこで全員が「DEATH!DEATH!DEATH!DEATH!」と叫ぶのだから、DEATHの説得力が半端ない。リアルにDEATHを予感する。ホントのDEATHを見せてくれたら、ホンモノのDEATHを教えてくれるのか。錯乱した脳内で、人の頭と頭の間から微かに見える3人の姿が清涼剤になる。我に返るが、自己紹介ソングの側面を持つこの曲で3人が次々と「ヤバい」「スゴい」「かわいい」「とんでもない」「ゆいちゃんまじゆいちゃん」と乱暴にタグ付けされていくので完全に我を忘れている。
SU-METALが咆哮し、鳥かごを揺らされた鳥のように客席がギョギョッと一変する。モッシュピットがその名に恥じずサークルモッシュを作り出す。前日に映画『マッドマックス 怒りのデスロード』を観たせいか、周囲にいる人が次々と弾き飛ばされてセキュリティに担ぎ上げられていく光景はまさに弱肉強食の無法地帯か。リアルな“DEATHロード“がそこにあった。

爆発は収まる気配がない。『ギミチョコ!!』はイントロからステージ付近に炎が吹き荒れ、音の波形が振り切れるかのように爆音が鳴る。
狂気の中でふとYUIMETALの笑顔が見えると、一気にファンシーな気分になる。その両極端のバランス感覚、いわば振り幅が「あたたたたーたたーたたたズッキュン!」に込められている。
恒例のコール&レスポンスが始まる。SU-METALは相変わらず英語でレスポンスを促すが、ここで驚いたのがMOAMETALの「みんなー!会いたかったよー!」と、YUIMETALの「今日は来てくれてありがとうー!」というアイドル然とした掛け声。日本語である上に、日本公演を待ち望んでいた誰もが言ってもらいたかった言葉が放たれる。さらに「もっと声出してよー!」とMOAMETAL、「そんなんじゃ全然足りないよー!」とYUIMETALが煽り、SU-METALでさえもレスポンスが返ると「ありがとう!」と礼を言う。

BABYMETALはアイドルかアーティストか、時折論争になる。アイドルは需要と供給が明確で、「会いたかったよー!」に「俺こそが会いたかったよ!」、「ありがとうー!」に「私こそがありがとう!」と本能の赴くままにコール&レスポンスできる。それが論争にすべて決着をつけようとする。が、アイドルとアーティストのどちらにも振り切っているからこそイギリスで2つの賞を手に入れたのだろうから、そう簡単に結論付けられない。ただ一つ言えることは、「かわいすぎて仕方がない」。

YUIMETALとMOAMETALがさくら学院を今年3月に卒業し、これでBABYMETALのメンバーが全員“母体”を卒業した。活動が一本になってから初めての国内のワンマンライブで、いつもの「I can't hear you!」「Louder louder!」と決まり切ったセリフではなく、日本語の可愛らしい声を聞けたのはいわば渇望感からの脱出になった。水野由結、菊地最愛としての側面をちらっと覗けた気がした。

そのまま『ド・キ・ド・キ☆モーニング』から『ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト』へ。朝から深夜へ、時差と戦いながらワールドツアーを追っていたことを思い出す。3人の目の下を見るたびに時差ボケの心配をするが、それぞれ苦悩や葛藤を一切見せることなく完璧にパフォーマンスを遂行する姿が胸に迫る。
ライブでしか披露されていない新曲『あわだまフィーバー』 で「あわ〜あわ〜♪あわだまフィーバ〜♪」と両手で頭上に大きな円を作り出すYUIMETALとMOAMETALに倣い、モッシュピットの頭上が円だらけに。ステージが三角形であることに反し、丸みを帯びた振り付けがキュートで胸を激しく締め付けてくる。徹底した世界観が彼女たちの笑顔によって一挙に良い意味で崩れ、鋭い三角のトゲがポロポロと剥がされていく。「秘密の鍵〜♪」の部分で鍵を開けるようなアクションが愛らしく、映像化が早くも楽しみだ。

