たけうちんぐ最新情報


⬛︎ たけうちんぐと申します。ライターと映像作家をやっております。 プロフィールはこちらをご覧ください。
⬛︎ 文章・撮影などのご依頼・ご相談はこちらのメールアドレスまでお気軽にお問合せください。takeuching0912@gmail.com
⬛︎ YouTubeチャンネルはこちら→たけうちんぐチャンネル/Twitterアカウントはこちら→

2017年1月19日木曜日

映画『沈黙ーサイレンスー』レビュー


マーティン・スコセッシ監督の新作『沈黙ーサイレンスー』(1月21日公開)のレビューを書きました。「AM」に掲載されています。

あまりの重厚感にまさに“沈黙”する…日本人俳優が集結した『沈黙―サイレンス―』
http://am-our.com/love/54/13849/

(一部抜粋)
 姿なき者を信仰する彼らが天から耳にする“沈黙”が、処刑の際の波しぶきを破壊音に、燃え滾る炎を炸裂音に聞こえさせる。断末魔が耳を突き刺し、痛々しく胸を打つ。ロドリゴは目の前にいる人々の命を救うため、神の絵を踏むのか。それとも――。
 神と人間という根源的なテーマの先に描かれるもの。その一つの答えが姿を覗かせた時、壮大な景色の中で思わず“沈黙”してしまう。

2017年1月16日月曜日

2017年1月15日日曜日

映画『アンチポルノ』レビュー


園子温監督の映画『アンチポルノ』(1月28日公開)のレビューを書きました。「AM」に掲載されています。

園監督にしか映せない、究極の“自我”がここに!アナーキーすぎる問題作『アンチポルノ』
http://am-our.com/love/54/13832/

(一部抜粋)
 虚構と現実が入り乱れ、作品の中の何を信じればいいのか分からなくなる。それは京子の心情に寄り添うことになる。ガラスの破片に映った顔は切れ端に過ぎず、またその表情も断片でしかない。突き刺す。切り刻む。叩き割る。破壊にも似た衝動が、観る者のあらゆる感覚を奪っていくだろう。

 身体がもぬけの殻となり、心が行方不明になる。“自分”というものが見当たらない部屋で、京子は何を見るのか。
京子はどこか他人で、どこか自分だ。彼女自身の中の京子が、それを観ている我々の中でも泣き果て、または笑い続けている。

2017年1月9日月曜日

2017年1月7日土曜日

映画『ネオン・デーモン』レビュー


ニコラス・ウィンディング・レフン監督の映画『ネオン・デーモン』(1月13日公開)のレビューを書きました。「AM」に掲載されています。

「21歳で女は終わる」美しいモデルの光と闇を映した衝撃作『ネオン・デーモン』
http://am-our.com/love/54/13822/

(一部抜粋)
 本当に恐ろしい。見終わった後、その美しさと危うさのギャップに思わず言葉を失う。それは怪物や幽霊にも勝っている。女のプライドが立ちはだかる。ジェラシーが入り混じる。そこには、閃光と鮮血に塗れた“悪魔”が誕生しているのだ。

2017年1月1日日曜日

新年のご挨拶


あけましておめでとうございます。今年も映像・文章ともに励んでまいります。よろしくお願いします。

2017年からブログの更新の頻度を上げていきます。鑑賞した映画・音楽にまつわること、映像で関わったものやライブレポート、日々想うことなどを書き綴ってまいります。

今年は酉年です。ブログやTwitterなど全てのアイコンに使用している鳥は小学生の頃に飼っていたセキセイインコ《チュンちゃん》をモデルにしています。当時、母が窓を開けた途端に逃げてしまいました。その悲しみから逃れるためにキャラクター化しました。

小学生の頃に《チュンちゃん》を主人公にした学園モノの漫画『V・Wだーぶ』を連載しました。読者は自分だけでした。当時、休み時間にクラスメイトは決まってドッヂボールで外に飛び出しましたが、僕は「人にボールを当てるなんて!」と拒み、ずっと一人で教室の片隅で漫画を描いていました。

