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2011年10月31日月曜日

ナンバーガールとは一体何だったのか?


ナンバーガールとは一体何だったのか?

解散して9年になる。
その後のあらゆるバンドに影響を与えた。一般的にはCDの売り上げも知名度もそれほど爆発的人気を誇ることはなかったが、今現在も音楽関係のみならず様々なアーティストにファンが多くいる。『ナンバーガール』がひとつの代名詞にもなる。『ナンバーガールっぽい』という形容詞だってある。多くの若いバンドマンが彼らに憧れている。だけど彼らのサウンドには近づけても、その世界観にはなかなか近づくことはできない。

日常に潜む狂気。凛々とした少女。都会の喧騒。祭囃子。他では体験できない世界がナンバーガールにはある。

たった4枚のアルバムを発表して解散したナンバーガールは、これまでの日本のロック史にはなかった日本語ロックの新しい形を提示していた。内面を激情の言葉にして叫ぶバンドは数多くいる。だけど、気持ちは高ぶっているのにどこか自分はその場所にいなくて、傍観している。それを叫ぶのが向井秀徳(Vocal/Guitar)であり、彼の独特な歌詞世界がナンバーガールの大きな個性だった。
田渕ひさ子(Guitar)、中尾憲太郎(Bass)、アヒト・イナザワ(Drums)というメンバーにより奏でられる、鋭くて殺傷力のあるギター、爆発音にも似たベース、マシンガンのように常に撃ち鳴らすドラム。ライブバンドとしても圧倒的なテンションでその存在を知らしめ、ただでさえ個性溢れる音楽なのに、そこに更に向井の独特な言い回し、造語、描写が歌詞で乗っかっていく。

元々アートシアターギルドの映画を好んでいる向井は、1970年代、80年代の日本映画にも通じる世界観を音楽に表していたように思う。それはイラストでも、ヘルメットを被り、角材を持った全共闘の青年を描いたライブのフライヤー、17才の少年による政治家・浅沼稲次郎刺殺事件の光景を描いたCDの裏ジャケットに反映されている。
また、歌詞にも林静一の1970年代の漫画『赤色エレジー』が登場し、曲のタイトルも『転校生』といった大林宣彦監督の同名映画を匂わせる。他にも、ミュージックビデオのゴシック体のテロップの出し方などにもスタンリー・キューブリック監督作品の影響が見られ、向井が監督した『タッチ』のPVは森田芳光監督の『家族ゲーム』のオマージュであり、どこかしら20年以上前の青春に憧れを抱いているように思われる。
過ぎ去った時代の若者の熱さと、現代の若者の冷え切った日常。こういった対比と、どこか共通する退屈。それらがさりげなく散りばめられ、音楽という枠を越えようとし、現代を描こうとする姿勢が伺える。

向井は"少女"で現代を描こうとした。
CDジャケットには向井によって様々な少女が描かれている。しかし、どれも目が描かれていない。輪郭だけがあり、顔と表情は分からない。そこにあらゆる女の子を自由に投影できるかのように、 抽象的なイメージだ。
映画のように登場人物を用いて、何かを主張する。向井は「少女」や「あの子」を登場させて、景色を真っ暗闇にも清々しい青空にも変えてしまう。向井自身の一人称は存在しても、どこか遠くにいる。彼の記憶と妄想の中で薄っすらとした曖昧なシーンが、具体的な言葉で綴られていく。
ほとんどの歌というものが自らの考えや気持ちを率直に綴った"コラム"であるならば、向井の歌は"物語"を綴られた感覚に近いのかも知れない。
あたかもナンバーガール=番号少女と言い表してるかのごとく、その世界には数多くの少女が存在し、笑っている。
「透明」「日常に生きる」「Sentimental」「真っ昼間」「DESTRUCTION」「性的」「黒目がち」などと名づけられている。向井の中で生きる少女はどこかすべて 共通しており、儚げで寂しい。
そして「嘘笑い」がとても多いのだ。
ナンバーガールの重要な部分はこの「笑い」に関する向井の洞察だろう。

「赫い髪の少女は早足の男に手をひかれ うそっぽく笑った」(『透明少女』)
「暴力的なジョークで死にたい あの子は笑う 笑い狂う 殺人的に」(『Sentimental Girl's Violent Joke』)
「風 鋭くなって 都会の少女はにっこり笑う」(『鉄風 鋭くなって』)
「笑って あの子 歩いた夜を忘れん それは土曜日の夢しばい」(『TUESDAY GIRL』)
「あの子は今日も夕暮れ族で 半分空気 笑って走り出す」(『I don't know』)
「女は笑いながら ただ待っている ただ一人待っている」(『Tombo the electric bloodred』)

少女が笑っている描写があまりにも多く、それが単に笑って楽しんでいる様子では受け取れない。自嘲気味に、嘘っぽく、笑っている。『タッチ』に「それでも奴ら笑い合う」とあるように、笑いをシニカルに受け取っている。笑いには嘲笑、嘘笑いなどと後ろ向きな言葉がある。絶叫して歌われることで、その笑顔を悲しくも切なくも感じることができる。

誰しも日常に生きる中、作り笑いなんて幾らでも見てきたはずだ。それは相手に対する優しさもあれば、自分を守るための手段でもある。純粋・無垢な少女だって、残酷なまでに笑顔を作る。向井は人間の裏側にある本質を「笑い」の面で探ろうとしていたのかも知れない。
笑い、笑われ、笑ってあげる。取り繕って生きるしか道はない。そんな青春を疑い、ブチ切れたかのように叫ぶ。1970年代頃のロックの、いわば社会に向けられたものではなく、青春への反逆だ。ナンバーガールは、本当の意味での"青春パンク"だった。

福岡で活動していた頃に制作された1st ALBUM『SCHOOL GIRL BYE BYE』と、東京でEMIに所属してから制作された2nd ALBUM『SCHOOLGIRL DISTORTIONAL ADDICT』(録音は福岡)とでは、その少女への洞察に変化が見られる。
グラスの向こうでキラキラ輝いて見える少女に別れを告げるかのように、都会に出てきてからは彼女たちの歪んだ日常を妄想している。それでも『透明少女』はギリギリにも美しく、嘘っぽく笑う。しかし、やがて3rd ALBUM『SAPPUKEI』にもなれば、向井自身が感じた東京の都会の喧騒、闇、不安が少女に投影されており、歪みに歪みきった姿が描かれている。

4th SINGLE『URBAN GUITAR SAYONARA』に収録されている『Sentimental Girl's Violent Joke』『真っ昼間ガール』の2曲は、寂しげな少女が歌われている。笑いまくるセンチメンタルな女の子。落っことしてほしい女の子。SCHOOL GIRLの頃では考えられなかった、大人になった少女をイメージしている。
「真っ昼間から 飛び降り自殺見ちゃった アッ夏のかぜ すずしいね スカートふわり」
まるで感情なんてものを自ら殺し、無感覚に浸ったような女の子が歌われている。後に4th ALBUM『NUM-HEAVY METALLIC』の『性的少女』にあるような「記憶を自ら消去した」という女の子の原型なのかも知れない。

そんな女の子たちの極めつけは『TRAMPOLINE GIRL』だろう。
都会のど真ん中で飛んだ女の子が歌われているが、「飛ぶ」ことが一体何なのかは具体的に描かれていない。清々しくも惨くも想像できる。背が高い草の上を飛ぶ花粉にも例えられ、歌詞は直接的な言葉を避け、幻想を織り交ぜている。
「ゆらいで 傷ついて 飛ぶ」という描写から、飛び降り自殺さえ想像できてしまう。
『真っ昼間ガール』が見た自殺とは、都会の喧騒で力強く惑わされることなく飛ぶ女の子のことではないだろうか。
それを「完全勝利」と呼ぶことに、『SAPPUKEI』というアルバム名に説得力を感じる。どれほど殺伐としてしまったのか。飛ぶことが勝利なのだろうか。そんな「オレ」の鬱屈とした精神状態が少女を通して伝わり、それが鋭く尖った音で演奏されているのだから切迫感があるのだ。
また、『YARUSE NAKIOのBEAT』で男が街を眺めている都市公団の団地の6階。1960年代までに建てられた団地のほとんどは5階までしか存在しないらしい。だとすれば、6階とは屋上のことだと考えられる。
「1979年に起こった事件なのさ」
一体何の事件が起こったのか。それは、向井が後にhal&54-71に提供した曲『6階の少女』も6階であることも手がかりとなりそうだ。
6階という屋上が、まるでTRAMPOLINE GIRLが佇んだ場所にも思えてしまう。中途半端な緑の町でもあり、都会のど真ん中でもある。そういった意味でも『SAPPUKEI』のクライマックスに持ってきただけある。向井の"ナンバーガール"が何かのドキュメンタリー映画を観ているかのようなドラマチックな展開になる。それを「腐れきった感傷」と言い表す『BRUTAL MAN』がなんともやるせない。
「洞察の裏側にある冷笑」
その行き先は「オレ」と叫び、都会をトランポリンのように飛んだ女の子もやっぱり「笑っている」と歌われていた。

このように、向井は曲と曲とで世界を繋げている。それも少女が別の少女を目撃し、YARUSE NAKIOが6階から眺める景色を描くように、どこか自分は離れたところにいて、傍観している。
そして少女が飛ぶことに美しさも悲しみも含み、ダブルミーニングにもなり、解釈の幅を広げている。単なる妄想なのかも知れない。だけど、聴いていると感情が揺らいでしまう。
これは一人称で心情を吐露するように叫んでいては決して表現できない、独特な表現方法だろう。
"ナンバーガール"は一つの物語として歌われ、その物語の中に埋もれていく感傷を楽しめる。
退屈だからこそ、感傷さえも娯楽になる。
少女が煙草を吹かしながらわざと感傷に浸っているように、ナンバーガールを聴くとそんな感覚があるのかも知れない。
ナンバーガールみたいな女の子はいる。
よく笑う。家に帰ると、笑った分の頬の痛みを感じる。玄関を出て眺める景色はいつも同じ。そりゃあ誰かと話したいし、さらってほしい。時には繋がりたい。忘れたい過去もある。いつでもゆらぐし、傷つく。それでも日常に生きるしかない。並木道に自分の影が伸びて、存在していることを知る。空気の冷たさに気付き、半分空気となり、また笑って走り出す。
少女はいつだって笑っている。
それを悲しいと捉えるか、美しく思うか、いつだって気分によって変わってくる。
過去も現在も、女の子はみんなナンバーガールだ。
だからこそ、記憶と妄想を行ったり来たりするように、いまだにナンバーガールの音楽が鳴り止まないのだ。


NUMBER GIRL - YARUSE NAKIOのBEAT

2011年10月29日土曜日

【連載】神聖かまってちゃん物語~第1話「死ねー!!」~

"かまってちゃん"はこの世の至るところに存在する。

誰かから突然電話がかかってくる。
「ちょっと聞いてよ」と話し始める。用事があるわけでもなく、人は電話をかける。
誰かに話を聞いてほしい。自分のことを分かってほしい。存在を知ってほしい。
生き物はすべて、生まれて、死ぬ。食べて、寝て、繋がって、それだけで十分なはずだ。それでも、自己顕示欲というものはなぜか日々拡大していき、時代とともにそれが反映される場所が多くなった。
ブログ、ミクシィ、ツイッター。
すべては一人でいるときに更新され、 話す相手がいなくとも、そのときの気持ちや状況がインターネット上に流れていく。それが問題になったり、事件になったり。出会いがあったり、距離が生まれたり。
すべては"かまってちゃん"であるからこそ、人と人との間には絆ができたり、亀裂が入ったりもするだろう。
母親を求めて子どもが大声で訴えかけるように、赤ん坊が泣くように。
愛がなければ生命は誕生しないし、殺人も起きない。愛ゆえにかまってほしく、かまわれないとき、人は暴発してしまう。
人類は皆、少なからずは"かまってちゃん"であるはずだ。
そんな人間の普遍的な性質を体現するバンドがいた。
それが"神聖かまってちゃん"だ。