神々のギターソロが始まり、『Catch me if you can』へ。ここで大村神がギターソロの終盤に『Happy Birthday to You』のフレーズをさりげなく盛り込み、昨日16歳になったYUIMETALをさりげなく祝福していた。
その通り、さりげない。いくら誕生日を迎えたからといって解りやすい祝福シーンが一切ないのだ。
YUIMETAL「昨日、16歳になりましたー!」
SU-&MOAMETAL「おめでとうー!」
大村神「(ギターで)Happy Birthday to You〜♪」
藤岡神「(ギターで)Happy Birthday to You〜♪」
BOH神「(ベースで) Happy Birthday Dear♪」
青山神「(ドラムで)ズカズカドコドコドン!」
会場「YUIMETAL〜!!!」
SU-&MOAMETAL「Happy Birthday to You〜♪」
(特効)パシャーーーン!!!
『HAPPY 16TH BIRTHDAY YUIMETAL』の文字が浮かび上がる。
YUIMETAL「ありがとうーーー!」
なんて筋書きは妄想でしかない。現実はただひたすらMCが一切なく、音が鳴り止むことがなく、かくれんぼが始まるのである。
「とっておきの、場所を発見〜!」でひょっこり顔を出すMOAMETALの表情がたまらない。が、もはや“顔芸”と言ってもいいMOAに負けじとYUIMETALの表情もバリエーションが増えたように思う。「やだドキドキ止まんな〜い!」と抱き合う2人はいつだってライバルであり親友という二つの顔を寄せ合っている。

大きな指で掻き回すようにサークルモッシュを各地で発生させた後、紙芝居ムービーが流れる。「キツネ様に『ムダ使いしちゃ、ダメ、ゼッタイ』と言われたYUIMETALとMOAMETAL」が巨大ショッピングモールに入っていく。かつて幕張メッセイベントホールで映像で流れた時同様のA-ON(イオン)が登場するイラストだが、アドバルーンの「4のつく日」が「ハッピーの日」に、グッズタオルを手に持つレディー・ガガがLimp Bizkitのフレッド・ダーストに変わっている。
このムービーが始まるということは、『おねだり大作戦』。今回はお立ち台がない代わりに三角形のステージから一段下のステージへ階段を伝って降り、YUIMETALとMOAMETALのBLACK BABYMETALが大勢の“パパ”たちをタオルで煽る。
「わたし、パパのお嫁さんになるんだ!」
いつも以上に機嫌を取られ、存分におねだりされる。でも、気持ちよくなっている場合ではない。今日、6月21日は父の日だ。それが皮肉にも子どもの日にすり変わり、「One for the money, Two for the money, Three for the money」とねだられると紙幣が所々で舞う。これはメキシコから始まったファンによるアクションで、世界各国のファンがそれぞれのお国柄に合った紙幣を手作りし、それが今日ついに日本に上陸した。
Eブロックのすぐ傍でも舞ったように思ったが、さすがに気のせいか。「買って!買って!買って!買って!」と目に見えて大金を巻き上げる16歳と15歳になす術はない。

その後は一変してシリアスにピアノのイントロが鳴り、SU-METALのソロの『紅月 -アカツキ-』。バンドが音を鳴らし始め、「アカツキだーーー!」と叫ぶと白い煙が一斉にステージから吹き荒れる。クールにマントを翻しながらギターソロを披露する神々に指をさすが、決してその方向を見ないという究極のツンデレが繰り広げられる。
激しい曲調だが、穏やかな歌唱。頭を小刻みに振ることもできるし、じっくり歌に聞き入ることもできる。選択肢をウォール・オブ・デスのごとく大きく2つに分けてくれる。クレッシェンドとデクレッシェンドを繰り返すように、感情はひたすら揺さぶり続ける。
続いて『悪夢の輪舞曲』はセンターステージよりさらに高いステージが浮かび、その上にSU-が立つ。それを支える支柱が「X」の形をしているのは、やはりあのXを意識しているのだろうか。神々の超絶テクニックは毎度恒例なのに飽きることがない。ソロが終わると、そのプレイに感激したせいか近くにいた男性客が「…すげーなぁーオイ!」と一人で歓声を上げ、思わず頰が緩む。

獲物を逃さない。捉えて離さない。噛み付くようなSU-METALの目つき。小さな炎がステージを取り囲み、その中で喜怒哀楽全てを表情に込める彼女はまさに“女優”そのもの。BABYMETALは彼女たちにとって“自己表現の場”ではないかも知れない。たとえばボーカリストが作詞・作曲し、己自身の世界観をぶつけるわけではない。だが、SU-METALは本名・中元すず香の気配を一切消し、別の存在に憑依する。そのパフォーマンスは表現以外の何物でもない。まるで物語の中に観客を放り込むように、チーム全体で作り上げる自己表現が圧倒的なスケールで迫る。チームワークが完璧だからこそ、その世界観にドッブリ浸らせてくれる。

