たけうちんぐ最新情報


⬛︎ たけうちんぐと申します。ライターと映像作家をやっております。 プロフィールはこちらをご覧ください。
⬛︎ 文章・撮影などのご依頼・ご相談はこちらのメールアドレスまでお気軽にお問合せください。takeuching0912@gmail.com
⬛︎ YouTubeチャンネルはこちら→たけうちんぐチャンネル/Twitterアカウントはこちら→

2015年1月10日土曜日

ひょっとしたら世界を変えるかも知れない。 - BABYMETAL@さいたまスーパーアリーナ



BABYMETAL。これ以上、狂わせてくれるものを知らない。

ソールドアウトのさいたまスーパーアリーナは2万人。 終末観漂うステージセットに、巨大な橋が架かる。空から降りてきた棺桶が開くと、海外での“武者修行”を終えて日本に舞い戻った3人が目の前に現れる。客席は狂乱の渦に巻き込まれ、指で掻き回すように荒れ狂う。

“メタルレジスタンス”が第3章に突入する。
その“レジスタンス”は元々、ライブのムービーで語られる壮大な物語の中にあった。メタルレジェンド達のオマージュを散りばめ、ハリウッドの超大作映画のようなスケールで描かれる物語は、当初は「んなわけねーだろwww」という楽しみ方があった。
でも、今は違う。“レジスタンス”は現実化した。んなわけあったのだ。笑った人々を見返すように、BABYMETALはその後数々のメタルレジェンド達と邂逅をする。先日リリースされたばかりのライブアルバム『LIVE AT BUDOKAN』はiTunesのアメリカ、イギリス、ドイツ、カナダのメタルチャートで堂々の1位。その他、台湾、シンガポール、ブルネイ、リトアニア、マレーシア、パラグアイなど世界各国のメタル/ロックチャートのトップ10入りを果たした。
その楽しみ方は、いつの間にかフィクションからノンフィクションに変わっていた。メタルの復権を祈る神=キツネ様のお告げのもと、“新しいメタルの誕生”を意味するBABYMETALが繰り広げるドキュメンタリーを目撃する楽しみになっていた。
そのワンシーンを目撃するために、新年一発目のワンマンライブに向かう。場所は国内過去最大規模の会場、さいたまスーパーアリーナ。2万人キャパのチケットはもちろんソールドアウト。今回は海外向けチケットも売り出され、世界中からファンが詰めかけた。

さいたま新都心駅付近には、キツネのお面を被った人々で溢れかえる。知らない人が見たら何かしらのお祭りに見えるだろう。その通り、今日は『新春キツネ祭り』。メタルの神を祀る、壮大なフェスティバルを楽しみに来た。



会場に入ると、まず目に飛び込んできたのは朱塗りの太鼓橋。画像のような、神社に架けられているような橋がステージの両サイドに位置し、薄暗い中で煌々と輝いていた。
そして、今回は初のセンターステージが施されていた。ステージから隔離されたその浮いたフィールドが本番になるとどう生かされるのか、ライブ前から妄想が膨らむ。
2万人の会場は壮観。スタンド席から見渡すとそのスケールに心が躍る。今から何が始まり、何が告げられるのか。全身骨タイツのスタッフが“BABYMETAL”フラッグを掲げ、開演を待つ観客にヘドバンを煽る。ライブ前から会場は叫び声と拍手に包まれる。胸の高まりは収まらない。
この日の模様は3月にWOWOWで放送される事がアナウンスされている。昨年リリースされた『LEGEND1999』『LEGEND1997』といい、今年初めの『赤い夜』『黒い夜』と近頃は映像に恵まれている。 さらにワールドツアーの映像を使用した新曲『Road of Resistance』のトレーラーと第1章・第2章をすっきり清算させるような流れから、今日に辿り着いた。だからこそ、清々しい気持ちで第3章を迎えられる。

さあ、ついに“キツネ祭り”の幕が上がる。

地鳴りのような歓声で迎えられるのは、“METAL RESISTANCE EPISODE3”の文字。オープニングムービーが始まる。先ほどまで鳴り響いていたメタルと打って変わって、オーケストラのような音楽でBABYMETALのこれまでを振り返る。
これがまるで早くもクライマックスを迎えたように劇的で、涙腺を刺激する。2014年の世界各国でフォックスサインを掲げる観客と、BABYMETALの3人の姿が映し出される。日本語のナレーションで、この1年間の“ノンフィクション”が語られる。