「なにそれ?し、ん、せ、い?かまってちゃん?」
2009年3月。友人からの電話で初めてそのバンド名を聞かされたとき、鼻で笑った。なんて奇をてらった名前なんだ。
だけど、その友人が日本のインディーバンドを薦めることは今までになかった。
「このボーカルの"の子"って奴、俺はすごい奴やと思ってるんやけど」
友人自身もかまってちゃんなんだろう。自分の大好きなバンドを薦めてくるなんて。
だけど、Perfumeを誰も口にしたことがない頃から絶賛し、映画から音楽、文学から漫画まで、幅広く日本のカルチャーのアンテナが鋭い友人のバトンは、正しいはず。きっちり受け取りたいと思った。
電話中、YOUTUBEで検索した。
すると『夕方のピアノ PV 神聖かまってちゃん』という動画が出てきた。

「死ねよ佐藤 おまえのために 死ねよ佐藤 きさまのために おまえはいつでもやってくる しらない嘘をついて 死ね 死ね 死ね 死ねー」



なんなんだこれは。
この歌っている人は"佐藤"と一体何があったのだ。変声期前の子どもような甲高い声で、延々と「死ねー!!」と連呼していた。ここまで率直に「死ね」という言葉が何度も繰り返される曲は初めて聴いた。
そして、夕暮れの空をずっと映している中に「死ね」が響くことにセンスを感じた。
「あっ…その曲から聴いてしもたん?俺的には『ロックンロールは鳴り止まないっ』から聴いてほしかったんやけど…」
友人としては、『夕方のピアノ』を聴くと僕に引かれると思ったらしい。残念ながら、惹かれてしまった。
夕暮れを映すカメラが大きく揺れ、感情を表しているように思った。終盤、ボーカルの叫び声がリコーダーの音に変わる。途中にランドセルを背負った登校もしくは下校中の小学生の後ろ姿の映像が挿入されており、この曲は小学生時代の何かを思い出させてくれた。
「死ね」なんて最近、口に出したことない。
だけど小学生の頃、何度か口に出した覚えがある。
給食袋を蹴ってくる奴。いきなりボールをぶつけてくる奴。順番を抜かす奴。意味もなくケンカをふっかけてくる奴。
そして、お母さん。
単なる憤りからくる「死ね」もあれば、愛ゆえに、愛を求めるがあまりに感情的になって「死ね」と口にした覚えがある。実際、そこまで真剣に死ねだなんて思っていない。だからこそ言葉だけが鋭く尖り、相手にはぶつかってしまう。
そのとき、『夕方のピアノ』のような夕暮れ空が広がっていたかも知れない。遠くで誰かがリコーダーの練習をしていたかも知れない。そして下校時間、音楽室から流れてくるピアノの音を思い出した。
この曲は暴力的でもなく、攻撃性を帯びているわけではない。
小学生の頃を思い出し、切なくなってしまった。
途端に、この楽曲を作った"神聖かまってちゃん"が気になって仕方なかった。

「これはおもしろい!やばいな!」と友人に言い、他の楽曲もYOUTUBEにPVが上がっているため、電話を切って片っ端から再生した。
『ロックンロールは鳴り止まないっ』のPVを見た。
なんなんだ、この歌詞の乗せ方と、初期衝動を蘇らせるかっこよさは。
往年のロックミュージシャンの映像と誰かの目のアップとが交互に挿入されている映像。それだけで忘れかけていた何かを目覚めさせるような演出になっており、手作り感溢れ、素人感満載の映像なのに、訴えかけてくるパワーが半端ない。
ほとんどが何かしらの権利に違反している映像だ。勝手に流すとYOUTUBEで削除されるようなものなのに、これらの映像でなければ決して表現できないものが目に飛び込んできた。
このバンド、一体何なんだ?
インターネットで検索をする。『子供ノノ聖域』という自主的に作ったサイトが見つかり、すべてが表示されるのに何分間かかかるほど、重い。必要以上にYOUTUBEの動画を埋め込み、半ば暴力的なレイアウトになっている。
画像を見つけた。
これが、初めて見た神聖かまってちゃんの画像だった。


メンバーは4人。
幼稚園からの同級生であるの子、mono、ちばぎん。後からメンバー募集で加入したみさこ。曲、そしてPVはすべて、この後ろでヘナッとした表情で突っ立っている男、の子が制作しているらしい。
後日、彼らのことを教えてくれた友人から電話がかかってきた。
そこで気になることを尋ねた。
「の子って、何才?」

彼は2才だった。
とはいえ、実際の年齢ではない。友人が彼らを知ったのは、2ちゃんねるの『ニュー速』と呼ばれるスレッドで、の子が『2才』というコテハン(固定ハンドルネーム)で書き込みを続けていたのを目撃したからだ。
『バンド板は本当低脳しかいないよね』
などとケンカを売ったスレッド名を立ち上げ、そこで自ら制作した曲のPVを貼り付けては批判・中傷を受けていた。無理もない。ケンカを売れば買われるのは当然のことだ。
友人は生粋の2ちゃんねらーであり、当然、売られたケンカを買うような目線で2才を見ていた。しかし、開いてみたその楽曲が予想外にキャッチーで、自分でも不思議なくらいに魅力にとりつかれていったという。
「その頃、ほとんどが否定側にいたのに、どんどん肯定側が増えていく光景が面白かった」
友人が話すのは、インターネット上の話。
そもそも、2ちゃんねるはイメージとしては少し恐い場所だ。好きなバンドのスレッドを見ては、悪口や批判ばかり。心を痛めるのを覚悟で覗くことが多かった。2才はそんな場所で宣伝をし、自己顕示の塊のように書き込みを続けていた。
まさに「かまってちゃん」だった。
だけど彼のバンドが「神聖かまってちゃん」。
それについては誰も批判できない。納得できるバンド名だったのだ。

「キチガイのフリした凡人で何が悪い!!
僕は特別になりたいんだ!
他になにもできないし何もないし結婚もできないし人生なんてなにもない!
音楽がなかったら本当になーんもないんだ!!!!」

2才はまるで本当に2才ではないかと思うほど、赤ん坊が泣いて母親に訴えかけるように、見えない相手にかまってもらおうとしていた。
空しさや、悲しみさえ感じさせる。
バカなのかも知れないし、イタイのかも知れない。
だけど、気持ちがむき出しなその書き込みの数々には、心を打つものも少なくはなかった。
「いまやライブハウスに行くような若者は少ない」
これには激しく同意した。
かねてからライブを観たり撮影するためにライブハウスに行くことが多い僕は、この事実には何度も直面した。
ほんとに一部の限られた人間しかいない。
好奇心旺盛なのか、貪欲なのか、はたまた日常に不満で、自分に付加価値が欲しいのか、ライブハウスに行くような人は非常に珍しい人種だと思っていた。
そこで2才はひとつの方法を提示していた。

「あっじゃあインターネットを使ったアイディアを一つだすよ!☆
僕はライブをする時家から出るのが本当にめんどくさいと思ってたんだ!
だから家からインターネットを通じてライブ感をいかに伝えられるかを考えた!!

今の時代の子供は自分からライブハウスに行くやつなんてそうはいないでしょ!??!?!?!
ロッキン音ジャパン祭りとか行くとか好きな彼氏のバンド見に行くとかなら別だけどさぁwwwwwwwwwwwwwwwwww
僕みたいな誰にも興味をもたれない人間がいかにオナニー現場をみせれっるかをこの蛆虫脳みそが考えたんだよ

色々ぐーぐるってリアル動画配信サービスとかを見つけたんだよ!
みんあここで家からライブすればいいんじゃないかな!!?!?!?!

これならバンドメンバーいなくても一人でできるよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
あとは己の技量次第じゃhない!!?
この前僕がためしにライブするよってなのって自分の曲でライブやったんだけど音ズレが激しいらしいからちょっとむずかしかったよ!!
知らない人につまんねって言われた!!傷ついた
でもうまく使えばうまい事できると思うよ☆^@^
ここだよ☆http://www.stickam.jp/

これはまだニコニコ生放送やUSTREAMが一般化されていない頃、2008/05/27の書き込み。
彼はリアルタイム動画配信を薦め、Stickamから、やがてPeercastというマイナーな配信サービスで顔を出し、スタジオ練習風景を流し、歌を歌い、ライブをした。
これが、神聖かまってちゃんの歴史の始まりだった。

宅録で制作した楽曲のみならず、宣伝もすべて自宅から発信していく。
「家でライブ」 というその方法に興味を持った。
やがて彼は家から飛び出し、ノートパソコンを片手に配信を始めた。
YOUTUBEには、彼が新宿や渋谷でゲリラライブを敢行し、注意に来た警察官ともみ合う配信動画が上がっている。
警察官との会話の合間にも「DO,DA~♪」と歌っていた。
危ないし、おかしい。
だけど、すごくおもしろいよ、この人。

ライブの予定を見ると、一ヶ月に一度のペースでしか行なっていない様子だった。
情報を得ようとmixiで検索しても、『神聖かまってちゃん』コミュニティの参加人数は120人程度。PVがこれほどあり、『ロックンロールは鳴り止まないっ』の再生回数は1万回を超えているのに。それほど知られていないのだろうか。
早く彼らの姿を肉眼で見たい。
そう思い、4月23日の下北沢屋根裏のライブに足を運んだ。

仕事帰り、予約をせずに向かった。屋根裏の受付で目当てのバンド名を店員に尋ねられた。
「"神聖かまってちゃん"です…」
正直、恥ずかしかった。
周囲にはいかにもバンドマンな雰囲気の人たちがいる中、これほどまで一般的なバンドマンのイメージとはかけ離れたバンド名はない。あと30分で神聖かまってちゃんのライブが始まるらしい。受付の用紙を見ると、彼ら目当てで来た人は僕を入れて3人。人気、ない!そしてライブハウスに入ると、人、少ない!
自分を含めて7・8人くらいしかいないライブハウスは久しぶりに見た。
神聖かまってちゃんの時間が迫ってきても、恐らく対バンのバンドマンだと思われる人が何人か入ってくる程度。純粋なお客さんが少ない分、恐くなった。演奏後、拍手でも歓声でも、何かしらリアクションする人が少ない分、心細かった。
そんなことを思っていると、ライブハウスには似つかわしくない風貌の少年が入ってきた。
白シャツを着ており、どこにでもいそうな雰囲気の男の子だった。
開いたノートパソコンを片手に持ち、その顔はパソコンに光に照らされている。
そして彼は笑いながらパソコンに向かって喋っていた。
彼が神聖かまってちゃんの"の子"である。

まるで少年のように小柄なの子は、前のバンドの演奏が終わると、客席からステージに上がり、独り言をつぶやいているようにパソコンに向かって話していた。今までにライブハウスで見たことのない、異様な光景だった。
mono、ちばぎん、みさこもステージに上がり、セッティングをしている。の子はギターのセッティング以上に、パソコンに気を取られてずっと夢中で会話していた。
まるでパソコンが友達のように見えた。
音を鳴らし、確認する。
さあ、間もなく神聖かまってちゃんのライブが始まる。あの曲はやってくれるのか、どんなライブになるのか、何を見せてくれるのか。
まるで10代の頃に戻ったかのように、初めての神聖かまってちゃんのライブにドキドキしていた。
の子は突然服を脱ぎ始めた。
神聖かまってちゃんのライブが遂に始まった。