ライブは休むことを知らない。後方からの圧縮で脚は感覚を失い、肩は常に誰かの手が置かれている。汗を見知らぬ人たちとシェアし、その熱気をRTで拡散している。
『4の歌』が始まり、会場が一斉に「ヨンッヨンッ!」と掛け声を上げる。YUIMETALとMOAMETALが満面の笑みでコール&レスポンスし、「まだまだ声出せるよねー!」「いくよっ!」と可愛らしい煽りで2万5000人全員が4の倍数でおかしくなっていく。
2人がツアー移動中のバスの中で遊びで作ったというこの曲は、YUIとMOAが作詞・作曲者としてクレジットされている。子どもの発想力は怖いもの知らずで、海の向こうの強面のメタラーすらこの遊びに付き合わされてしまっている。

ここで突然、紙芝居ムービーが入る。
「巨大化した天下一メタル武道会での戦いは、高くそびえ立つピラミッドの頂上を目指すように己の限界に達しようとする壮絶なバトルが繰り広げられた。」
人々が積み重なり、まるで映画『ワールド・ウォーZ』のゾンビのように隔離された壁を乗り越えるように描かれている。鬼気迫る状態で大きな三角形を作り、頂上を目指している。
「だが、巨大魔法陣によって動き出した時計の針は、もう誰にも止めることができない。バトルが後半戦に突入したところで、キツネ様は新たな調べを与えるのであった。」

「新たな調べ」すなわち、新曲。『あわだまフィーバー』以来、ついに新たな調べが公開される。エレクトロの要素が入った曲で、サビで「気になっちゃってどうしよう」とSU-METALが歌う。YUIMETALとMOAMETALが「ピンポパンポピンポパンポピー♪」と愛らしく歌うのがツボに入る。「あれもこれも違う」「全部全部違う」といった歌詞がBABYMETALの他の曲とたしかに「違う」ので新鮮に感じる。
イタリア・ボローニャのライブ前、外から漏れるリハーサルの音から新曲の披露が噂されていた。待ちに待った新たな調べに、早くも合いの手をマスターする観客の姿が目に入る。今後、色んなステージで披露されるのが楽しみだ。

ナレーションが告げる通り、ライブは後半戦に突入する。レーザービームが放たれる『いいね!』でSU-METALが「幕張っ!」とコール&レスポンスを促し、『メギツネ』で「それそれそれそれっ!」と会場全体がお祭り状態に。
ここであることに気がつく。ずっとタオルを握り締めていたはずの手が、いつの間にか紙幣を握り潰していた。『おねだり大作戦』で宙を舞った紙幣だ。それを無意識に手で掴み、手に入れていたのだ。
本当に記憶にない。あれから何曲進んだのか。そもそも、Eブロックでも舞っていたのか。気づくのが遅すぎる。それほど圧縮と喧騒に見舞われていたのか。うわマジかよ、と思ってライブの最中にこそっと紙幣を開いた。


YUIMETALだった。この時、「キツネ様は存在する」と確信した。

やがて「Why do people hurt each other?」のナレーションが始まると、各ブロックでウォール・オブ・デスの準備が進む。

身動きが取れず、ただ後ろから重圧がかかることでその形が作られていることを体感する。まさか人々の動きを背中で感じる日が来るとは、なんてしみじみ思っているとSU-METALがステージに現れる。「ルルル〜♪」と歌い終えると急に目つきを変え、両サイドでクラウチングスタートの姿勢を取るYUIMETALとMOAMETALにアイコンタクト。バンドが音を鳴らすと、まるで火山が噴火するように分厚い火柱がステージを取り囲む。そしてSU-METALが叫ぶと、幾つもの火柱が立つ中でYUI&MOAが全速力で猛ダッシュし、クロスする。それに倣い、モッシュピットは所々でウォール・オブ・デスが発生する。観客が身体を激しくぶつけ合う。その様子をEブロックの最前付近で背中から感じ取る。

いよいよクライマックスに迫る。『イジメ、ダメ、ゼッタイ』が始まった。
全てが解き離れたかのような会場で、さりげなく紙幣を守ろうとする。しかし、周りは完全に「攻め」のモード。もういいや、と思って紙幣がますます皺くちゃになり、自ら「攻め」ることでズタボロに切り刻んでいく。
YUI&MOAのバトルシーンから間奏へ入り、大サビに 向かう瞬間にSU-METALが「かかってこいよーーー!!!」と叫び、熱狂は臨界点を突破。「イジメ」「ダメ!」「キツネ」「トベ!」の一連の動作がますます熱を帯び、火柱の熱が遠く離れたEブロックまで伝わってくる。