「世は混沌(カオス)の時代。世界中の人々がメタルの魂を失いかけていた2014年。BABYMETALはキツネ様のお告げに従い、メタルで世界を一つにするという使命を背負い、異国の地へ旅立った。」

“世界を一つに”なんて絵空事に思うが、彼女たちはそれを現実にした。昨年7月にイギリス・ネブワースとロンドンで観た光景は、まるで嘘のようだが現実だった。メタラーたちが「DAME!」と叫びながら飛ぶなんて、誰が予想しただろうか。ライブが始まると泣きだす女の子なんて、誰が想像できただろうか。
頰を抓った。キツネにだまされたと言うべきか、おとぎ話でも見ているかのようだった。

「幼きメタルの魂は世界中を駆け巡り、国を越え、言葉の壁を越え、感動を与え、そして世界は一つ“THE ONE”になったのであった。」

オープニングだけで込み上げてくるものがある。待て待て、まだメンバーが出てきていないぞ。ここで泣いてどうするんだ、と自分に言い聞かせる。3人が道なき道を進んだ、奇跡のような軌跡は何度振り返っても胸がいっぱいになる。
やがて映像には、ワールドツアーで流れたオープニング=『スターウォーズ』を模した銀河を突き抜ける棺桶が現れる。

「メタルの銀河を旅し、世界中で数々のレジェンドを生んだBABYMETALは新たなメタルレジスタンスの幕開けとともに再び“日出ずる国“”へと舞い降りる。」

そうだ、第1章は棺桶で幕が下りた。1年前の日本武道館2日目『黒い夜』のエンディングを思い出す。あの日、3人が“召喚の儀”としてそれぞれ棺桶に入り、天空へ上っていった。この1年間は、その棺桶が銀河を旅するストーリーだったのだ。
ステージ上から棺桶が降りてきて、着地する。映像に映し出された棺桶がまるで銀河から降りてきたように、ごく自然にステージに現れる。

「この地に、最強の鋼鉄の三銃士が舞い降りた。」

メンバーそれぞれがシルエットとなり、棺桶から現れる。

「Scream&Dance…MOAMETAL」「Scream&Dance…YUIMETAL」「and Vocal&Dance…SU-METAL」

一人一人が現れるたびに歓声が起こり、映像と舞台セットを連動させた演出に息を呑む。これがBABYMETALの本気だ。1年の幕開けにふさわしい、第3章の始まりを予感させる大掛かりなステージに目を見張る。
いよいよ全貌が見えてくる。煉瓦作りのステージセットは終末観溢れる景観で、まるでドラクエのラストダンジョンのように緊張が高まる。今日のライブはただ事じゃない。確信しかない。さあ来る。迫り来る爆音の予感に、心臓が破けそうだ。ナレーションが終わりを迎えて、ついに始まる。

「一寸先は闇。未知なる挑戦に道はない。道がなければ道を作ればいい。さあ、時は来た。いざ進まん!」

「キ〜ツ〜ネ〜 キ〜ツ〜ネ〜 わ〜た〜し〜は 〜メ〜ギツネ〜♪」
真っ暗闇の中、日本古謡『さくら さくら』のメロディが歌われる『メギツネ』のボーカルのみが聞こえる。するとその途端に重低音が鳴り出し、会場は真っ赤なライトで照らされる。
ギターの神、ベースの神、ドラムの神の姿が現れる。ステージ後ろは巨大な棺桶の形をしたセットが光を放ち、そのてっぺんに“THE ONE”のシンボルが刻み込まれている。
ステージとセンターステージの間に巨大な橋が架けられる。朱塗りで怪しく彩られたその橋を3人がゆっくり歩く。顔にキツネ面を翳す。表情は見えない。『BABYMETAL DEATH』でクロスするフォックスサイン同様、登場から顔を見せない演出は興奮を掻き立てる。渇望感を生み、期待感を煽る。やがて『メギツネ』が始まると、ステージセット、メンバー、すべてが明るみになる。