「裸になって何が悪い!!!」

の子は全裸だった。


~続く~

2011年10月27日木曜日

前野健太@武蔵野公会堂

前野健太、約1年ぶりの武蔵野公会堂公演。

昨年の9月からはるばる、武蔵野公会堂に戻ってきた。今回はタテタカコ、高田蓮という強豪との共演。『TERATOTERA』という無料イベント。寺と寺ということは、高円から吉祥寺、ということなのだろうか。
ステージには大きなピアノがライトに照らされており、ライブハウスとは違い、武蔵野公会堂は相変わらず厳粛なムードを漂わせている。
まずは高田蓮。座ってアコースティックギターを軽快に鳴らす。居心地のよい音がホール全体に響き、秋の空気をしみじみと味わえる時間だった。

そして前野健太の出番。
いつものサングラス姿でステージに立つ。軽くセッティングをするとアコースティックギターを置いて、ピアノに前に座る。
『100年後』のピアノを弾き始める。マイクは一切使わず、ピアノだけの演奏。言葉はなくても歌詞が伝わる。低い音から高い音まで、長い年月が通り過ぎ、幅の広い季節を感じさせる。まさに100年後の世界だ。今のこの日本、世界の現状を考えると100年後なんて想像できない。
「100年後、君と待ち合わせ」
この言葉が美しく捉えられるか、空しく聴こえてくるか。昨年の9月とはまた違う感覚で聴こえてくるのだ。
沈黙の中、ピアノのイスから立ち、アコースティックギターを抱える。
「ちょっと、キザでしたね…」
さっそく笑いを誘い、会場が少しリラックスムードに。

「前野健太といいます。短い時間ですが、よろしくお願いします。なんか今日、タダ(無料)じゃないですか。なんでこんな緊張しなきゃいけないんですかね…」
ものすごく緊張しているらしい。それでもゆったりとマイペースにギターを鳴らし始め、いきなり「失楽園でヌイてた~」である。『18の夏』が始まる。
「今日、タダなんで…」としつこく無料であることで自らの緊張を解そうとする前野健太。客席から「ははっ!」と子どもの笑い声が聞こえ、「はは!って…」と前野健太も反応。そしておなじみのリクエストタイムを早くも始め、男性客から「友達じゃがまんできない!」と声が。「今日は男性の方は、ちょっと…」といじわるに応えて笑いを誘う。
「『友達じゃがまんできない』でよろしいですか?…千円になります」
更にいじわるを上乗せすると、またも子どもの「わかったー!」という声。「君はいいよ…」と優しく応える。
そしてまさかの『鴨川』へ。本当にいじわるです。

このイベントに設置されている募金箱に入れられたお金は直接福島へ届けられるらしく、「物販みたいなものもあるんですけど、まあ、あれは…とか言うと貧乏くさいんで。お金はもう、あるんですよ」と笑いを誘い、前野健太は終始和やかな雰囲気が続いている。

「『友達じゃがまんできない』でしたっけ?『モテキ』っていう映画があるんですが、そこで使われているみたいなんですけど。みんな夙川BOYSとか本人が出ているんですけど、俺だけ…カバー?でもナキミソさんっていう京都の若い人が一生懸命歌ってくれてるんで」
大根仁監督の映画『モテキ』では恵比寿リキッドルームで長澤まさみや森山未来がライブを観ているシーンで、京都のシンガーソングライター・ナキミソによる前野健太の『友達じゃがまんできない』のカバーが使用されている。確かに、本人が全く出ていなかった。

「ちょっとセクシーリバーブと、セクシー照明をお願いします」
前野健太が言うと、照明が一気にピンク色になる。「この会場の一番セクシーな照明を。あと、一番セクシーな拍手を…」などと注文すると、ますますピンク色に染まるステージ。『ファック ミー』を歌っている間にリバーブがかかり、「えっ?」と前野健太が反応すると会場は爆笑。「いいじゃん、タダなんだし」と演奏中に呟き、ますます笑いに包まれる。
最後はアコースティックギターの音がまるでエレキギターのような鋭さを放ち、曲の情景が浮かび上がる。
そしてそのまま『東京2011』。花の都でもない、なのに憧れの街・東京を歌う。
「今、灯りは消え 若者たちは去る」
実際、東京の街は震災後に節電のため、暗くなった。灯りは消えた。それでも若者たちは去らずに毎日電車に揺られ、友達と遊び、恋愛をして、仕事をしている。前野健太が言葉とギターで作り出す群像劇に自分自身も入れ込まれたような、そんな錯覚があった。東京に何かしらの感慨を覚える人であれば、この歌に思い入れさえ生んでしまうだろう。

「じゃあちょっと寒くなってきたんで、ホクホクする曲を。銭湯っぽいリバーブを。照明はセクシーでお願いします」
こうして『タワー浴場』へ。「タワー、タワー、タワー」の部分でコーラスをお客さんに促し、かなりの一体感が。
「最後は高円寺というか吉祥寺というか、どこでも通じる曲です」
 『あたらしい朝』へ。後半はお客さんの手拍子が鳴り、楽しい雰囲気で終了。と思いきや、アコースティックギターを置いてピアノに座り、『東京の空』をピアノを弾きながら歌う。ピアノでの演奏は初めて生で観た。最後にふさわしい余韻を残し、ステージ奥の白い壁にはピアノを奏でる前野健太の姿がシルエットで映し出される。
照明が落とされ、真っ暗闇の中で終了。

その後はタテタカコ。ピアノを弾きながら会場の注意事項を伝え、トイレの場所を伝えるのにも美声を轟かせ、会場はまた一段とリラックスされる。
1曲目は映画『誰も知らない』で知られる『宝石』。優しい声なのに強烈に突きつけられるものがあるボーカルが印象的。身近なことを歌っているようで、スケールが大きい曲の世界だ。

終演後、撮影として参加させて頂いたので打ち上げに参加。前野健太スタッフの上倉君と久々に会い、色々な話題に花を咲かせる。
この日のイベントは、それぞれのシンガーソングライターと一対一になれていた。座席指定と、天井が高い厳粛な雰囲気の会場からか、妙な緊張感が漂っていた。だけどそれぞれの出演者がMCで緊張を解し、曲だけでなくトークの面白さも伝わるイベントでした。

2011年10月21日金曜日

笹口騒音ハーモニカ@渋谷駅近く路上 雨

「笹口騒音ハーモニカさんの『おんがくのじかん』のPVを上映したいと思いまして」

『ネナシネマ』という路上上映イベントを企画しているチームの上村さんから連絡があり、『おんがくのじかん』のPVを渋谷駅近くの路上の壁に映し、流してもらえることになった。偶然にも、岩淵弘樹監督による笹口氏の『うるう年に生まれて』も上映ということで、「じゃあ」と笹口氏の弾き語りも決定。
そんなわけで雨の降りしきる秋の一日。22時過ぎに渋谷駅前のモヤイ像付近で人だからができ、ゲリラ上映が行なわれました。

ところが最初壁に映し出された映像はフォーカスが合っておらず、試行錯誤した様子で閉まったシャッターに映し出されることになった。どうやらフォーカスは機材が原因らしい。予定より少し遅れて上映が始まったが、程なくして背中に「警視庁」と書かれた方々が歩み寄り、上映は中止となった。笹口氏も中止と同時期に現れ、『おんがくのじかん』のPVは冒頭のシーンでストップ。
上村さんがお客さんに謝罪し、「上映されなかったので登場してきても関連性があるのかどうか」という存在の塊となってしまったギターを背負った笹口騒音ハーモニカは「どうしよう…やりますか」とギターを降ろし、先ほどまで上映していたシャッターの前に立ち、路上で弾き語ることになった。

夏あたりから笹口騒音ハーモニカのライブを撮影してきたけど、路上ライブは初めて。本人にとっても珍しいらしい。
上映は残念だったけど、この貴重な機会に遭遇できてよかった。

雨の音がチッチッと鳥の鳴き声のように聞こえ、車が雨に濡れた路上の水分を引きずる音が遠くから何度も聞こえる。その中で、都会の片隅で小さく笹口騒音ハーモニカの音が鳴っていた。僕は小さなビデオカメラで撮影を始めた。

「笹口騒音ハーモニカっていいまーす。上映がちょっとストップしちゃったので、せっかくなので流れるはずだった音楽をやりまーす」
上映が中断した『おんがくのじかん』を演奏。
ライブではお面をつけたり、お客さんに踊りを促したりとパフォーマンスを施す曲であるが、このときは最初から最後まで特に何もせずに歌い切っていた。

「このPVはそちらでカメラ撮ってくれている竹内くんと一緒に作ったものでして、YOUTUBEとかに上がってるんでよかったら見てください。すごい楽しそうに歌ったり踊ったりしてるんで。次はこれも流してもらう予定だった、岩淵さんという人と一緒に作ったもので、岩淵さんの地元が被災地でして、そこで自転車乗りながらカメラで撮ったものでして」

そして『うるう年に生まれて』。淡々と歌い続けているように思えるけど、元々曲の歌詞のひとつひとつが力強く、何を訴えているわけでもないのに、メッセージとして耳に飛び込んでくる。街の喧騒とセットで聴くと、より一層曲の孤独感が際立ってくる。死んだ人、生まれた人、本当、嘘。すべてが入り乱れ、時間だけが瓦礫に埋もれていく。だけど今、笹口が歌っている時間は埋もれることがない。これは音楽の特権なんだろう。

「渋谷…何やろうかな。朝までやりましょうか?『東京駅』って曲やりまーす」
渋谷駅で東京駅。やっぱり『東京駅』は東京駅であるべきだ。東京の中心地の象徴でもあり、すべてを繋げている中間地点である。歌詞に登場する男が言うように、東京中の電車を一瞬で止めることができそうな気がする。
「ああっ、こんなこと渋谷で歌ったら…こわい!」
途中、笑いを誘う笹口。東京駅の世界観はそのまま『アレルギー2011ver.』に繋がる。
「僕らはみんなアレルギー 放射能アレルギー マスクでもしないと 外にも出られない 手袋をしないと あなたに触れない」
どこか遠くで鳴っている店のBGM、宣伝カーから流れる流行りの音楽、人々の笑い声と、足音。
そして『もはや平和ではない』の演奏へ。初めて生で聴いた。 今年に入ってからいつの間にかこんな時代になってしまい、演奏を危ぶんでいたという。だけどあえてこれから歌っていきたい、などと言っていた。
「『笑っていいとも』やってる限り 平和だと思ってた」
何が起ころうともいつも通り生活している人々に、人間とはいかに強い生き物なのかと感嘆すると同時に、どこか不気味にも感じる。そこで生じる違和感に『笑っていいとも』というタイトルを持ってくるところが、笹口騒音ハーモニカ特有のセンスだと思う。

「あと1曲やって、アンコールで終わろうと思いますー。でもやっぱり2曲やろうかな」
最後は『New Music,New Life』『SAYONARA BABY BLUE』をたて続けに披露。「今夜雨は毒を含み 太陽は凍りつく」と、雨の中で聴けたのは幸運だ。太陽は地球の裏っ側で、夜の東京を知らない。そこではメガネをかけた、どこにでもいそうな風貌の男が、どこにでも見当たらない言葉で、どこにでも起きているようなことを歌っているのだ。
周囲の店も光を消していく時間帯、23時過ぎは暗い。まさに東京中の電気を消されたような舞台で、光の当たらないシンガーが波打ち際の女の子を歌って終了。