止まることなく、続いて『ヘドバンギャー!!』。熱い。痛い。苦しい。過酷な状況の中で、己の体力の限界まで達していく。間奏で土下座ヘドバンするYUI&MOAと、鋭い眼光で周囲を見渡すSU-METAL。いつも整っている前髪は汗でぱっくり割れ、前髪までもがウォール・オブ・デスをしている。頭を振り乱し、己の限界まで迫っているのが目に見える。ただひたすら最高のパフォーマンスを繰り広げる3人に、思わず目頭が熱くなってしまう。

“戦国ウォール・オブ・デス”の紙芝居ムービーが流れると、またも背中から重圧がかかる。モッシュピットで「Wall of Death!! Wall of Death!! Wall of Death!!」と何度も雄叫びが上がり、イントロが鳴り出す頃には“BABYMETAL”と書かれた巨大フラッグを掲げた3人を迎え入れる準備が整う。

「幕張ヶ原の合戦」が今、始まる。

狙いを定めているようなSU-METAL、自信にみなぎったかのようなYUIMETAL、勝ち誇ったかのようなMOAMETAL。
三者三様の表情がステージから放たれ、まるでワールドツアーで積み重ねられたバイオグラフィーがトライアングルに描かれているかのようだ。
三位一体。三種の神器。第三章。三角形には現在のBABYMETALを表す全てが込められているように思う。ギターの神、ベースの神、ドラムの神がいれば、歌の神《SU-METAL》、ダンスの神《YUIMETAL》、アイドルの神《MOAMETAL》がいる。10代の頃に熱狂した少年マンガのように、ハリウッドの大作映画のように、大人たちが一斉に少年少女へ姿を変え、客席に生まれた空洞の中へ飛び込んでいく。

『Road of Resistance』 この曲に何度想いを馳せてきたことだろう。歌詞の通り、「道なき道」を進む3人が動画の中ではなく、今目の前で新たなLEGEND《伝説》を刻み込んでいる。それをリアルタイムで共有し、3人が作り出すトライアングルの先端で突き刺されることに改めて心が動かされる。両サイドに上昇した高いステージにYUIMETALとMOAMETALが立ち、それを眺めながら「Wow Wow」と何度もシンガロングし、「命が続く限り 決して背を向けたりはしない」に涙し、SU-METALが「幕張ーーーっ!!!」と叫ぶ頃には圧縮による全身の痛みが完全に麻痺していた。

こんなに激しい曲なのに、暴れる音なのに、どうして泣けるのだろう。現在のBABYMETALのせいか、もしくは自分のせいか。行く宛てもない未来に希望を見出せるのは、彼女たちが非常識を常識に、不可能を可能に変えてくれるからだろうか。
初めて動画でこの曲を聴いた時は正直ピンとこなかった。それでもライブで全身で音を受け、自分の耳で聴いてから、頭から離れなくなった。プロデューサー・KOBAMETAL氏が完成まで30テイク作り直すよう指示したというこだわりと、約1年間かけて作られたという熱量が、元々メタルを全然通っていない自分の胸に届いた。
BABYMETALはジャンルレス、ボーダーレスでダイレクトに伝わる。そのエネルギーがすべてこの曲に込められているように思う。歌詞が彼女たちの“今”を明確に示し、三角形のステージのその先端から新たな道が開かれていくかのようだ。

「We are !!」「BABYMETAL!!」「We are !!」「BABYMETAL!!」「We are !!」「BABYMETAL!!」
下手、中央、上手で何度もコール&レスポンスし、BABYMETALが3人だけでなく、神バンド含めて7人、いや、2万5000人になっていく。
「Put your Kitsune Up!!」
SU-METALが促すと、会場全体がフォックスサインで埋まる。一斉にジャンプし、着地するとバーーーン!!!と巨大な爆発音が鳴る。

最後は壮大な音楽をバックに3人が観客に背を向け、ステージ後方のトライアングルに目がけて姿を消していくかのように去っていく。
いよいよワールドツアー・日本公演が終わりを迎える。そして映像の中で“メタルレジスタンス 第3章”の新たな展開が告げられる。

「我々はついにこの戦いに勝利した。己の限界を越えたからこそ、さらなるステージに進むことができるのだ。異国の地での過酷な武者修行を終えて、メタルの神はBABYMETALに“ホントのメタル”を教えたのだった。」