高校生の時にHTMLからホームページを作って《チュンちゃん》のイラストを載せると、それを見てくれた東京の方が編んだぬいぐるみを作ってくれました。それをずっとアイコンにしています。当時誰にも知られないで描いていたものが、兵庫から東京まで届く。その衝撃と感動を忘れないでいるために。


バードワールドはV・Wじゃないし、ハンコを押してるのも意味分からないけど、今撮影や文章を通じて誰かと繋がることは誰にも読まれることなく《チュンちゃん》を教室で描いてた頃があったからです。

2017年もまた新たな出会いがありますように。このブログを読んでくださっている方々にとって、今年一年が素晴らしい日々になりますように。

2016年12月30日金曜日

その世界の片隅から、ど真ん中へ。BABYMETALの“メタルレジスタンス”を追う 第9章


おたぽるで連載中の『BABYMETALの“メタルレジスタンス”を追う〜私は如何にして心配するのを止めてYUIMETALを愛するようになったか〜』の第9章「その世界の片隅から、ど真ん中へ。」を書きました。

「その世界の片隅から、ど真ん中へ。」
http://otapol.jp/2016/12/post-9223_entry.html

(一部抜粋)
 今年11月、YUIMETALが愛してやまない能年玲奈が「のん」に改名後、初めて主演を務めたアニメ映画『この世界の片隅に』の上映が始まった。
 YUIMETALはさくら学院に在籍していた頃、アンケートの《憧れの女性有名人は?》に「能年玲奈ちゃん!」、《最近うれしかったことは?》に「能年玲奈に会えた夢をみた時」と答えていた。能年玲奈の出演作品は必ず映画館で観ると決めているYUIMETALに、この作品はどう映ったのだろう。もうすでに観たのだろうか、と気になって仕方がない。
『この世界の片隅に』は作り手の登場人物への愛情が掴み取れる。自己愛がまるで感じられない。映画という表現自体、キャラクターに息吹を与え、誰もがその喜怒哀楽に寄り添う魅力的な人物を作り出すことで名作を生み出す。この作品から、映画が他者愛の表現媒体であることを改めて感じることができた。
 BABYMETALはまさに他者愛の表現だ。メタルの復権を願い、メタルを世界中に広めるという大義名分がある。先人たちのリスペクトを忘れず、そのオマージュを散りばめてメタルへの入り口をグッと拡げていく。

第1章から9章をこちらのページにまとめております。

2016年12月28日水曜日

E TICKET PRODUCTION - FIRE LIAR feat.椎名ぴかりん MV


E TICKET PRODUCTION - FIRE LIAR feat.椎名ぴかりんのミュージックビデオを監督・撮影・編集しました。

E TICKET PRODUCTION - FIRE LIAR feat.椎名ぴかりん ミュージックビデオ(short ver.)
https://www.youtube.com/watch?v=3CjrKP-Z3mk

Lyrics by E Ticket Production / Music & Arranged by E Ticket Production / Produced by E Ticket Production
MV Dir:竹内道宏 / ロケ地協力:おもちゃのふくしま(東京都北区桐ケ丘) / 衣装協力:THUNDERBOX

■ミニアルバム「E TICKET RAP SHOW」発売日:2017年1月10日(火) / レーベル:IDOL NEWSING
ナタリー - Eチケ作品集より椎名ぴかりん参加曲「FIRE LIAR」MV公開、監督は竹内道宏

2016年12月25日日曜日

映画『この世界の片隅に』レビュー


片渕須直監督の劇場アニメ『この世界の片隅に』のレビューを書きました。「おたぽる」に掲載されています。

『この世界の片隅に』――強く、優しく、しぶとく根を張る。そこで再生する誰かの喜怒哀楽を想像し、想いを馳せるために。
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20161225-00010001-otapolz-ent

(一部抜粋)
 すずさんがユーカリの木に登る。そこに広島から飛んできた障子が落ちていることに気が付く。大切なものを失い、想像する器が無くなってしまった。そんな彼女の故郷での思い出が、障子の失くした紙に一枚一枚映し出される。そして、彼女は近所の人たちに摘んだユーカリの葉を分け与える。