センターステージで舞い踊る3人。その周辺のブロックはさいたまスーパーアリーナなのに、まるでライブハウスに程近い臨場感でステージを見渡せる。
「それそれそれそれっ♪」煽るYUIMETALとMOAMETAL。2万人の観客が一斉に手を挙げ、赤く染まった会場が美しい。SU-METALの静と動をわきまえたバランス感覚溢れるパフォーマンス、伸び伸びとした歌声に聞き惚れる。
キツネ祭りの一発目でコンコンコンココンコンココンッ♪とは縁起がいい。
続く『いいね!』は恒例のレーザービームが四方八方飛び交う。360度から視線を浴び、そこに目掛けて熱い視線が注がれるセンターステージはいわば渦の中。途中の「YO!YO!」の部分は珍しく過去バージョンで「アタマユラセ、メガネハズセ、アタママワセ、メガネハズセ」が歌われ、「YO!YO!」と煽りながらセンターステージを離れ、「BABYMETAL IN THE HOUSE!」「ARE YOU READY!?」とさらに煽る。「セイホー!」「S・S・A!」のコールの後は、ステージに戻った3人の前で巨大な橋が天井にゆっくり上がっていく。
大掛かりな演出だが、その演出が変に目立たない。3人の動きに沿う華麗な構成に、今日のライブ絶対に最高なものになるだろう。そんな予感しかない。

次は、昨年末のSU-METAL聖誕祭『APOCRYPHA-S』で初披露された新曲。デジタルハードコア調のイントロと、サビのポップなメロディが『ギミチョコ!!』の続編を思わせる。「あわー あわー あわわわフィーバー♪」とYUI&MOAがかわいらしく歌唱する部分で、ステージ後方の棺桶形のセットに初めて3つのLEDが映し出される。メンバーそれぞれの表情を切り取る分割画面で、昨年9月のワールドツアー日本公演@幕張メッセを思い出す演出。両腕で円を描く3人がかわいらしく、思わず変な声が出る。ガムの歌だけにバブルを意味しているのか、これまた世界中に中毒者を生み出しそうで恐ろしい。
『紅月』は、前回のライブでは叫ばれなかった「アカツキだー!」が聞けた。いつものように炎ではなく、煙の柱が幾多にわたってSU-METALを取り囲む。マントを翻し、ギターの神2人のソロに背を向ける仕草がとことん凛々しい。
続いて『おねだり大作戦』はYUIMETALとMOAMETALの姿がステージ後方にそれぞれ映し出されるが、YUIの動きにカメラが追いつけていなくて焦れったい。それほどすばしっこいという事か、ようやく追いついたらもう手遅れ。歌詞の通り、その天使の笑顔にだまされていく。
『Catch me if you can』の神々のソロから、BABYMETALが海外で“バンド”と認識されている事を改めて痛感する。メンバー3人がいなくても会場の熱気は変わらない。実際、こんな超絶テクを見せられたら無視できない。焼け焦げる匂いすら感じるギター。魔術のように手をうねらせるベース。挙げ句の果てに、マシンガンのように打ち続けるツーバスで全身は 穴だらけ。
そこにさらに「はいっ!はいっ!」とリズムに合わせて煽りに入るメンバーが来るのだから、一溜まりもない。「1、2、1、2、3、4!」から客席は掻き混ぜられる。全身の血が騒ぐ。2万人規模のかくれんぼの正体はサークルモッシュだった。それらは約7、8カ所で同時多発的に発生し、大きな大人たちが一斉に追いかけっこを始める。
太鼓橋を渡りながら掛け合うYUIとMOA。いつもと違ってその距離は遠い。もうすぐ「とっておきの場所を発見♪」が来るというのに、MOAがSU-から離れている。間に合わない!急いで!と思ったら、橋の上で「発見♪」する。そうか、そこが今日のMOAのとっておきの場所なのか。

『ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト』は冒頭からSU-がいきなり「SAY!」と煽り、「ウキウキミッドナイト!」と掛け声が響き渡る。「いいね!」の多めのアジテーションといい、MCが一切ないBABYMETALが最近は積極的に観客との距離を縮めていく。 途中のダブステップ部分ではあえてLEDでメンバーを映し出す事もなく、この目でそのパフォーマンスを見る事に集中させてくれる。
ライブは止まる気配が一切ない。紙芝居ムービーがない。そのまま『4の歌』へ続き、破壊力抜群のかわいさにひれ伏すようにヘドバンをする。このかわいさは一体何なんですか。YUIがMOAの陰に隠れて、ひょっこり顔を出して「ヘヘーイ♪」ですよ。その逆も然りでかよ。殺す気ですか。
後半は両サイドと、中央のセンターステージまでの橋を渡りながら「せーの!」とヨンヨンッコールを煽るYUIとMOA。
「もっと声出せるよね!怒」「まだまだ全っ然足りないよ!怒」「もっともっとー!怒」
ちょっとお怒り気味に煽り続ける。声のおねだり大作戦のハードモードに、一人一人がお叱りを受けている気分になる。「すっ、すいませんっ、がんばりますっ!」って気持ちで声が大きくなっていく。
BLACK BABYMETALはとことんSっ気なのが面白い。その幼い外見で強気な態度を見せるのが、日本のみならず世界中の大人たちの表情をふやけさせるのだろう。
センターステージにいる状態で曲が終わり、2人は地面に描かれた“THE ONE”のマークに吸い込まれるようにその場で姿を消す。『悪夢の輪舞曲』は神々のソロ演奏からイントロに入り、SU-METALが歌い始めると次第に小さな火柱が上がり始める。SU-がステージとセンターステージを繋ぐ橋の上で歌っていると、その橋がそのまま上がっていく。孤立した場所で歌い続けるSU-の姿と曲の世界観が絶妙に合っている。朱塗りの 柵と光に照らされたSU-の横顔が言葉を失う美しさで、轟音の中で静寂を何度も見つける。これが世界に認められたボーカリストか。今、自分は世界的アーティストのライブを観ている。改めてその事実を知らされ、凄腕ミュージシャンの演奏に全く引けを取らない歌声に酔いしれる。音に負けない歌唱力はこの“バンド”の最大の武器だ。

『ヘドバンギャー!!』の中盤はYUIとMOAがひさしぶりにCO2バズーカを手に持ち、客席に目掛けて煙を噴射する。2人のハイジャンプに倣って2万人の客席全体が一斉に飛び跳ねるが、その着地する時の震度は3くらいは計測されるはずだ。
続いて『ギミチョコ!!』 と「!!」が付く楽曲が続き、世界の扉を一気に開くキッカケになったこの曲でメンバーが3方向に散らばり、再び一堂に会するタイミングがいつ観てもかっこいい。獰猛とした音の中でも整然としている。シンメトリーを描く振り付けが芸術の域に達している。いくらメタルやハードコアに包まれていても、上品さを忘れていないからその振り幅に感動する。
SU-METAL「カモン!さいたまスーパーアリーナ!スクリーム!」MOAMETAL「聞こえないよー!」YUIMETAL「もっともっとー!」
思えば、BABYMETALは海外公演から観客を煽り始めた。ステージは大きくなり、客席から離れたはずなのに、その距離をどんどん縮めようとする。手の届かない存在であるはずの彼女らが自ら追いかけるように、一緒に歌うようにマイクを向ける。
コール&レスポンスでは、先ほどまで『紅月』『悪夢の輪舞曲』などでクールな佇まいを見せていたSU-が嘘のように無邪気に微笑み、17才である側面を垣間見せる。本当に楽しそうに笑うからこそ、こちらまで笑顔になる。
MOAMETALの元の位置に帰りながら、何度も「お願い」のポーズで振り返って両手を合わせる仕草がかわいい。YUIMETALはもう、笑顔を見せるたびに意識が遠のく。よくここまで美少女3人が揃ったものだと改めて感動する。

ライブ本編は終盤へ。『イジメ、ダメ、ゼッタイ』の冒頭のピアノが流れ、いつものムービーが流れる。オープニングが日本語だったのに対して、なぜか全編英語バージョンのムービー。和洋折衷とはこのことか。
燃え上がる“WALL OF DEATH”の文字。すでにアリーナ席は幾つもスタンバイができている。大きな空洞が約7ヶ所で生まれ、その中央で雄叫びを上げる人がいる。決戦の時を迎えたように、意気揚々と互いに向き合って咆哮する。
ライブ前日、今回のライブはモッシュ 等危険な行為を禁止する旨がアナウンスされた。これを真に受け止めるか、ダチョウ倶楽部の「押すなよ!」的 なものとして受け止めるか、賛否が分かれる。禁じられた行為を実行する。これも一種の“レジスタンス”になるのだろうか。しかし、この熱狂の渦の中で議論する余地はない。今はただ、そこに巻き起こっている熱気に従うしかないだろう。
ウォール・オブ・デスは躊躇う事なく実行される。
SU-METALが現れて、手をクロスしたらもう臨戦状態。彼女の咆哮とともにYUIMETALとMOAMETALが太鼓橋を全速力で走り抜けて、それに倣って各ブロックは戦国時代のように人々が対面して走る。身体をぶつけ合う。指で乱暴に掻き毟ったように客席は乱れ、幾つも火柱が吹き荒れるステージに再び視線を向ける。
熱い。これは火柱の熱さじゃない。火を見ると気持ちが高ぶるせいか。いや、違う。少女3人のあくなき戦いと、それを支えるメタルバンド。まるで城=メタルを守るように、武士たちが戦いの狼煙を上げている。