「そして、メタルの神から授かったメタルの魂で、BABYMETALは異国の地で新たなLEGEND《伝説》を作ったのだ。道なき道=Road of Resistanceの旅はまだまだ続く。メタルマスターの元へと誘われ、再び聖地へと旅立つのだ。」

8月29日、30日にイギリスで開催される世界最大級のロックフェス・READING & LEEDS FESTIVALの文字が浮かび上がる。

「そしてついにこの旅は、日出ずる国へと舞い戻る。“メタルレジスタンス 第3章”、トリロジーの最終章へとカウントダウンは始まる。」

ここから世界地図は日本を示し、『BABYMETAL WORLD TOUR in JAPAN』が告知される。
今年9月の大阪・Zepp Nambaを皮切りに、北海道・Zepp Sapporo、福岡・Zepp Fukuoka、愛知・Zepp Nagoya、東京・Zepp DiverCity TOKYOでのワンマンライブ、そして12月、神奈川・横浜アリーナでの2Daysが発表。
「らららら〜ら〜♪」と歌を乗せた壮大なサウンドとともに、3人がトライアングルに消えていく。
第3章の次のページが開かれる。ついに舞台が日本になるのか。
“BABYMETAL”の文字が大きく映し出され、『巨大天下一メタル武道会』の幕が下りた。

BABYMETALが日本に帰ってきた。
回り始めた時計の針は誰にも止めることができないのか、留まることなく突き進んでいく彼女たちは今後どこへ向かっていくのか。
冒頭の宣言通り、MCがなければアンコールもなく、音が一切止むことなく日本公演が終わった。 最近は以前のようにストーリー仕立ての演出がなく、正々堂々とパフォーマンスと演奏だけで魅せるライブが続く。“物語を地で行く”ということなのだろうか。BABYMETALが生み出すストーリーには演出家も脚本家も要らない。筋書きがなく、チーム全体の熱量が『Road of Resistance』の歌詞の通り“道なき道”を作り出していく。
どうして『天下一メタル武道会』が再び行われたのか。あの日あの時、会場にいた誰もが心を痛めた日本武道館のライブのリベンジなのだろうか。YUIMETALの16歳の誕生日の翌日だからこそ勝手に意味を感じ、言葉に頼らずパフォーマンスでその成長を伝える3人を見ると思いがこみ上げてくる。
Twitterでバンドの神々がYUIMETALの誕生日を祝福する姿に、チーム全体の一体感を覚えた。敬意と愛情に溢れていた。メンバー3人のみならず、映像演出、グッズデザイン、マネージメントにおいても情熱を感じさせてくれる。
あの魔法陣の奇跡から、たった1年と3ヶ月。YUIMETALのコルセットは完全に外れ、16歳に立派に成長した姿を存分に解き放っていた。

さくら学院を全員卒業し、3人の活動はBABYMETAL一本になった。
ブログやTwitterなど、相変わらず本人発信の場がない。本人たちが何を考えて、何を想っているのか。それを遠く離れた客席から想像することしかできない。
Road to GraduationからRoad of Resistanceへ。3月の卒業式で涙と鼻水で顔を真っ赤に染めながら分かったことは、水野由結と菊地最愛が心からさくら学院が好きで、他の何よりも誇りに思っていることだった。その母体が無くなり、活動が赤と黒に一極集中することに至るまでどのような覚悟と決意があったのか。想像することしかできないが、大きな画面に映る彼女たちの表情を見る限り一寸の迷いもなかったように思う。