「うちも強うなりたいよ。優しゅうしぶとうなりたいよ。この街の人らみたいに。」

 ユーカリの花言葉は『新生・再生・思い出』である。爆弾で焼かれた障子の紙が、この作品によって再生する。その一枚一枚が、誰かの物語なのにまるで自分の思い出のように残り続ける。やがて新しい時代へと、この作品が記憶を繋げていくに違いない。
 それもすずさんの言葉の通り、強く、優しく、しぶとく。悲しくてやりきれなくても歩き続け、時には走り出し、立ち止まる。それを観る我々も、きっとその一部になるだろう。

『この世界の片隅に』公式サイト

2016年12月1日木曜日

難病を抱えた映像クリエイター・VJ NAKAICHIを追ったドキュメンタリー作品『SAVE』


難病を抱えた映像クリエイター・VJ NAKAICHIこと中市好昭さんのドキュメンタリー作品『SAVE』を監督・撮影・編集しました。
Webメディア「lute」にて全編公開されています。

「SAVE」 by SAVE NAKAICHI DONATION PROJECT supported by DOMMUNE × 2.5D × lute
https://www.youtube.com/watch?v=VNZFBfOnYyM

中市さんは難病「原発性硬化性胆管炎」「自己免疫性肝炎」を併発し、余命2年を宣告されました。街頭募金やクラウドファンディング、チャリティーイベントなどで手術費を募り、奥さんとともにアメリカに渡って移植手術を受けました。
中市さんは死を覚悟して「愛してるから、別れよう」と奥さんに告げました。それでも奥さんは「別れない」と応えました。アメリカでの移植手術後も拒絶反応で感染症などで生死を彷徨い続けても、ずっと傍で支えていました。

"クラウドファンディングが命を救う"なんて聞いたことがありますでしょうか。
日本の医療制度の問題で肝臓手術が受けられず、アメリカでしか出来ないため膨大な手術費がかかりました。7,500万円という途方もない金額を、中市さんの仲間の方々が力を合わせてクラウドファンディングなどで募りました。
誰もが死に向かって生きていて、誰もが遅かれ早かれ死ぬ。それでも一日でも多く生き延びていたいのは、まだ何かやり遂げることがあり、まだ誰かと一緒にいたいから。
 「クリエイターは100年残る作品を作る」
中市さんと奥さん、そして仲間の方々の関係こそが100年残るものだと思います。不可思議/wonderboyさんの『生きる』を挿入歌として使わせていただきました。

「いつかは死ぬとわかっていながら 永遠なんてないとわかっていながら それでも人は愛するということ」

ドキュメンタリー『SAVE』は遠く離れた地で命を繋げる一組の夫婦と、それを見守る仲間たちの物語です。
中市好昭さんとその奥さん、仲間の方々の「生きる」姿を見てもらいたいです。
この作品にご協力いただいた皆様に感謝いたします。

CAST:
YOSHIAKI NAKAICHI( VJ NAKAICHI) / AKIKO NAKAICHI / DJ EMMA / SHINICHI OSAWA / TOMOYUKI TANAKA(FPM) / KEN ISHII / SUGIURUMN / THE SAMOS / YAMATO / NAOHIRO UKAWA(DOMMUNE) / KAZUMA IEIRI(CAMPFIRE) / TOMOYASU HIRANO / TAKAHITO KUMASAKI / MAMORU ICHIKAWA / yanma(CLUBBERIA) / HEART BOMB / VJ YUKI(VJ 100LDK) / NAOHIRO / YAKO / VJ MANAMI / GraphersRock / LIGHTING AIBA / JUNYA YAMADA (David J. roroduction) / YASUHIRO ARAKI (オーガナイザー) / KAZUKO TAKAHASHI(日本移植支援協会) / TOMOYASUHIRANO (メディアクリエイター) / TAKAHITO KUMASAKI (デジタルステージ代表取締役)

DIRECTED BY:MICHIHIRO TAKEUCHI
PRODUCED BY:THINKR / KENJIRO HARIGAI(THINKR)/ lute
SPECIAL THANKS TO:DOMMUNE / SOUND MUSEUM VISION / CREATIVEMAN PRODUCTIONS

2016年9月20日火曜日

BABYMETAL WORLD TOUR 2016 TOUR FINAL "LEGEND - METAL RESISTANCE -BLACK NIGHT-"「ある少女の憑依、豹変、そして覚醒へ。」