「痛み 感じて ずっと ひとり こころ 気づかないふり もう 逃げない イジメ、ダメ、ゼッタイ」

向き合う3人の切ない表情。何度体験しても新鮮に感じる。その後に続くYUIとMOAのバトルシーンで、YUIが飛び蹴りし、しゃがんだMOAの身体を飛び越える。突然のアクロバティックなパフォーマンスに度肝を抜かれる。煉瓦作りのステージセットが市街戦を盛り立てるようで、幾多に渡る火柱が戦火を思わせる。
まるでハリウッドの大作映画のスケール。それをライブで表現するのがBABYMETAL。「君を守るから」で親指を立てて、3人が向かい合う。日本武道館の劇的な光景を振り返ると、その「守る」により一層力強い意志を感じてしまう。
一斉にダメジャンプをする会場。2万人がフォックスサインを掲げる光景に心打たれたのは、今日で何度目だろう。
初めて観た2013年2月のZeppTokyoから今日まで、何度最高を更新し続けているのか。ライブを重ねるごとにその楽しさは増してくる。いつだって今日を最高のものにする。

「We are!」「BABYMETAL!」 「We are!」「BABYMETAL!」 「We are!」「BABYMETAL!」
何度も叫び、橋を渡って両サイド、センターステージまで駆けつける3人。会場の大きさ、取り巻く状況、身長。2年前に初めて観た時と変わったが、変わらないのは3人の無邪気な笑顔だ。この笑顔こそが、BABYMETALに一本筋を通している。彼女たちの大きな魅力なのかも知れない。

「See You!」
去っていく3人にアンコールが鳴り止まない。 「We want more!」と叫び声が続く。ワールドツアーからこの掛け声が日本でも取り入れられた。海外から観客の盛り上がりすら逆輸入するかのごとく、本場のメタルの現場にどんどん近づこうとする。
そこで“世界を一つに”という目的が思い浮かぶ。イギリスでも日本でも、その熱気は変わらない。

やがて再び音が鳴り出す。BABYMETALの1stアルバム『BABYMETAL』のオープニングを飾る、あの曲のイントロが。
映像が流れ、そこに炎の輪郭でキツネの顔が何度も迫ってくる。空間を切り裂くように神々の演奏が始まると、ステージ後方のLEDに巨大な“BABYMETAL”の文字が浮かび上がる。音に合わせて白い光がストロボになり、手をフォックスサインでクロスした3人がステージに現れる。
『BABYMETAL DEATH』はいわば自己紹介ソングなのに、どうしてここまで狂わせてくれるのか。 MOAMETALの「MOAMETAL DEATH!」のニヤリとした笑顔は、ワールドツアー以降から発明されたように思う。中継カメラがその表情を抜いてくれて、この笑顔が堪能できただけでもアンコールは満足する。得意げな表情から自信が垣間見れて、子どもの恐れ知らずの未知なる脅が感じられる。
表情で歌い、表情で奏でるMOAの才能にひれ伏す。「DEATH!DEATH!DEATH! DEATH!」と一斉に連呼する会場は、いまだかつてない恐ろしい一体感で再び興奮の渦に。

そして、ライブは終わりを迎える。
『ド・キ・ド・キ☆モーニング』から、『Road of Resistance』へ。過去と今を繋げる構成と、最後のムービーが観客を煽る。

「時は戦国、世は混沌(カオス)の時代。最後の灯火となったメタルの魂を救うために、BABYMETALは鋼鉄の合戦に挑む。真っ赤に燃えるメタルの魂がライジング・サンを描き、魂の叫びが“WOW WOW”と鋼鉄の調べを奏でる時、世界は一つになる。“みんなは一人のために、一人はみんなのために”。合戦が今、始まる。」