「汚れちゃった私でも"死にたい"なんて思わない おちればおちるほどドキドキが止まんないの 雑巾と呼ばれたって 生きるベイビーブルー 命の限りおちてやる 私ベイビーブルー 100万ドルのベイビーブルー」

僕が地元の兵庫県にいた頃、都会はやっぱり憧れだった。今でもそうだ。見上げるほど高いところもあれば、見過ごしたいほどに小さくて汚れているところもある。
立ち止まる人がいたかいなかったかは分からないけど、笹口騒音ハーモニカを知らない人、ライブハウスに行かない人、音楽を探すこともない人に聴いてほしい。
アンコールを促されているわけでもなく、「じゃあアンコールやりまーす」といつもの調子で太平洋不知火楽団の『たとえば僕が売れたら』の1番のみ披露。
「はい、雨の中ありがとうございましたー」
これにて笹口騒音ハーモニカのゲリラライブは終了。雨、23時、渋谷。ロケーションと状況がライブを盛り上げ、人通りの少なくなった路上だからこそ生まれるものがあったと思います。

笹口騒音ハーモニカ【もはや平和ではない】2011/10/21 渋谷駅前 雨

2011年10月18日火曜日

うみのて@高円寺無力無善寺

高円寺で毎年行なわれているイベント『日本ロックフェスティバル』の3日目。
うみのては少し早い時間での出演となりました。

こんなにうみのての撮影に行くのは、間違いなくヤバイと思っているからです。日本ロックフェスティバルはその大規模な名前とは裏腹に、野外ロックフェスでもなく、何千人、何万人と入るイベントではない。無力無善寺がそれほど入るライブハウスならそうかも知れないけど、20人入っても十分ぎゅうぎゅうになるほどのスペース。
だけどそこで鳴る音楽は特別なもの。音楽を肌で感じれるとはまさにこのことかも知れない。

「はいどーもー!うみのてってバンドでーす。日本、ロック、フェスティバーール!」
笹口が盛り上げるために叫ぶ。「高野くんも、みんなで『日本ロックフェスティバル』って言おうよ」とギター高野に促すが、「やだ」と即答で返される。それでも「日本、ロック、フェスティバーール!!」と二人で叫ぶ。そんな脱力感丸出しの調子でライブはスタート。
「最初はこの人の、高野君の曲でーす」と言い、1曲目は『タカノのように』。高野のギターの近くでピカピカと光るフラッシュウニ(動きが激しくなるにつれて発光するおもちゃ)が落下し、薄暗い無善寺の床を照らしていた。終盤の笹口のギターが泣きじゃくるような音をしていた。

笹口がギターを降ろし、キクイのドラムが鳴ると『東京駅』がスタート。
やっぱり何度聴いても飽きることはない、お約束の興奮を提供してくれる。こういう曲に巡りあうことはめったにない。だからこそ、大事に思いたい。社会派、と言ってしまえばなんだか湿っぽくなってしまうけど、『東京駅』で描かれているのは間違いなく現代であり、闇そのものだ。
それでも曲が一旦ブレイクするところでは、笹口が遊ぶ。今回は高野が「高野P介」としてソロで演奏している曲の一節を披露。
「高円寺に住む女の子は昔いじめられていたから僕にも優しい 高円寺に住む女の子は昔モテなかったから僕にも優しい」
突然のカバーに、知ってる人は笑い、知らない人は笹口がアドリブで歌を作ったのかと考えてしまいそう。 高野が歌声をかき消すように乾いたギターの音をジャカジャカ鳴らし、フラッシュウニは光りまくっている。そしてキクイのドラムソロ。笹口がドラムスティックを手に持ってシンバルを叩き、応援する。そして『東京駅』に戻る展開。これはヤバイ。曲自体が元々かっこいい上に、見せ場が盛りだくさんなのです。

そのままドラムが続き、鍵盤ハーモニカが切ないメロディを奏でる中、『RAINBOW TOKYO』へ。無善寺は照明の演出がないけど、視覚の変化が少ないぶん、聴覚に集中できるのかも知れない。曲の世界に入りこみ、照明の効果はなくても歌詞の通りに「青から赤え」と移り変わる色は見えた気がする。

「日本ロックフェス、盛り上がってますか?イェーー!盛り上がってない!」
その後、ずっとキィーンとハウリング。「無善寺の亡霊がハウってるんだよね。無善寺の亡霊がハウってんだよね」と低いトーンで語り出す笹口。『東京駅』の途中の語りのようなトーンであるからして、高野がそれに合わせてギターを不気味な音で鳴らす。「もうやっていいかな?」と高野がつっこみ、『ぐるぐる回る』へ。
ちょうど笹口近くの壁に仏のイラストや「即身仏」と書かれた無善寺独特の物が貼られており、輪廻転生と森羅万象を歌い、ちょっぴり仏教をも感じさせる歌詞にピッタリ合っていた。季節、人生、頭の中。ぐるぐる回るものを流れるように歌っていく中、結局はここに行き着く。
「地獄は色々たくさんあるけど天国はひとつ あなたの腕の中だけ」
実際のところはラブソングなのね。と、思わず納得してしまう最後の一節が見事なのです。

「僕は一昨日も出て、高野くんも出たんですけど。日本ロックフェスは出たかったんで、出れて嬉しいです。日本ロックフェーース!!いぇーー!!」
ほどほどの「いぇー」という反応で、最後は2曲連続披露。「うみのてで最初に作った曲と、2番目に作った曲をします」と言い、『ダイイングメッセージ』『正常異常』へ。笹口の歪んだギターの音が印象深い『ダイイングメッセージ』は、轟音の中でも鉄琴の音がかわいく鳴っていくのがいい。早瀬のベースから始まる『正常異常』。ベースがずっと安定しているからこそ、笹口と高野のギターが暴れることができる。終盤は息つぎをするヒマもないほどの迫力で、二人のギターの音色が混じり合って狂気さえ感じさせる音が迫ってくる。そうなると正常よりも異常が勝るのだ。
最後は高野がフラッシュウニをかわいい飛距離でさりげなく投げ、終了。
短い時間ながらも、攻め攻めのライブでした。

最近、ライブハウスは撮影以外は極力離れたいという消極的な気持ちになっていたけど、日本ロックフェスのイベントを運営している内田るんさんと門田くんに薦められ、川染喜弘のライブを観た。音を再生して、あとは勢いに任せて思いついた言葉を叫ぶというものだった。若干言葉に困っている様子が可笑しく、多分そういうときは「うぉおおー!」と身体の仰け反って叫んでなんとか間を埋めているのが、いちいちツボだった。無善寺は笑いに包まれていた。

外で、翌日このイベントに出演するDJビル風さんにお会いした。 神聖かまってちゃんの配信に偶然出くわし、登場した方。の子さんとのフリーラップ対決もゆるゆると面白かったし、配信と自身のブログからその人柄が伝わり、気になっていた。お会いできてよかったです。


うみのて【ぐるぐる回る】2011/10/18 高円寺無力無善寺

【ダイイングメッセージ】【正常異常】

2011年10月12日水曜日

うみのて@新宿Motion

うみのて、新宿Motionにてライブ。

『星のカービィ』の音楽を登場SEにメンバーがステージに登場。一人遅れて笹口がなぜか『ドラえもん』のテーマソングをBGMに入場してくる。「あ、消してください」とあまり楽しくない様子でPAにお願いする笹口。ちょうど着ているものが、笹口お馴染みのFadeTシャツの青。ドラえもんカラーだ。最近物販で様々な種類の色を販売し始めたのか、毎回Fadeしている。そしてこの日、他のメンバーもみんなFadeTでキメているが、ギターの高野だけが着ていなくてささやかな反抗を。
「着なきゃダメですか?」
「着なさい」
笹口に命令され、渋々と長袖シャツの上からFadeTを着る高野。

「あこんばんわー!うみのてってバンドでーす」
笹口の挨拶で始まり、一曲目は『FUNADE』。前回Motionでライブしたときは最後の曲だった。途中、ギターの弦が切れたらしく、『RAINBOW TOKYO』のドラムが鳴る中、「ゲスマスター貸してもらえます?」と高野のもう一本のギターを拝借する。ゲスマスターという名のギターらしい。対バン相手がギターをステージまで持ってきてくれて、「トリプルファイヤーってバンドやってる、今日はLUCKY SOUND担当の山本くんです」と紹介。ステッカーが何も貼られていない赤いボディのギターで演奏する笹口は新鮮。

『RAINBOW TOKYO』は後半の盛り上がりが美しい。東京が爆心地であると歌っており、何もかもが無くなった後に現れる虹の描写がある。「グラウンド・ゼロはトーキョー 地獄絵図 地獄絵図」とまるで地球規模の大災害を歌っているようで、「いつまでも不安定 アンテーなどいらんねん」と心の中の小さな災害をも歌っている。いつだって小さな爆撃は起きており、それが日常の中でチクチク心を痛めているのだ。
「YOYOようこそ!ここは東京駅!俺の家は東京駅!」
間髪入れず『東京駅』が始まる。ギターを置いた笹口がマイクに専念し、叫ぶ。笹口のボーカルと高野のギターが暴れる中、早瀬のベースとマナの鉄琴が一定のペースで黙々と音を鳴らしている。そのコントラストがいつも見事だ。「お前らなんか不自由だ」と高野が低い声でコーラスをしていた気がするが、気のせいだろうか。

ブレイクするところで笹口が「高野くん、最近どうですか?」と世間話。

「モテたいですね。初恋の人がライブに来てくれるくらいモテたいです」
「え何だって?」
「初恋の人がライブに来てくれるくらいモテたいです」
「あそう。初恋の人かわいいの?」
「今ライブハウスに来ている人のほうがかわいいです」
「……」
「ネタないんじゃないですか?」
「え?」
「ネタないんじゃないですか?」
「え?」
「ネタがないんじゃないですか?」
「ええ?」

何喋るか恐らく本当に考えていなかった笹口は頭の中が「……」の様子。その目も、点になっているようで、さっきまで叫んでいた人が機能停止になっていた様子がおかしい。
笹口が「高野くーん!」と逃げるように声をかけて高野のギターを掻きむしる音から演奏は再開し、そこからキクイのドラムソロに発展する流れがかっこよすぎる。「キクイさんはこの後渋谷でライブでーす。ライブできなくなるくらい頑張ってください!」と、この後HOMMヨのドラムとしてダブルブッキングのキクイに対し、笹口による紹介とムチャな煽り。最後は笹口が両手を広げ、赤ちゃんのように手を小刻みに揺らしている動作をし、それをキクイが笑顔で見つめながら終了。

「僕このライブ終わったら大阪行かなきゃいけなくて。だからこのTシャツ(FadeT)、よかったら買っていってください。大阪への荷物が減るんで…」
笹口の個人的な要求の後、「次は高野くんへの想いを綴った曲です」と紹介して、新曲『タカノのように』を披露。なんともふざけたタイトルであるにも関わらず、高野という人が誰かなのか分からない人にもなんとなーく通用する楽曲だった。「タカノのように!」と何度も絶叫するが、一体何をすることが高野のようになるのかが分からない。

「今日はギターの弦が一曲目から切れて、調子悪いっす!言い訳なう!」
笹口が威勢よくこの日のライブを振り返ると、高野が「お前…アマチュアでも何千円か貰ってるのに、言い訳かお前は」と注意。弁解するように「いつもは一万円以上のライブやってるんですけど、いつもは二千円くらいで超お得なライブやってるんです」と答えると、客席から「今日も得したいぞー」と声が。
「今からさせてやるよばかやろー!あ、ばかって言っちゃった。得させてやるよおらー!」
そんなこんなで告知もしつつ、「あ、なんか失言しちゃったなあ…ごめん」と素に戻った笹口。特に失言しているような気はしないけど、後悔していた。なぜか「かわいいー」という声が客席から聞こえたが、気のせいだろうか。「あとで謝ればいいじゃん」と軽く慰める高野。