余韻が身体から抜け切らない。

十字架に磔になった3人。高さ20mのステージから響く歌声。一斉に灯される赤い光。噴き上がる火柱の中の全力疾走。
そして達成感に満ちた「We are ! BABYMETAL !」。身を寄せ合って360度客席を見渡す3人の姿はこれ以上ないくらいに煌めいていた。
この2日間を通して、喜怒哀楽様々な感情を湧き立たせられた。貫き通すコンセプト。徹底したクオリティ。圧倒的なリスペクト。この3つが、それを作る3人が、それぞれ三位一体となって重なり合う。やがて鋭いトライアングルになって心臓を突き刺す。赤く染まる。黒く焦げる。燃え尽きた。
あの時の残響が、残像が、いまだ身体中に染み付いている。シャワーを浴びても洗い落とせず、一夜明けても醒めない。いっそこのままお風呂に入らず、眠らずに過ごしたくなるほど、宝物のような時間がBABYMETALの東京ドーム2Daysの第二夜 - BLACK NIGHTにあった。

SU-METALが覚醒していた。あれは間違いなくモンスターだった。彼女たちは史上最高をまたも更新した。観たかったものをすべて魅せる、非の打ち所がないツアーファイナルだった。




昨日(9月19日)のライブレポート - RED NIGHT

昨日に引き続いて水道橋は大雨に見舞われている。台風が関東地方に接近する中、突き進む嵐と同じ方向を目掛けて東京ドームへ。
そこは平日とは思えない盛り上がりで、まるでお祭り会場。コスプレ、コープスペイントを施して記念写真を撮る人たちはみんな笑顔で、ここが悪天候とは到底思えない。25番ゲートは混雑することなく、昨日よりすんなり施設内へ入ることができた。
またしてもコルセットが配られる。一見昨日と何の変わりのないものに見えるが、ここから発される光がまた新しい光景を作り出すことになるだろう。と同時に、辺り一面がコルセットを首に巻く人々で埋め尽くされ、史上最大の整骨院となるのだろう。
昨夜のRED NIGHTと同じく円柱ステージが立ちはだかる。オープニングムービーの宣言が正しければ、今日は昨日とは全く違うセットリスト。すでに披露する曲が決まっているライブは初めてかも知れない。『THE ONE』無くして余韻を残すことができるのだろうか。と、その不安はこのライブレポートの冒頭にある通り、あっけなく杞憂に終わった。
開演前、座席はすべて埋まりつつある。平日でしかも台風が迫り来る中、このようなことがあるのだろうか。前日の余韻がまだ抜け切っていない最中、新たな余韻が上書きされる時が迫る。

きた!
円柱ステージの360度電光板が光り、観客が一斉に起立する。昨日と同じくオープニングムービーでプロデューサー・KOBAMETAL氏(全身骨タイツ)の「キツネだお〜」と低音ボイスでの挨拶が始まる。
「二日間で一つの物語を構成する。BABYMETALの二大教典『BABYMETAL』『METAL RESISTANCE』から全ての調べを奏でる。一度奏でた調べは二度奏でられることはない。」
つまり、『ギミチョコ!!』『KARATE』『Road of Resistance』という必殺曲が今日は鳴らない。それでも、確実に演奏することが約束されたあの曲やこの曲を想像しながら胸の高まりが抑えられないでいる。
「トリロジーの三点が重なり合い、我々を頂点に導く奇跡の物語……」
1stアルバム『BABYMETAL』のオープニングを飾る儀式の始まりを告げるような音楽に乗せて、2015年の埼玉・幕張・横浜の三部作ライブ、2016年の聖地・ウェンブリーアリーナの映像とナレーションが。それはBABYMETALの歴史を辿る時間であると同時に、それを観てきた者の記憶の断片を呼び覚ます時間でもある。
「国を超え、世代を超え、世界中から集まりし11万人のメタルの魂"THE ONE"の集合体は、白い屋根を突き破るほどの強大な光を放ち、天空を紅に染めるだろう。」
あの日、あの時、あの場所でBABYMETALが作り出した"伝説"、すなわち己自身の限界を超えることで新たな物語が生まれるという。彼女たちのバイオグラフィーを感慨深く振り返る隙もなく、「諸君、首の準備はできているか?」ーその答えとして地鳴りのような呼応が東京ドーム中に響き渡り、いよいよBLACK NIGHTが幕を開ける。