アレクサンドル・デュマ・ペールの『三銃士』に倣って、“One for all, all for one”が「THE ONE」を匂わせる。そして、三銃士のごとく現れるSU-METAL、YUIMETAL、MOAMETALが“BABYMETAL”フラッグを背負い、勇ましい表情で歩き始める。
『Road of Resistance』のイントロが鳴り、一旦演奏が止むとドンッドドンッと不穏な振動が響く。3人が平泳ぎのような仕草をする。そこで大地が裂かれるようにバリバリッと破壊音が聞こえ、雷が打たれるようにゴゴゴゴと鳴る。その良い意味で過剰な演出に思わず笑い、その途端に始まる凄まじい光景に笑えなくなる。
3人の手の動きに合わせるように、客席はモーセの十戒のごとく掻き分けられる。『イジメ、ダメ、ゼッタイ』に次ぐ、新たなウォール・オブ・デスソングの誕生。大きな空洞はやがて直線となり、センターステージ前のブロックは端から端まで空洞が繋がる。
さあ、準備は出来た。時は来たのだ。
再び音が鳴り出すと、人々は空洞に目掛けて一斉に走り出す。まるでワニが大きく歯を噛むようにぶつかり合い、BABYMETALは馬に鞭を打つような振りで立ち向かう。

「東の空を真っ赤に染める 狼煙の光が 孤独の闇の終わりを告げる 新たな道標」

BABYMETALの“今”を歌っているような歌詞が、なんとも異様な説得力を生む。「進め、道なき道でも」「今日が明日をつくるんだ」なんて陳腐に思えるかも知れない。だが、BABYMETALは実際に道なき道を進み、過去に前例のない世界的成功を収めた。決定的な結果しか残さない“戦い”がまさに今日が明日をつくり、ありふれた言葉に聞こえない。ありえない事象を次々と巻き起こすからこそ、この曲はさらに特別なものに聞こえる。

「WOW WOW」と続き合唱。すべての音が止み、SU-METALがテンポを整えながら合唱に誘う。会場は明るくなり、向かいのスタンド席もはっきり見える。
その時、大画面に映し出されたMOAMETALの表情が忘れられない。2万人が一斉に拳を上げて、センターステージに向かって360度視線を注ぐ。それを受けた彼女の表情は恍惚としていて、BABYMETALの軌跡を物語っているように思えた。

「君が信じるなら進め、答えはここにある」

BABYMETALがこの活動を始めた頃、3人は何を思っていたのか。壮大なストーリーやコンセプトを抜きにして、何を目指してここまで辿り着いたのか。
世界中のどこを探しても、こんな経験をした15才と17才はいないだろう。運命を背負ってしまった3人が抱えるものは想像できないくらい大きく、その奇跡は計り知れない。
なぜか目に涙が溜まる。
言葉がなく、歌と演奏と合唱しかない世界で見つけたものは“答え”だった。BABYMETALが掲げたその“答え”は、今目の前に広がっている光景そのものだ。

勝利を勝ち取ったようにYUIとMOAが身体を仰け反りながら拳を上げ、ライブは終了する。
「We are!」「BABYMETAL!」 「We are!」「BABYMETAL!」 「We are!」「BABYMETAL!」
何度も掛け合い、最後は「See You!」という言葉だけで去っていく。
また新たな伝説を目撃してしまった。
最後のムービーで第3章の幕開けが告げられる。

「Road of Resistance。それは、道なき道を突き進む戦い。混沌の時代を迎えた日出ずる国で、メタルレジスタンス・第3章のトリロジーの扉は開いたのだ。 」

キツネ様が新たな試練とは、 トリロジーの3点を繋ぐ3種の神器を手に入れる旅。メタルゴッドの待つ異国の地へ旅立つという。

「史上最大の鋼鉄の合戦のために。」

なんと、再びワールドツアーを開始。2015年、BABYMETALはWORLD TOUR2015と題して5月から異国の地へ旅立つ。
そして6月に幕張メッセで“MOSH PIT ONLY”の日本公演。大きな歓声が上がる中、BABYMETALの『新春キツネ祭り』は幕を閉じる。第3章の幕開けとともに、新たなストーリーの始まりを告げられながら。

「日出ずる国に戻ってくる」というので、日本国内のライブツアーを予想していた。それが面白いくらいに覆された。BABYMETALはまだまだ海外を舞台にしている。第2章の“武者修行”とは違い、3種の神器を手に入れるとは一体何を意味するのか。

そして、それぞれの地で待つメタルゴッドとは?