『スーサイダルシーサイド』。幽霊が出てくるような、夜の闇に人の形が吸い込まれていきそうな音が高野のギターから鳴る。海で心中する男女の姿を美しく言葉で紡ぎ出していく。青の照明がとても似合う。

最後は『正常異常』。笹口がギターを振り落とし、早瀬がそのままベースを始めるいつもの感じ。演奏はスタートするが、やり直し。「もう一回やるか」と高野が言い、2度目は成功。笹口のギターのストラップが途中外れるが、直しながら歌い、ギターを弾き始めるところでは直っていたのが良いタイミング。激しい演奏の中、鉄琴だけが薄っすらとかわいく鳴っているのがおもしろい。
笹口騒音ハーモニカのソロの音源からここまで大迫力なアレンジになるとは、と毎回感動する。 ギターをショットガンのように構え、ラストをキメる笹口。ギターの弦が切れたり、自身では失言したと言っていたけど、それほど悪いライブではないように思えた。

ライブ後、「今日はやっちゃったなー」と笹口氏。これからそのまま大阪まで太平洋不知火楽団と笹口騒音ハーモニカとして向かう。3つの舞台でそれぞれ違う音楽を鳴らしていても、本体は笹口一つ。
高野君のギターの高音は、このバンドの大きな個性だと思う。そんなうみのてはもっと注目されるべき。そしていつの間にかFadeTをライブ中に脱いでいた高野君でした。

モロオカくんが撮った写真がすごくいい。全員FadeT+一人。


うみのて【RAINBOW TOKYO】2011/10/12 新宿Motion

【タカノのように】

2011年10月2日日曜日

神聖かまってちゃん@六本木ニコファーレ

六本木のニコファーレにて、神聖かまってちゃんのライブ。

360度、LEDモニターで敷き詰められたの壁がステージと客席を取り囲んでいる。ニコニコ生放送のコメントがあらゆるところから流れることで知られる ニコファーレ。配信ありきのライブを毎回のようにしている神聖かまってちゃんにとって、まさにうってつけの場所です。彼らのためにあるような施設であるこ とは、この日のライブで実証されたようなものです。

ネットチケット、リアルチケットの2つがあった。ニコニコ生放送で視聴するためのチケットと、実際にライブハウスに足を運んで観るチケット。常にライブ を配信することを心がけているため、『ロックンロールは鳴り止まないっ』の歌詞の通り「遠くで/近くで/すぐそばで」を体験することができる神聖かまって ちゃんのライブ。ここではその真髄を見ることになる。リアルチケットは当然、即日ソールドアウト。一気にプレミア化していました

結果、インターネット上では7万人超の視聴者数があったという。さいたまスーパーアリーナの来場者数の2万5千人を軽く超えてしまいました。

撮影のため楽屋に着くと、何やら盛り上がっている。ちょうどNHKの音楽番組『MJ』に神聖かまってちゃんが出演している様が放送されていたようで、メンバーとスタッフで観ていたらしい。


いつものようにライブ前は楽屋で配信。の子さんは赤いモコモコとした服を着用し、最近では毎度おなじみの三つ編み姿。高級猫のような雰囲気だ。ゴキゲン な様子で配信中のノートパソコンに向かい、元気にすらすらとコメントを読みながら喋っていた。どこかに行こうと席を立ち、ちばぎんに配信を託す。そのとき 廊下で目が合い、「竹内さんじゃないですか!配信出てくださいよ!」と連れて行かれ、の子さんに紹介されて出ることになった。配信は貴重な時間に自分が出 てしまっていいのか、という気持ちで何も喋れないし出来ない。知り合って2年半になるけど、「僕らのことをずっと支えてくれた」などとの子さんが紹介し てくれたのは嬉しかった。彼は感謝の気持ちを忘れない人だ。だから成功するのだろう。風邪を引いていたのでマスクをしていたためか、「楽屋泥棒竹内」とい うコメントも。たしかに、マスクをしてもしていなくても不審者なので間違ってはいないのです。

劒マネージャーに案内してもらったステージ下手の袖でビデオカメラを持ち、開演を待つ。すぐ傍のステージ奥の壁には当然LEDが敷き詰められ、ネット上の視聴者によるコメントが大きな文字で右から左へ流れていく。遠くの壁にも、向こうにも。
時折、流れていくコメントに笑い声も。開演時間が迫り、「楽屋配信終わるぞ」「くるぞおおおお」というネット視聴者にしか把握できない状況がコメントで 流れ、リアル会場もそれを見て「うおおおお」とヒートアップ。客席は多くの人が一気に前に詰めかけ、ライブ前から熱気を充満させていた。「つめすぎw」と いうコメントも。
といいつつも、なかなか開演せず。「のこさっさとこいよー」という会場のお客さんの気持ちを代弁するようなコメントが。ステージ前の中継カメラが最前列のお客さんを映し、ネット上、LEDに大きく映し出されていた。恥ずかしがってうつむき始めるお客さんの姿に笑いが。

やがて登場SE『夢のENDはいつも目覚まし!』が流れ、その名の通り目覚ましのように作用し、起き上がるかのごとく大歓声が響く。四方、壁中にも「き たああああ」「おおおおお」などと興奮の文字が勢いよくドバッと流れるも、SEがなぜか停止。「ええええ」と溜め息まじりの笑い声が響き、またもSEが 再生され、大歓声が。
たくさんの手拍子、コメントが流れる中、神聖かまってちゃんのメンバーが続々と登場。ツノのようなカチューシャをつけたみさこ、髪の毛がパーマ全開のちばぎん、『MOTHER3』のTシャツを着たmono、そして女の子のようなの子がステージに現れる。

の子は第一声から「お前ら、コメント読め!!」。

「の子かわいいー!」という客席から女の子の歓声に対し、「うるせえ!!」と返答。コメントでも客席でも興奮が言葉で埋め尽くされている。ネットとリア ルが近い空間とは、まさにこれ。「888888(拍手)」「のこのこのこのこー」「ちばぎいいいん」などと熱狂的に叫んでいるようなコメントもあれば、 「MOTHER3」とだけ書かれた冷静なコメントもある。

「あれ?さっきの(楽屋での)配信と違って、『鳥(みたくあるいてこっ)はオワコン』とかねーんだけど。NGワードか何かかな?運営さん、これ流して全然いいですからね!」

の子が言うと、『鳥はオワコン』という新曲をdisるコメントがさっそく。「そんな感じで神聖かまってちゃんです、よろしくお願いしまーす!」とどんな 感じか分からないけどちばぎんが開始の挨拶をし、みさこのドラムとちばぎんのベースでいつものデーーーーーーン。ここにもう一つギターなりキーボードの音 が乗ることは、まず無い。
「いくぞ!帰ろう!」との子が叫びつつも、monoとみさこの紹介でサポートバイオリンの柴由佳子さんがステージに登場。「びびさーーーん」というコメントが流れ、客席からも歓声が。

「これ、1500円払って観ている人はどんな感じなの?」との子。「それは自分で1500円払って観るしかないんじゃないの?」とちばぎんが答える。コ メントを指差したの子は、「だから成井さんの話はするなって!ちょっとごめんなさい運営さん、『成井』って言葉だけはNGワードにしてください!」とお 願いをする。「『の子クリスマス仕様だね』じゃねえよ、これは40万で、360万円が320万円になるように買ったんだよ!ツアーが始まるから!」と、赤 いモコモコとした衣装について語る。ライブ開始にも関わらず、普通に配信しているような状況に「MCが長いんだよ!」と自分で自分をつっこむ。
ちばぎんの曲紹介で、『白いたまご』へ。「早くやんないと、6曲くらいで終わっちゃうんで」との子。「これ(LEDに流れるコメント)すごいね。テンション上がるわ。お前ら、ちゃんとコメント読めよ。『オイ!オイ!』とかじゃなくて」と観客に難しい忠告を。

みさこのドラムスティックによるカウントにより、ニコファーレでのライブはスタート。
演奏中のメンバーが壁のLEDに大写しになり、その上にコメントが流れている。この、神聖かまってちゃんに取り囲まれた空間。ステージに顔を向けている 観客にとって横の壁は死角にもなるけど、見えない部分からの臨場感もじわじわと伝わってくるような、いまだかつて味わったことのない刺激的な空間であるこ とは間違いない。
宇宙を漂流しているかのような、星くずが横に流れていく映像が流れている。この日、曲の世界観に近づいているような映像が曲ごとに流れるもんだから、壁だけ観ているだけでも十分面白い。
物悲しくて切ないバイオリンのメロディが曲を全編盛り上げて、『白いたまご』が終了。いやもう、この1曲だけで相当なノックアウト感。今日の神聖かまってちゃんは、何か違う。そんな予感にゾクゾクした。

曲が終わると「888888」という拍手のコメントの嵐。「の子かわいいよー」「バイオリンを入れたのは正解」などといった感想が即座に入れ込まれる。「熱いー!」と客席から声が。「俺も熱い!」と赤いモコモコしたセーターを着込んだの子。当たり前だろう。
「俺はだいたい3曲くらいで疲れるから」との子が言おうとすると、「今日もノースリーブ?」と男性客から謎の歓声が。の子、「なんだお前?ノースリーブじゃねえ!」と正しい反応。

ちばぎんのベースが始まり、の子が語り始める。

「熱いとか関係ねえ。もっと熱くなれ。俺はもっと熱い。お前らは軽装で来てるんだろ。俺はもっと熱くなる。俺の熱さをてめえらに届ける。お前らは我慢できるだろ?けれども我慢できない。この後死ぬ。だけども、今ここで立ってるのがニコファーレ。いくぜ、いくぜ!」

思いついた言葉を並べていくが、この語りがキマりまくって快感。そして『レッツゴー武道館っ!☆』へ。「走るっ!」との子が叫ぶと、ちばぎんのコーラスに合わせるかのように「やーねー!」という声が客席から聞こえ、コメントでも流れていく。

「熱くねえな俺はこんなんじゃ!」との子が会場をますます煽る。演奏後は「888888」というコメントに包まれている。「『はやくやれ』うん、早くやります。みんなの心の声がここに反映されていると思うんで」との子が言い、『Os-宇宙人』へ。
これまた銀河の中を走っているような映像。宇宙人らしく、宇宙。「僕は中卒だからー」と歌詞を忘れた部分を即興の歌詞で補ったり、「あなたのことが好き」と言いながら中指を立てて煽ったり。
演奏後、「カメラ!」とカメラ目線でキメ顔をするの子。横のLEDに大写しされる顔。女性客の歓声の中、monoがゆっくりとコメントを読んでいく。「『イケメン』『イケてない』『の子かっこいいぞー』『顔面偏差値高い』だって。『顔面凶器』。俺かい」と。

「とりあえず僕とmonoくんは(渋谷)WWWみたいにならないようにしなきゃならない」との子が宣言しつつ、monoがパーカッションを「ポン!」と 軽快に鳴らしている。チューニングしているの子に「はやくー」と客席から。「こいつらが遅いんだよ!」といきなりメンバーのせいにし、ちばぎんが「すいま せんでしたー」とわざとらしく謝る。
monoの叩くリズムに合わせながら、の子が「あまーあまー、ぽいっぽいっぽいっあまー、あまー、ぽいっぽいっぽいっ」という謎の掛け声を発し始める。楽しそうにノリながら歌うも、「『前のほうしかノッてない』?うるせえ、死ね!」とコメントを指摘する。
こうして『自分らしく』へ。後半の盛り上がり、monoのキーボードのメロディに柴さんのバイオリンが加わって増大。星がキラキラしたような映像に、メンバーの顔が大写しに。みんないい顔をしている。