雷が打ち鳴らされるようなリフ。それに合わせる怒号のような歓声。『BABYMETAL DEATH』が始まる。これが鳴ると否応無く全身の血が滾る。BABYMETALのライブが始まった!そんな気持ちにさせてくれる。
円柱ステージから三方向に広がる棺桶型のステージ上に一斉に視線が集まる。なんと、3つの棺桶の上でそれぞれ3人が十字架に磔にされている。かつて2年前の幕張メッセ・イベントホール『LEGEND 1997』ではSU-METALが磔にされたが、今回はYUIMETALとMOAMETALも。その十字架はやがて移動するステージによって中央に集まり、3人の身体が解き放たれる。そして東京ドームを静観するようにフォックスサインを掲げ、5万5千人に召喚されたかのように"メタルレジスタンス"の狼煙を上げる。

その表情は三者三様だ。SU-METALはキリッと鋭い目付き、YUIMETALは勇ましくも可愛らしく口を尖らし、MOAMETALはニヤリと小悪魔的に微笑む。名前しか言わないという前代未聞の歌詞でも、その情報量は3人の表情に豊富に詰め込まれている。
衣装は昨日と違い、今日は赤が残っている。というか、赤が激しく主張している。SU-METALに至っては肩のフサフサとした部分がメタル・クイーン感を醸し出し、カリスマをよりカリスマに仕立て上げている。 昨日は2ndアルバム、今日は1stアルバムを表しているのかも知れない。

一旦儀式が終わると、ここからメタル・アミューズメントパークへ。回転ステージを縦横無尽に遊び尽くす『あわだまフィーバー』は終始笑顔が堪えきれず、メンバーに倣って「あわ〜あわ〜♪」と両腕で丸を作って踊るのが楽しい。サビでSU-METALが「もっと!」「歌って!」と煽って、「Ah Yeah!」と一斉にジャンプする。
そのテンションは『ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト』でも変わらず。「アタシん家」のYUIMETALの目を細めた笑顔にヤラれて、その後の「You and Me〜!」と叫び逃す。あの瞬間、もしパソコンだったら確実にスクショの音が鳴り止まない。それを言ってもしまったらこの二日間、パシャパシャと記者会見のようにシャッター音が鳴り響いてしまう。

待ちに待った『META! メタ太郎』の時間がやって来る。ウルトラマンが空を飛ぶようなポーズでちょこちょこ歩く振り付けの可愛さは、東京ドームの広いステージでより一層映える。ワールドツアーではYUIMETALが"飛ぶ"方向を間違え、それを間違いに思わせないためにMOAMETALが即座に軌道修正するコンビ愛が見られた。
長い旅から培ったパフォーマンスを讃えるように、オブリガート部分のメロディをシンガロングするシーンが用意されている。「Wow Wow〜♪」男性客の多さから地面が揺れるような低音が響き渡る。この時点でRED NIGHTと全く引けを取らないセットリスト。演奏する曲目がすでに分かっていても、音が鳴る時点で思わず声で出てしまう。

ムービーが始まる。"怒り"を主題にした英語のナレーションで、神話のような絵が赤い炎に包まれていく。
「神は人間の心の奥底に怒りを封じ込めた。やがてA-KIBAの魔力によってその封印は解かれ、再び怒りの炎が燃え上がり、この世を焼き尽くすのだ。」
相変わらずスケールの大きな語り方に畏怖の念を抱く。やがてナレーションが語気を強めて、「燃やせよ!燃やせよ!胸の中に秘めた怒りを!」「戦え!戦え!お前らの怒りを叫べよ!」と訴えかける。もうすでに答えが出ている。「I watched as the lamb opened the first of the seven seals...」と新約聖書のヨハネの黙示録の一節が読み上げられると、ステージに一斉に光が集まる。こうして凶悪な世直しソング『Sis.Anger』が無数の火柱に迎え入れられる。
「ざっけんじゃねーぞ!おい!おら!」
YUIMETALとMOAMETALが時折髪の毛で顔が隠れるくらい顔を振り乱す。"怒り"をテーマにしたこの曲でBABYMETALの表現の幅がグッと広がったように思う。ネガティブな感情を歌っていても、力強く背中を押してくれるような応援ソングでもある。それぞれが棺桶型の移動ステージに分かれて、アリーナの客席に近づいてくる。2人が離れた場所で激しいダンスを繰り広げることで、いつもの2人横に並んでいる距離感ではない分双子感は薄れ、その反面それぞれの存在感が際立つ。