BABYMETAL、2015年も一瞬たりとも見逃せない。


“レジスタンス”は今、世界中のあらゆる場所で起きている。
そこに血が流れ、悲しみが溢れている。何かを崇拝し、愛することで混沌を生む。愛がどうしてここまで人々を狂わせて、命を奪っていくのか。
BABYMETALのストーリーでも描かれる「終末観」は、むしろ現実のほうがより過酷に思う。
彼女たちが第2章で訪れたフランスで、自由が奪われる悲しい事件が起きた。それも一種の“レジスタンス”であり、またそれに反発する事が新たな“レジスタンス”を生んでいく。
「世は混沌(カオス)の時代。」
フィクションは極めてノンフィクションの一途を辿る。
ただ、BABYMETALの“レジスタンス”は誰も殺さない。幾ら「DEATH!」と叫んでも、誰も死なない。人々を熱狂させて、感動を生む。そこに集うはずのない人々が一堂に会し、笑顔にさせていた。海外で見た美しい光景の中で、“世界を一つ”にしていた。「こんなのメタルじゃない」と批判する人もまたメタルを愛するが故の批判であり、それがビール瓶として投げ込まれるわけでもない。
その衝突こそがまるでウォール・オブ・デスに見えて、より一つのジャンルに関心が高まっていく。いずれにしても、そのノンフィクションは世界のあらゆる“レジスタンス”とは違う。
この世界で唯一美しい“レジスタンス”に見えなくはないだろうか。
音楽で世界を変えるなんて、夢物語を言うわけじゃない。
ただ、いまだかつて存在しなかったストーリーに、白いバラならぬ黒いバラが咲き、赤いオーケストラが奏でられる。
それは誰かの笑顔の理由になる。
少女たちの“完全燃焼”が、ひょっとしたら世界を変えるかも知れない。そんな希望だって、ちょっとくらい胸に抱いてもいいじゃないか。

第3章は劇的に始まった。
今後も、BABYMETALの“メタルレジスタンス”から目が離せない。


2015年1月10日 BABYMETAL『新春キツネ祭り』@さいたまスーパーアリーナ
〈セットリスト〉
01、メギツネ
02、いいね!
03、新曲
04、紅月-アカツキ-
05、おねだり大作戦
06、Catch me if you can
07、ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト
08、4の歌
09、悪夢の輪舞曲
10、ヘドバンギャー!!

11、ギミチョコ!!
12、イジメ、ダメ、ゼッタイ

(アンコール)
01、BABYMETAL DEATH
02、ド・キ・ド・キ☆モーニング
03、Road of Resistance

4 件のコメント:

  1. 私もSSAに参戦しました。
    正に参戦という言葉がピッタリなライブでした。ステージに立つ彼女たちの命を削るようなパフォーマンスにこちらも呼応するようなライブでした。
    新たな扉を開いた彼女たちはどこまで進むのか。最後まで見届けたいと思います。

    それにしても読ませる文章ですね!
    読み始めたら一気に引き込まれました。
    他のライブの記事も素晴らしかった。
    改めて言葉の力を感じました。

    返信削除
    返信
    1. コメントを書いてくださり、ありがとうございます!
      ステージと客席の熱気はまさに“参戦”でしたね。こんなにこの言葉がしっくり来るライブがあるとは、と改めて思います。
      BABYMETALがどこまで行くのか本当に楽しみです。

      そう言っていただき恐縮です!励みになります。今後もライブのたびにレポートを書いてまいりますので、よろしければご覧くださいね。

      削除
  2. 私もSSA参戦しました。期待値の高い中、それ以上のライブを見せ、
    観客を納得させた。世界ランカーとはこいゆうものかと私を震えました。長嶋茂雄並みの天才であるSUに大秀才であるMOAとYUIが本当に良く付いて来ました。YUIの体力とMOAの気力も並み外れています。漫画や夢物語の世界が現実になりつつあります。もう世界制覇はネタでも設定でもない。初めての世界をBABY-METALは見せてくれるでしょう。

    返信削除
    返信
    1. SEIKI-METAL様 コメントありがとうございます!

      世界に通用するSU-METALの歌と、その歌にふさわしいYUIMETALとMOAMETALの並々ならぬ運動力と気力。ヒーロー映画を観ているかのように、「ありえない」ことを現実化する3人の物語をリアルタイムで目撃できる事が幸運に思います。
      世界制覇まで、どんどん切り開いていってほしいですね!
      今後も楽しみです。

      削除