「まだまだ寒いな」との子が客席を挑発。「『カメラアングルがいい』?違う、俺の顔がよかったんだ」と自信満々のの子、MCはやっぱりコメント読みに徹 してしまう。みさこは鼻水が出ていることを指摘されている。これは普段のライブではドラムは客席からは遠いため、指摘されないこと。どうでもいいことだけ ど、鼻水の指摘は中継カメラとニコニコ生放送のコメントが連動されることにおける現象のひとつです。
ちばぎんが「熱い!」と言うが、の子は「いや、寒いな」とまだまだ挑発。「インターネット回線の向こうのみんなはクーラーきかせて寒いだろうから、お前 らがもっと熱くしてやれこのやろー!」と。「『寒い』?クーラー止めろよ!『暖房きかせている』?それはすみません」と、すらすらと会話のようにコメント を読んでいくの子。ただでさえグダることの多いライブであるため、曲がなかなか進まない不安もあるけど、この空間だったら仕方がない。それでもスムーズに 曲を演奏していく姿には、少し感動を覚える。他のバンドだったら当たり前のことだけど。
「汚い!今、ペッとしたでしょ!」と、タオルに唾を吐いたの子をちばぎんが指摘。客席の女の子から「タオルほしいー!」というなんだか物凄い声が。「あ げるわけねーだろ!って誰が言ってんのかわかんなかった。そこの男が言ったんだと思った。そこの男にあげますわ。『きもっ』?」と返答。

「普段の配信よりコメントが少ないじゃねーか!」との子。どうやらニコファーレに流れるコメントは、ずっと延々と右から左へ流れていくものばかりではな く、途中でフェードアウトして消えるコメントもたくさんあるらしい。「あれか、『成井さん』ワードが引っかかってるのか?」と、の子によるほとんど成井さ んコメント大量説。
2万7千人が見ていることについてのコメントに、その数に驚く客席。「2万7千人くらいで驚くな!さいたまスーパーアリーナに行けないぞ2万7千人くら いじゃ!俺はさいたまスーパーアリーナにいつかお前らを連れていってやる!」との子が宣言。夏のさいたまスーパーアリーナでの神聖かまってちゃん出演時の 『アニサマ』の来場者数は2万5千人。ちばぎんが「行けます」とさりげなく返答していた。

続いて『天使じゃ地上じゃちっそく死』。緑色のバグったような映像が流れる中、の子が歌うのに合わせて「しにたいなー」という文字が大量に流れては フェードアウトしていく。言葉だけでなく、文字からも悲鳴が響いているような景色。負のエネルギーが充満しつつも、の子は途中マイクスタンドを勢いよく蹴 り倒しながらも延々と「しにたいなー」と連呼。

「つるぎさーん」という歓声が止まない中、マイクをセッティングしている劒マネージャーのすぐ傍でなぜかの子が突然自分の顔面を殴る。その姿に戸惑う劒マネージャー。ATARI TEENAGE RIOTのTシャツを着ている。まだまだ止まない劒コール・劒コメントに、みさこがのほほんと「何人か泥ガールがいます」なんて発言。

の子、疲れた様子で「死にたい」と呟くと、客席の女の子から「生きろ!!」と喝を入れられるも、「うっせーばか死ね」と即答。ちばぎんが笑う。「生き ろ」というコメントがちらほらと流れていく。「『の子、こんなんで楽しいか?』いや、死にたいんだよじゃあ、もうちょっとリア充な曲いきます」と言う と、客席から歓声。ところがの子からは「お前らほんと死ねよ」と予想外の反応が。
「じゃあ『ベビレニ』」と言って会場が盛り上がるが、「ちょっと待ってチューニングが」ともはやお決まりのパターン。そして、一度曲紹介をしたのにも関わらず、結局演奏するのは『夕方のピアノ』。客席からは大歓声だが、「ええっ!」と戸惑うメンバー。
客に向かって「ほんと死ね、くそ」とまだまだ挑発を繰り返す。「最近荒ぶっているんだよ、というか不安なんだよ。不安定な時期のほうがいいライブってことで。これでダメだったらファンやめろ」との子が呟きながら、monoのピアノのメロディが始まり、演奏へ。
途端に壁のLEDには夕暮れ空が映り、大歓声が響き渡る。四方、あたり一面が夕暮れに。そこに「しねー」というコメントが大量に流れ、の子がかつて作っ たPVが物凄い臨場感で再現されているかのようだ。夕暮れ空をバックに演奏するメンバーの姿には、込みあげるものがあった。

『夕方のピアノ』の「死ね」は攻撃的というよりは、切ない意味で聞こえてくる。の子の宅録音源で聞き逃してはならないのは、終盤、の子の叫び声がリコー ダーの音に変わる部分だ。彼の楽曲には『笛吹き花ちゃん』『花ちゃんはリスかっ!』でも歌詞の中にリコーダーが登場し、かつて誰もがランドセルを背負って いた記憶を蘇らせる瞬間がある。自分は花ちゃんのような存在だったか。佐藤のような存在だったか。意味はなくとも、脈絡はなくとも、誰かの記憶を辿らせる 歌詞であることは間違いない。

「死ね!」の部分では感情が高ぶったのか、「お前を殺したい!殺したい!殺したい!殺したい!」と何度も繰り返していた。「僕はお前のことが夢に出てく るんだ。このニコファーレとかニコニコしてんな、死ね!」と叫ぶと、客席から歓声が響き、大きな盛り上がりへ突入。ちばぎんも激しいアクションをし、みさ こがドラムスティックを大きく振りかぶってシンバルを鳴らし、monoだけが黙々と姿勢と表情を変えず、背景の夕暮れ空に(MOTHER3の橙色のシャツ が)染まりながらキーボードを弾いている。
アウトロではの子が「死ねーー!」と叫ぶと後ろに後退してギターを掻き鳴らし、またマイクに近づいて「死ねーー!」と叫んでは後退し、を繰り返していた。

「の子かっこいいーー!」という女性客の声に、「うるせえ!死ね!」とさきほどからまったく同じ調子で返す。「の子謝れ」というコメントに対し、「あや まらないっぽいあやまらないっぽいなんまいだー」という謎の即興ソングを披露。 「『ベビレニ』やって。あそうだ、忘れてた」との子。ちばぎんが「やり ますか?」と尋ねるが、「やんない」と返事。

「ちょっと初めてライブをやる曲を、ちょっとやって、ザビってるような曲を、ちょっと髪が生えていないような感じで、俺ら練習不足だから」との子が曲紹 介をしているが、ちばぎんが「ごめん、ザビってる曲って何?」と戸惑う。「ごめん、チューニングを」との子が呟くと、「チューニングしている最中に忘れ るだろうから、先に言って!」とちばぎんが焦る。
で、やっぱりチューニングが自分でできないの子は「なんでギタリストなのにチューニングができねーんだよ!」とちばぎんに怒る。「なんで俺が!?」と戸惑う。焦る。戸惑うの繰り返し。

劒マネージャーにチューニングしてもらい、バイオリンの柴さんがスタンバイしたところで、「じゃあ『コンクリートの向こう側へ』」との子が曲紹介。ライ ブでは初披露となる。「照明、ダウン!」との子がキザに指示するとライブハウス内が薄暗くなり、カッ、カッ、カッ、カッとの子がリバーブのかかったギター のカッティングで歌い始める。が、妙な不協和音が轟くため、演奏中断。劒マネージャーに対し、「チューニングずれてる」との子。いいムードだったので、 「えーーーっ!?」と客席が悲鳴を上げる。
「ちょっと待てよ!今、かっこよくやったのに!あんたスパイか!?」と劒マネージャーに不満をぶつける。「自分でやれよ」「ひとのせいにするな」という、ごもっともなコメントが流れていく。
 

チューニングをし直し、「照明、ダウン!」とまたもやの子がキザに指示し、薄暗くなったライブハウスで「コンクリートの、向こう側へ~」と歌い始める。「おい」と合図を出し、の子以外のメンバーが演奏に入る。
キラキラとした光が下から上へ浮かんでいく映像がLEDに映し出され、幻想的な雰囲気に。どこからともなく聴こえてくる天使のような声のコーラスとバイ オリンも手伝い、の子が作ったデモ音源とはまた違う味わいを放っていた。コメントでは「ノイズは作曲者の意図です」と、5月にNHKのドキュメンタリー で放送された際のこの曲に関する注意書きが再現されていた。

monoがコメントを読み、「『眠たくなってきた』じゃねーよほんとに」と呟くと、の子が「じゃあ起こさせよっか」とかっこよく発言。みさことちばぎ んが「おっ」と反応すると、「おっ、じゃねえ」との子が照れ笑いする。「mono君、風邪ひいてるの?ぶん殴ってやろうか?」と話題をそらすも、 「おっ、て言うけど、僕はちゃんと天の上から空気を読みますから」と。
ネット来場者数が4万人突破したことがコメントで知らされる。「もっと上を!」とメンバーが言う。普通の会場がソールドアウトしたワンマンライブではまずありえない、観ている人がますます増えていくドラマチックな展開を楽しんでしまう。

「4万人の割にはコメントが少ない」とmono。「来場者数とか気にしてちゃダメですよ。じゃあ『ねこラジ』って曲で!」との子。イスを整えるmonoの姿に、の子が「貴族か!」とつっこむ。
「ひぃ、ふぅ、みぃ、にゃっ」との子がかわいらしく呟き、バイオリンが加わった演奏が始まる。「いってきまっす!!」という掛け声に、多くのお客さんが拳を突き上げる。

「(曲を)何やったかやってないか、ペケしてる?」との子がセットリストの紙を持ちながらメンバーに尋ねると、「このままバイオリンいるから、『スピード』とかどうすか?」とちばぎんが提案する。
「『生足最高』当たり前だ。昨日千葉ニューのイオン行ったら千円の五枚剃りのやつ買ったからな」と、昨日すね毛を処理したことを白状するの子。曲を始めようとするも「じゃあ、とりあえず五枚剃りじゃねえや」と言い間違え、メンバーが戸惑う。

「じゃあ、コメント、読みます。僕のスピードがあれば、コメントなんか全部読みます。お前らには読めないだろうが。むかついたら、ぶん殴っていいんだぜ」

「の子かっこいいー!」
一人の女の子の歓声に、の子が物凄い笑顔で無言で対応。「めっちゃ笑顔!」とちばぎん。そのまま間髪入れずに「得体の知れない~」と歌い始めるが、ハウリングがキィィーンと鳴り、「はぅあっ」とゆるく後退するの子。それを2回繰り返した後、無事演奏へ。
バイオリンが常に切ないメロディを奏で、その中でメンバーがいつもの演奏をする。「誰にも見えないふにゃまちま~」との子が適当に歌うと、「ふにゃまちま!?」と戸惑ったコメントが右から左へ流れていく。
「たまに走ったりするのですー疲れてないバカヤロー」
終盤、ブレイクするところでの子が歌いながらコメントに反応する場面も。
「スピードで」とちばぎんのコーラスが繰り返されるところ、みさこのドラムが本当にかっこいい。演奏されるたびにパワーアップされていくところだと思う。最後の「走れ、走れ、走れ、走れ、走れー!」の高揚感は、何度聴いても飽きることはない。