壮大なオペラのような音楽が鳴り響き、真っ赤な光が辺り一面を照らす。神バンドのソロが始まり、三つの棺桶型ステージをLeda氏、大村氏、BOH氏が渡り歩き、超絶プレイを披露する。
繰り返される「オイ!」コールと、それに応える神バンドの演奏。青山氏の壮絶なドラムソロで一旦幕を降ろし、センチメンタルなピアノとストリングスがあの曲を予感させる。「幾千もの〜♪」の歌い出しから白い光が眩しく照らすのは、マントを羽織ったSU-METAL。イントロ部分を歌い上げると、火柱に取り囲まれながら「アカツキだーーーっ!」と叫んでマントを翻す。
東京ドームの大きな舞台で神バンドの爆音に掻き消されず、透き通った歌声がダイレクトに届く『紅月-アカツキ-』。とてつもないエネルギーを感じる。声が荒がるわけでも、叫んでいるわけでもない。客席がモッシュやサーフで狂うわけでもない。ただ、この会場の中で根底に流れている激情を確かに掴み取り、それを肌で感じる時間になる。歌声に様々な表情を身に付けている。間奏前はゆっくりマイクを降ろしながら客席を見渡す。その眼光が鋭くて目に焼き付いて離れない。かっこよすぎて鳥肌が止まらなくなる。

復活した『おねだり大作戦』 が嬉しくて、まるでステージ上の少女たちのように「買って!買って!買って!買って!」と何度も飛び跳ねてしまう。骨パーカー姿のMOAMETALのフードがどうしても頭から外れるのが可愛らしい。物販でおねだりされるのもいいけど、やっぱりステージでおねだりされるほうが助かります。
ムービーが豪雨の中で水に浸かったギターやベースを映し出す。台風接近中の現在、ここまでふさわしい楽曲があるだろうか。「だが、止まない雨はない。」まるで誰かの希望のように、一つの願いのように、『NO RAIN, NO RAINBOW』が静かに始まる。
いつ以来の披露になるのか。過ぎ去る一秒一秒が恋しく思えた。SU-METALはAブロックに近い棺桶型ステージの前方に姿を現し、そこからゆっくり歩きながら歌う。やがて中央ステージに到達し、間奏が終わるといつの間にか天空ステージに。地上にいる我々はその姿を讃えるように空高く拳を上げる。「絶望さえも光になる」ーその歌詞がこの後の展開を暗示しているかのようだ。

シリアスな雰囲気から一転し、『ド・キ・ド・キ☆モーニング』が天空ステージで繰り広げられる。アリーナ席からは見上げる形になるが、スタンド席の後方からはちょうど見渡せる。どのような角度からも高さからも平等に、ありとあらゆる場所から分け隔てなく鑑賞が許されるステージ構成になっている。
特にブレイク部分の3人が倒れるシーンはスタンド席からしか見えない。映像のスイッチングも3人の表情に寄らないので、この日のそれぞれの寝起き姿を観たのはアリーナ席にはいないだろう。