ただ、彼女たちの“夢”は一体どこにあるんだろうか。
METALネームを授かった姿ももちろんだが、“世を忍ぶ仮の姿”としてのパーソナルな部分にも興味が注がれてしまう。
だから、今年のSUMMER SONICでYUIMETALの憧れの存在=アリアナ・グランデと共演することが何よりも嬉しい。
3人がメタルの神々に邂逅し、権威のある音楽賞を受賞していく。これが純粋に彼女たちだけの夢とは言い切れない。まるで大人の夢を叶えてくれるかのようだ。応援している者にとってBABYMETALの快挙は心から嬉しく、昔からメタルに慣れ親しんでいる人たちにとってその事の重大さをきっと彼女たちより感じているのだろう。
メタルを通ってない身としても、肩身の狭い思いをしていたマイノリティから復権し、世界中に広まる現象は痛快でたまらない。自分もあるバンドのスタッフの身分として、バンドではなかなか叶えられない夢を見させてもらっている。
熱量さえあれば、それを表現する能力さえあれば、世界は変わるかも知れない。大人になってまで、こんな無謀な夢を少しでも信じることができるなんて思いもしなかった。決して自分のことではないのに、こんな気持ちにさせてくれて本当に感謝している。だからこそ、もしも大人の夢を託してしまっていたら…と心配することがある。
今後も歴史に残るような活動を海外で魅せてほしいし、それがちゃんと彼女たちにとっての夢や理想に繋がっていてほしい。
だからYUIMETAL、いや水野由結がかねてから大好きなアリアナ・グランデと邂逅する日を心待ちにしている。
BABYMETALが一生続くわけではない。いつか必ず終わるが来る。それがいつになるか分からないけど、その先が3人とって笑顔の絶えない未来であるべきだ。 一つ一つの夢が叶うことで、その道を切り開いていってほしい。
YUIMETALのアリアナ・グランデの前で見せる笑顔はまた一味違うだろう。応援している大人たちの夢が、ちゃんと彼女たちの夢であってほしいと心から願っている。

今回、モッシュピット・オンリーであることから今までスタンド席で観ていた客層も入り混じり、ライブを楽しむスタイルがごちゃ混ぜになった。それが良くも悪くもカオスを生み出し、賛否をも生み出していた。
熱気で体力が奪われ、圧縮で神経がすり減る。己の限界を知ることになった。久しぶりに本当に死ぬかと思った。でも、その反面喧騒の中で拳を突き上げるのが気持ちいい。スタンド席では決して味わえない、“ライブ”を全身で体感できた。全身が痛くても、心のコルセットはそう簡単に外せない。

公式サイトのトップページが『バットマン ビギンズ』を模したものから、『ダークナイト』 を模したイメージへ変わっている。
ということは、その次は『ダークナイト ライジング』だろうか。“戦国ウォール・オブ・デス”の紙芝居で告げられる「ライジング・サン」を連想する。日出ずるマークを思い起こす。今後は雑誌『AERA』の表紙を飾ることをはじめ、国内での展開が期待される。紅の月が浮かぶ漆黒の闇を白夜へと変えると、そこには「紅白」というキーワードが浮かび上がる。まさか…
想像するのが楽しい。トリロジーはどう終局を迎えるのか。『ダークナイト』シリーズで掲げられる「正義とは何か」というテーマ通り、そこで“カワイイは正義”の真髄が見られるのかも知れない。

次にBABYMETALを体感するのは、いつになるのか。このストーリーの次のページを、一刻も早く開きたい。


2015年6月21日 BABYMETAL WORLD TOUR 2015『巨大天下一メタル武道会』@幕張メッセ 展示ホール1〜3
〈セットリスト〉
01、BABYMETAL DEATH
02、ギミチョコ!!
03、ド・キ・ド・キ☆モーニング
04、ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト
05、あわだまフィーバー
06、Catch me if you can
07、おねだり大作戦
08、紅月 -アカツキ-
09、悪夢の輪舞曲
10、4の歌
11、新曲(タイトル未定)
12、いいね!
13、メギツネ
14、イジメ、ダメ、ゼッタイ
15、ヘドバンギャー!!
16、Road of Resistance



3 件のコメント:

  1. There is no one for the person who knows an ending of this story. In this world.
    BABYMETAL, because they're the only existence.

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  2. いつも通りの熱いライブレポート堪能しました。
    モッシュでは無く後で客観的に観ていたものの、スクリーンでは無くバードウォッチング用の高倍率で観たBABYMETALはまさに巫女でした。

    タノ爺(clone #01174)

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  3. 素晴らしい、ライブレポートです。それは「震え」がくるほどの迫真のレポートです。
    この娘達が、わずか4年前、カラオケで「ドキドキモーニング」を歌う映像からすれば、
    ここまでになるなど、誰が思っていたのでしょう。1年ちょっとで、世界を駆け抜けた
    彼女とバンドとスタッフ達、その体験から得たものは、「世界的バンド」になりえた、
    確信だったのではないでしょうか?この先も、果て無き道に、数々の伝説が生まれ
    ゆくことでしょう。オーディエンスは、さらなる高みへ誘われることになるのでしょう。

    仰ぎ見るは、畏怖の念さえわきあがる、神々しい、わずか17歳以下のこの子達。
    一体全体、どこからこんなエナジーが湧き上がるのでしょうか?

    K.W

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