「ごめんなさい、ちょっと暑すぎて、息が上がってますキーボードなのに息が上がってます」とmono。「monoくん、一番疲れない位置だよね」と、 座っている上に歌うことがないmonoをちばぎんが指摘。みさこが「monoくん、いつも汗ひとつかかないのに」と上乗せ。そしての子が「ニュートリノは 本当に存在するの?」と限りなく脈絡のない会話の入り込み方をし、更に「monoくん、ボケてみて?」とムチャ振り。「えーっとニュー」とmonoが 頑張ろうとするが、の子がコメント読みを続ける。
「ボケカウントがあったとしたら、俺が49だったら、お前は3だよ」と突然のmonoディス。相変わらず、の子のMCの展開は読めない。

の子が「これが150%?」というコメントに「いや30%」と答えていると、ちばぎんがベースを弾き始め、「オナニーしている毎日を、思い出して、俺 は、そう、そのときの自分を歌い続けるいかれたNEET!」とリズムに合わせての子が歌い、そのまま『いかれたNEETへ。の子、歌いだしのタイミング が急。メンバーの戸惑った表情もあったけど、そのまま上手いこと演奏が乗る。の子の叫び声とともに「にぃぃいとぉおおお!!」などと、たくさんのコメント が叫んでいる。の子の叫び声が弱くなってくると、「疲労島」との子を指摘するコメントも。
ライブに熱狂しているコメントもあれば、冷静に状況を解説したり、指摘するコメントがある。この熱くも冷たくもあるコメントの温度は、普段のライブでは決して味わえない。
最後は台の上にのぼり、ギターを危なっかしく振り回す。パーカッション機材を手で「ポンッポンポンッ」とかわいく叩くの子。

「大島、頭やばいぞ」と、の子の髪型を指摘するコメントを読んで髪型を整えていると、「ザビってんじゃねーよ!」と女性客の叫び声が。「どこだてめーこ のやろー!ザビってんじゃねーよって、親父が今観てんだから、親父が真っ赤になってんぞ!」と笑いながら返答。「ザビってる=(ザビエルのように)ハゲて いる」ということであり、の子はお父さんの遺伝により将来ハゲることを憂慮しているらしい。
「親父は立ち見」というコメントが流れ、笑いが。

「渋谷のWWWではラップするとかあったけど、どうした?」との子がmonoを挑発するが、「やめてやめて」と拒否。「あとで考えておいて、演奏してい る間!」と命令するも、monoが抵抗。「呂律が回んねえ」と悲鳴を上げるが、「なんだ、『ウルトラまあんねえ』って」と、の子には聞き取れていない様 子。ほんとに呂律が回っていなかった。

「せっかくのレコ発ツアーですから、(アルバムの)1曲目とかやりませんか?」
ちばぎんの提案により、歓声が。1曲目とは『グロい花』。「この曲、まきおさんがギター弾くんですよね」とちばぎんが紹介すると、神聖かまってちゃんの 名物スタッフ・まきおがステージでごそごそ準備している姿に注目が。照れ笑いをしながら頷くまきおに、まきおコールが巻き起こる。まきおだけに、まきおこ る。「頑張ります」と応えるまきお。
「まきおさんがギターを持っただけで、『おっ』という黄色い歓声が」とちばぎんが言葉を添えると、まきおがますます照れる様子。WORLD HAPPINESSのTシャツを着たまきおの出番が遂に始まる。まきおが曲を始めるタイミングを計ろうとの子を見るが、の子が劒マネージャーに頭につけた カチューシャを探してもらっているという意外な光景が。「映して」と鏡代わりに中継カメラに映し出されるの子の顔。手にアゴをあてて、キメ顔。「ナルシ ストー」と客席からの声。
「まあ、美しくなりたいじゃない」
巧妙に曲紹介に繋げたの子。天使のような囁きから演奏に入り、monoが弾くキーボードの切ないメロディが映える。まきお、ギターを抱えたまましばらく 何もしない。間奏でようやくギターが披露され、大きな歓声が。「まきおおおお」というコメントもたくさん。ちょっと失敗してしまったのか、少しばかり照れ 笑いを浮かべていた。
 赤を基調にした映像の中に、の子の瞳孔の開いた目が大きく映し出される。曲の世界観に合わせたLEDの仕掛けには、毎度毎度感動してしまう。ほんと、ニコファーレが神聖かまってちゃんのためのライブハウスに思えてきた。

「早いもので、あと2曲だそうです」とちばぎん。いつも通り『笑っていいとも』のごとく「えええーーっ!?」という反応。コメントでは視聴者数が5万人 との報告。「5万人が1500円払ったってことでしょ?すごくね?」とちばぎん。LEDには「7500万円!?」とさっそく掛け算したコメントが流れてい く。
「いや、もっと凄くなってくるからついてこいよ」
の子の発言に、キャーー!といった歓声が。「いや、これは笑いじゃなくて。僕の欲望は果てしないから」と続けるが、お客さんの一人の表情が気になったのか「あ、うんざりした顔してるね。『またかよ、の子』みたいなごめんね」と謝る。

「テクノっぽいコメントを流してくれ!」とインターネットの向こうのお客さんに指示し、キーボードの前に立つの子。『黒いたまご』へ。ステージ天井のラ イトがあちらこちらに光を放ち、ニコファーレをクラブのように仕立てている。「どうしようもないね」「どうにもならないだろうね」という歌詞が書かれたコ メントがたくさん流れていく。
「どうにもならないことがあるのさ、金持ったって地位持ったって、どうにもならないことがあるのさー、そんなことを僕が今ここに叩きつけるのさー、僕はどうにもならないねー、僕はどうにもならないねー」
余韻を残すの子の呟きがまたたまらない。
神がかり、という表現はこのためにあった。とまで言ってしまいたいくらい、感極まってしまう光景を目の当たりにした気がする。映像と文字と光と音に包ま れたとき、どうしようもないし、どうにもならない興奮がそこにあった。黒いたまごが黒ではなく、カラフルに彩られていた。陰鬱な世界観はちゃんとそのまま で、まるでダンスフロアのようだった。

「残りがあと1曲になりました」という声に、またもや「ええーーっ!?」と。もうすでに90分が経過し、予定時間を越えようとしている。
一瞬、ステージ上の誰も喋らず、会場が無言になる。の子、「あのさあ、シーンとするのが怖いんだよ分かる?インターネットの前の君たちならよく分かる と思うんだけど、人といるときさ、会話が途切れると気にするんだよ。それがここで起きてるんだよ。だからお前ら喋れって」とメンバーに要望を告げる。

「まだまだやるんで、寝ないでくださーい」と配信を見ている視聴者に言い、「じゃあ、さっきやろうした曲を」と『ベイビーレイニーデイリー』へ。
「さあ、用意をするんだ!!」との子の指示により、曲の冒頭でみさこが叫ぶ「ちゃららちゃららー」をコメント上に書き込むように促される。タイミングを 合わすために「いっせーのーで」を言おうしたが、なぜか「いっしょうけんめいー」と言ってしまったことに自分でウケるの子。monoが「一生懸命頑張りま す」と添える。
「じゃあいくぞ!!」
「ちゃららちゃららーー!!」
客席からの歓声と、コメントの歓声が見事に合う。とはいえ、若干のタイムラグでずれてはいるけど、叫んだ後に「ちゃららちゃららー」という大量のコメン トが360度映し出される快感はなかなか味わえない。演奏中、その光景に歓声が巻き起こる。草原、青空などのショットが壁に映し出され、六本木の地下とは 思えない日常ののどかな風景にグッときてしまう。

興奮したの子は「2曲連続やる!」と言い、まきおにマイクを持ってくるように指示するの子。「『延長』?延長させろ!」と言う。「運営さん、延長を3時 間くらいしてください…3時間もすんじゃねえ!休憩があれば、3時間お願いします」と言いなおす。そして「えーっと、チューニングします」といつものパ ターンへ。
2曲連続っていうのがわからない何やるんだろう」とちばぎんが素朴な疑問をぽつりと。
ちばぎんが「やるなら、曲やろうぜ!」とライブを進行させようと促し、『美ちなる方へ』の演奏に。
PVの「出かけるようになりました」の部分を彷彿とさせる、青空の映像が映し出される。そこには雲らしきものがあるけど、どう見たって煙が噴出している ようにしか思えない。でも、この映像を選んだことでより一層、曲の世界に没頭できる。感激のコメントがたくさん流れ、メンバーはどのように思いながら演奏 したのだろうか。
途中、の子がmonoに何かしらを促し、monoが少し乗り切れていない様子でも立ち上がり、両腕を大きく振る。そして後半に突入する瞬間がとにかくかっこいい。

運営側によって延長することになり、「終電大丈夫?」の問いに「帰らない!」というお客さんの声も。ちばぎんが「最終的には帰ってください」と冷静に返す。コメントでも「終電大丈夫!」とあるが、monoが「そりゃお前は大丈夫だよ」とつっこむ。
「(視聴者数)10万いこうぜ」というコメントに、「まあまあ、さいたまスーパーアリーナまでいこうぜ」との子。「こだわりますね、さいたまスーパーアリーナ。いきたい?」とちばぎんが問うと、「ああ、俺はでかいステージが似合う男だから」とかっこいい発言を。

「男ってものは、うん、『自画自賛』とか言うやつもいるかもしんないけどさ、『たけだくんやって』うん、そういうことだよ」

このキマりすぎの曲紹介。そんでもってステージ脇ではスタッフ・まきおが柴さんのステージに入るタイミングを誘導しているが、「男ってものは」との子が 言った瞬間に柴さんにステージに入るように案内する、仕事のデキる感じ。というか、勘がビンビン働いていて見事な判断でした。

「男ってのはロマンなんだよ。くたばるときまで、男のロマンに金と時間を費やそうぜ。じゃあ、聴いてください。かっこいい俺、歌います。『男はロマンだぜ!たけだくんっ』」

これノックアウトされた女の子がたくさんいるんだろうな、と思ってしまうくらいの発言。珍しく最初から最後までかっこよくキマった演奏への入り方だった。
柴さんのバイオリン、そしてまきおのピアニカも参加。楽器がどんどん増えていく。このままいつか、オーケストラで神聖かまってちゃんの曲が再現されない だろうか。そんな期待も膨らんでしまう『男はロマンだぜ!たけだくんっ』の演奏。視聴者数が6万人を超えたことを告げるコメントが。最後の終わり方もバイ オリンがばっちりキマり、もうなんだか、凄い。今日の神聖かまってちゃんは間違いなく、凄い。誰も文句は言えないような、サービス精神と、説明不要なかっ こよさに満ち溢れていた。

本編最後は『ちりとり』。もうなにも言うことない。この曲の最後のあたり、いつもアドリブで思い出を振り絞るように綴っていくの子の叫び声、呟き。星空の映像をバックにこういうことやるんだから、グッとこないわけがないでしょう。

メンバーが退場し、大量の「8888888」の文字が流れていく中、ギターの鈍い音を轟かせながらの子が興奮さめやらぬ状態でマイクを持って喋る。「あ れ?誰もいなくなった」と冷静になった途端、劒マネージャーが近づいて耳打ち。の子は「アンコールとか分かってるよ!」とその後の展開を爽快にバラし て、一度ステージから去る。

会場の照明が暗くなり、LEDに映し出されるコメントがキラキラと鮮明に浮かび上がる。「アンコール」「早くでてこい」「のこー」「会場もっと盛り上がれ」などのコメント。

ステージの照明が明るくなり、メンバーが続々と戻ってくる。の子は本編途中から脱いでいた赤いモコモコとした服を再び着ていた。「さっき早くやれって言 われたからストリートファイトしてきた。それで血まみれになって」と赤色を説明。「かっこいいよ!」という男性客の声援に、「当たり前だバカ!」と返答。
「配信で待っている方もすいません。てことで23才の夏休み』やります!インターネットのみんなは光ファイバーで頼むよ!俺はニュートリノの速度でやるよ!」