ここからクライマックスに突入する。今までにBABYMETALのライブで感じたことのない、ある表情を目の当たりにする時間へ。
『メギツネ』の盛り上がりは尋常ではない。やはり1stの楽曲は浸透力が強いせいか、一体感が並大抵のものにならない。「それっ!それっ!」と飛び跳ねるメンバーと観客。自分も飛び跳ねているので分からないが、ここまで一斉に着地するなら床が揺れているに違いない。
SU-METALがキツネ面を手にした後、ここからしばらくは全ての時間がSU-METALタイムと化した。
「Are you ready?」と煽りながら片方の顔をお面で隠し、もう片方から覗く表情の迫力は今後長く語られるだろう。突き刺す、切り裂くような、獲物を捕えて離さない目つき。「女は女優よ」と歌詞にあるが、女優どころか憑依した、もしくは豹変した、何かが乗り移ったような姿に釘付けになる。
YUIMETALとMOAMETALが「そいや、そいや、そいや、そいや♪」と手拍子を促して満面の笑みを浮かべる一方で、SU-METALはニヤリと企み顔で攻めてくる。会場が盛り上がる中、ただ唯一この状況を静観しているのだ。その表情に狂気を感じた。BABYMETALでこのような表現を見るのは初めてだ。
「ジャンプ!」と何度も煽りながらジャンプを続けた後も息を切らすことなく「いにしえの〜♪」と美しく歌い続けるのだから、そのエネルギーはただものじゃない。そんなことは以前から分かっていても、このモンスター級の表現力に感服せざるをえない。それは決してポケットに収まらない。むしろ収められるのは我々のほうだ。

『ロッキング・オン・ジャパン』の付録『BABYMETAL完全読本』で本人が語っていたことを思い出す。
「心の中にモンスターがいる感じっていうか。そのモンスターを解放してあげたらどうなるんだろう?っていうちょっとした疑問があって。だからピョッって手放してみたら自由に飛び立っていったんです。
 そこからライヴの中でしかその子は出てこないけど、その中で自然に暴れ回ってたらどんどん大きくなっていって。」

そのモンスターは『ヘドバンギャー!!』でますます進化する。マイクスタンドを華麗に扱い、肩のヒラヒラを靡かせながら歌う彼女の姿は、まさにクイーンだ。でも、正体は得体の知れないモンスター。「ヘドバンギャーーー!!!」と叫んだ後は間奏部分でYUIMETALとMOAMETALがヘドバンを促し、広いステージを行き来する。SU-METALはその中央でまたしても静観する。その表情はやはり狂気に満ちている。心地よい恐怖を感じる瞬間を目の当たりにする。
観客のヘドバンが映像で大写しになり、"重音部"のタオルを掲げながらヘドバンするお客さんの姿が印象に残る。古くから見続けてきた人にとって今日は感慨深い一日に違いない。イスの前で土下座ヘドバンを繰り返す様から切実な思いが伝わり、そのアグレッシブな姿は少し笑えながらもなぜか泣けてくる。

そして、BLACK NIGHTは最終章へ突入する。『イジメ、ダメ、ゼッタイ』のいつもの英語ナレーションに新たに言葉が加わる。
「キツネ様が教えてくれた。私たちの存在一つ一つは小さいけど、それでもみんなが力を合わせれば大きな光になる。それは不可能を可能にする。何も恐れることはない。勇気を出して、一歩を踏み出して。」
会場を見渡すと無数の赤い光が瞬いている。コルセットが赤く光り出している。その存在一つ一つを示し、文字通り大きな光となって会場全体を赤く染めている。『ヘドバンギャー!!』〜『イジメ、ダメ、ゼッタイ』の流れから、2年前の日本武道館を思い出す。あの日、あの時、あの場所で揺さぶられた感情が蘇る。YUIMETALの転落と、MOAMETALの転倒。最後、3人の笑顔が見れたことがどれほど嬉しかったか。あの出来事をここでリベンジしようとしているのか。その想いに胸が締め付けられる。"不可能を可能にする"ー今、たくさんの光を集めながらその時がやって来たのだ。「絶望さえも光になる」ーまさに、あの歌詞の通りに。