アンコールはみさこの軽快なドラムから『23才の夏休み』でスタート。
8月と9月に生出演した音楽番組『カミスン!』でのようなパフォーマンスは一切なく、ギターを弾きながら真っ直ぐ歌っているの子の姿があった。それでも 「死して屍!!」と何度も叫び、会場は完全に共通認識。知らない人は誰もいない様子で、客席は笑顔で溢れていた。サビの、の子のボーカルに乗っかるみさこ の高音コーラスがこれまた爽快。

「『死して屍』でコメントが埋まった」とみさこ。「『死して屍』ってコメント読んでたらそのままになっちゃった」との子が白状する。

そして「monoくん!」との子が呼びかけて、『ロックンロールは鳴り止まないっ』のイントロのピアノが。いつ聴いてもテンションがおさまらないスター トに、客席は大いに盛り上がり、縦に揺れる。途中、ギターを弾かずに人差し指を突き出して叫ぶの子。前かがみになってリズムをとりながら弾くmono2 人の姿が大きな画面に映し出され、それは今までに視覚効果として使われた宇宙、夕暮れ、青空、星空などの映像とは比べ物にならない、素晴らしい映像だった ように思う。
最後、の子はステージと客席の間に降り、ギターをステージに放り投げる。そのときのギュワアアンという鈍い音がたまらなかった。

ちばぎんが聞き覚えのあるフレーズをベースで奏で、みさこがパシャンパシャンとシンバルを鳴らし、におわせる。におわせて、におわせて、きた!と興奮せざるをえない、『学校に行きたくない』
ギターを置いて、マイクに徹するの子。シャドウボクシングのようなダンスに徹するmono。二人が自由に暴れる。火花が散るような真っ赤な映像の中、 「学校に行きたくない」「計算ドリルを返してください」の二言だけが延々と繰り返される。弾幕となり、不登校児の精神世界が具現化されたようなニコファー レ。
中盤、monoが野太い声で何度も「おかーーさーーーん!!」とうずくまって叫ぶ。の子はパーカッション機材が置かれた台に上り、ステージ中央で視線を 一気に集中させる。そしてダイブ。客席の波に乗り、客席の中に降り立ったの子。「の子を返してください」というコメント。多くの人がの子を見失い、終盤で は客に持ち上げられて再びステージに帰ってくる。衝動に満ち溢れていた。
最後は所属事務所パーフェクトミュージックの新しいスタッフ・阿修羅(身長・190cm)に抱かれながらステージに戻されるという姿で笑いに包まれる。「お姫様だっこされてるじゃないですか!」とちばぎん。

「ケガとかしてないですか?大丈夫ですか?」とちばぎんが言うと、の子が急いでマイクを掴み、「大丈夫ですか?僕は楽しかったですけど」と笑顔で伝える。大歓声で盛り上がる。

「ありがとうございます!みんなコンビネーションいいな!コンビネーション良くて、泣いちゃった。泣いてないけどな!泣きそうになった

の子、感激のままステージでうろうろする。「またニコファーレやるんで!来週!僕らはまた別のところでも、おっきいLED使ってこういうライブやりたいですね」という声に拍手が巻き起こる。

「今日は1500円払ってもらって『なんだかんだで味しめてるな』うん、味しめてるけど。またニコファーレやるかわかんないけど、僕の前みたいな LED使ったのやります。そのときは1500円いらないだろ、みんな。お客さんに何よりありがとうって感じで。リスナーのみなさん、ありがとうございま す!」

最後は、エンディングにふさわしく『ぺんてる』
「みさこ泣くな!」という男性客の声に、「いやあ、汗が目にしみたんですよ」とみさこ。説明もなく、まきおがギターを抱えている。そして演奏が始まり、 いつもはmonoが弾くギターをスタッフ・まきおが弾く。monoはというと、終始踊っている。「ぺんてるはmono終始ダンスに徹する」という解説のよ うなコメントが流れる。踊りようのない曲だけあって、踊りのバリエーションに困っている瞬間もあり、こちらとしてはそれがまた一つの楽しみになってしまっ ていた。
しかし、これは。歌詞や感激のコメント、冷静なコメントが流れる中、轟音の中での子が呟き、360LEDに映し出されるメンバー全員の姿。
なんなんですか、これは。
そんな光景が目の前に広がり、視界を遮るものが一切ない空間。まわりにたくさん人がいても、一人になれる。神聖かまってちゃんと一対一になれるような瞬間。ライブの面白さ、楽しさ以上のものが、この日のステージには詰まっていたように思う。
衝撃的とか、放送事故だとか、リア充とか非リア充とか、いじめとかニートとか、ひきこもりとか、全然関係なく、神聖かまってちゃんはとてもかっこいいロックバンドだった。
分かっていることだけど、目の前に突きつけられた姿には、感情に従うしかない。

「ぺんてるに、ぺんてるに、ぺんてるに」とギターを弾きながら続けるの子、そのまま弾き続け、大量の「8888888」というコメントと拍手に包まれて、26才の夏休み』が始まる。

歌い続けるの子。ベースで支えるちばぎん。泣いているのか、少しばかり眉をハの字にさせているみさこ。終始うつむいて何もしないmono
それぞれの26才の姿がステージにも、映像にも、インターネット上にも映し出されていた。ありふれているのかも知れないし、当たり前なのかも知れない感情の中、の子は日記のような歌詞を歌い続けていた。
26才の夏休み、ヒゲを剃ることからまず始めてみる」

歌い終わった後、の子は低い声で「ありがとうございます」と言った。その声のトーンこそがの子の本当の姿なんじゃないかと思った。ナルトを貼り付けることも、警察とやりあうことも、頭を傷つけて流血することも、忘れてしまった。
あれは素の姿だった。彼もまた感情に従っていた。
「ありがとうございました!神聖かまってちゃんでした!」
みさこの挨拶、そしてデーーーンとドラムとベースが鳴り、締められる。
「僕はなんかあれ、みさこさんなんかと違って、泣いちゃったよ!」
の子が照れ笑いしながら言う。「今日はいいライブができました。お前らは知らないけど、僕はいいライブができました」という声。観客からの大きな歓声は、答えになっていたと思う。誰から見てもいいライブだったのではないか、と。
「俺にあとで(ニコニコ生放送)見せろよ!俺が自分で感動するから!」
台に上り、何度もお辞儀して挨拶をする。

「次の配信はいつかわかんないけど、インターネット空間で会おうぜ」
そんなセリフを残し、マイクを放り投げてステージを去るの子。もう、この日は何もかもがキマっていた。最高のステージでした。
 

ライブ後、ビデオカメラを直しに楽屋に入ると、汗だくのの子さんが爽快な笑顔で入ってきた。
「今日ほんとよかった。泣いちゃいました」
この人の笑顔を見ると本当に安心するなあ、としみじみと思い、感動に浸ってしまった。

『学校に行きたくない』で爪を内出血してしまったmonoくん。「指に一本長い毛がちょろっと生えてる」となぜか僕に見せてきたみさこさん。その指には血がついていた。ちばぎんは倒れて横になっていた。
神聖かまってちゃん、一体どこまでいくんだろう。
この日、歴史に刻み込まれる瞬間を目撃してしまいました。


2011年10月2日 六本木ニコファーレ
〈セットリスト〉
1、白いたまご
2、レッツゴー武道館っ!☆
3、Os-宇宙人
4、自分らしく
5、天使じゃ地上じゃちっそく死
6、夕方のピアノ
7、コンクリートの向こう側へ
8、ねこラジ
9、スピード
10、いかれたNEET
11、グロい花
12、黒いたまご
13、ベイビーレイニーデイリー
14、美ちなる方へ
15、男はロマンだぜ!たけだ君っ
16、ちりとり
〈アンコール〉
1、23才の夏休み
2、ロックンロールは鳴り止まないっ
3、学校に行きたくない
4、ぺんてる
5、26才の夏休み

2011年10月1日土曜日

MAHOΩ@渋谷Violet and Claire

渋谷の雑貨&レコード屋さん・Violet and ClaireにMAHOΩがアコースティックなスタイルで出演するということで、撮影に。雑貨ブランド・sophie et chocolatさんの1周年イベント。
見渡す限りガーリィな雰囲気。とても自分には程遠い清潔な場所だったので、一人では入りづらく、MAHOΩのメンバーと一緒に入らせていただいた。

8月に初ライブをした後、今回が2回目。とはいえ全員が出演ではなく、ボーカルのじゅんじゅんとMAX、ドラムのayUtokiOの3人のみ。1台500円の壊れかけのキーボードを修理したものを使用し、オモチャのようなサウンドを店内に轟かせていた。
それほど広くはない店内は結構ギュウギュウ。女の子多し。そこに風邪引きマスク姿の自分がいるんだから、不審極まりない。それでも3人の可愛さに圧倒され、自分までもが可愛くなれるんじゃないかという期待を背負いながらカメラを回した。僕は可愛くはなれなかった。
MAHOΩは8月のライブ映像の評判が大きかった。最近アップした動画では珍しく、再生回数がすぐに千回を突破。「あのじゅんじゅんが動いてる!」という反応が多かった。川島小鳥の写真集『BABY BABY』や銀杏BOYZのCDジャケットのじゅんじゅんが動き、踊る。その驚きから入る人が多かったけど、すぐに演奏・楽曲の魅力にとりつかれるように思う。

『mahOtokiO』『ルージュの恋(ユーミンのカバー)』を演奏し、そして大好きな『しかけの恋』。何かの名曲をカバーしたのではないかと疑ってしまうほどの名曲だと思う。中央でじゅんじゅんが歌い、キーボードを向かい合って鳴らすMAXとayU。時折パーカッションのようにスイッチを上下させる。どこかドビュッシーの『夏の風の神』を彷彿とさせるメロディで、良い意味でチープな音がクラシカルを身近なものにさせる。
MAHOΩにはユウ、アユという2人の男性の作詞・作曲家がいて、歌詞は女の子の一人称で書かれている。男が描く女の子。それがまた不思議な作用があるのだ。

「抱いてるようで抱かれてるようで後だしのジャンケン 100秒の恋と1億の戦士たち けど、まぁいいか で、飲む私 で、まぁ不安も脱いで裸足」

その情景は性行為さえ匂わせる。いい具合の脱力感との相性が抜群。メルヘンと現実の境目がMAHOΩにはあり、ただのドリーミーではない。女の子は夢を描くが、女の人は現実的なのだ。それを可愛い女子が歌うのだからずるい。MAHOΩの歌詞はどこかしら女性に近づこうとしている様が、聴いていてグッとくる。

最後は『my rOom』『僕らに愛を』の2曲を演奏。これがまた語感の気持ち良さがあり、英語歌詞を訳すと「人の幸せを祈ることがこんなにも幸せなことだったなんて」。ぐぅの音も出ないほどノックアウト。こんなことを思えたら幸せなんだろうな。
3人は色とりどりのお揃いのベレー帽。文化系男子と女子が発狂するような空間がそこにあり、嫉妬するようないやらしさはなく、撮っていて自然と笑顔になった。笑いながら撮るとはなんて気持ちの悪いことか。でも気持ち良かったんだから仕方がない。

最初から最後まで可愛さを持続させ、20数分のライブはほのぼのと終了。これだけでも十分満足。じゅんじゅんは次回のライブについて「カルチャーショックを与えるよ」と自信の発言。出来立てほやほやのバンドだけど、今後の展開が楽しみなのです。

MAHOΩ(JJ+MAX+ayUtokiO)【しかけの恋】2011/10/1 渋谷Violet and Claire

【my rOom】