ざわめきの中でSU-METALが静かに歌い出す。その表情はやはり何かが降りている。歌い終わるとキッとした表情で空気を割くようにフォックスサインをクロスし、自分の分身を呼び起こすようにYUIMETALとMOAMETALに合図する。
SU-METALの咆哮とともにYUIMETALとMOAMETALが棺桶ステージから全力疾走し、無数の火柱が取り囲む円柱ステージへ到達する。
『イジメ、ダメ、ゼッタイ』は無数の赤い光に見守られている。髪の毛を振り乱す。ダメジャンプする。フォックスサインを掲げる。これまでに何度体験したことだろう。なのに、まるで初めてライブを観た時の興奮が蘇った。
「痛み、感じて、ずっと、ひとり、こころ、気づかないふり、もう、逃げない、イジメ、ダメ、ゼッタイ」
3人がサムズアップで向かい合う時、SU-METALの表情を見逃さなかった。あれは間違いなく覚醒していた。
ゾクッとした。今までに見たことがない。長い長いワールドツアーのゴールを目前に控えたランナーズ・ハイ故か。そのテンションの表現方法に笑顔を選ばなかった。才能も情熱も努力もすべて狂気を宿らせた。紛れもなく、その覚醒はSU-METALという世界を切り開いている大きな存在を明確に示していた。

巨大なモンスターを目の前に、ただ打ちひしがれるしかない。1時間半があっという間に過ぎて、BABYMETALの"史上最大の決戦"が壮絶に終わる。

2年前の日本武道館を塗り替えて、ここ東京ドームでまた新たな「最高」を叩きつけた。憑依、豹変、覚醒を経たSU-METALの表情がライブが終わると突如として無邪気になり、またさらにこの後に起きる出来事がとんでもない無邪気さを醸し出してくる。
天に願いを込めるような振り付けを解くと、3人は安堵の表情を浮かべて走り出す。「We are !」「BABYMETAL !」ー恒例の掛け声を促しに、三方向の棺桶ステージに向かっていく。

その最中でどよめきが走った。なんと、SU-METALが階段を降りる際にずっこけたのだ。

メンバーに「いや、ここにこれがあって……」とまるで言い訳じみたように床に指を差す。先ほどまでのモンスターはどこかへ飛んでいった。ほんの数分前のカリスマ性が嘘のように、"SU-METAL"と"中元すず香"の振り幅を見た。
YUIMETALが恐る恐るステージを歩く姿が微笑ましい。『イジメ、ダメ、ゼッタイ』の全力疾走で転ばなくて本当によかった。日本武道館で転落したYUIMETAL、転倒したMOAMETALに歩幅を合わせるように、その2年後にSU-METALがずっこけた。3人が身を寄せ合って、お互いの身体を支え合いながら歩いていく。こうして世界中の舞台を歩いてきたのだろう。その姿が涙腺を激しく刺激する。

SU-METALがYUIMETALにマイクフォローし、「We are !」と呼びかけさせる。その後にちょんちょんと肩を叩いてMOAMETALにマイクフォローすると思いきや、SU-METALは自分で「We are !」と言い出す。「えっ、もぅ〜」の表情のMOAMETALと、「えへへ〜、ひっかかった!」といじわるな笑顔を見せるSU-METAL。長い長いワールドツアー最後の3人の表情はやり切った達成感に満ちて、BABYMETALという鋼鉄の鎧を脱ぎかけた姿が垣間見れて嬉しかった。
それは神バンドにも見受けられた。Leda氏と大村氏が抱き合う姿が美しく、またLeda氏がSU-METAL同様豪快にずっこける姿が微笑ましかった。

最後は天空ステージに登る。いつの間にしか出現した巨大な銅鑼を前に、SU-METALがはしゃいでいる。それは昨日と今日のかっこよさをすべて吹き飛ばしていた。やっぱり少女なんだなぁ、と思うと同時に、こんなに無邪気な少女たちにこれほどまで凄まじい表現を魅せられていたのか。と、改めて心を打たれる。

「3、2、1……」とカウントして、銅鑼を叩く。盛大に特効が鳴り、美しい火花を散らしてBABYMETALの東京ドーム2Days、そしてメタルレジスタンス第4章が華麗に幕を閉じる。

その後、恒例の重大発表はアナウンスされず、「戦士たちに休息はない。」というナレーションが示すように、今後もBABYMETALの挑戦がまだまだ続くことが約束された。Red Hot Chili PeppersとのUKツアー然り、いつか来る新たな発表はまた多くの人を驚かせることだろう。
『From Dusk Till Dawn』は昨日同様にやっぱり退場BGMでしかなかったが、もうすでにお腹がいっぱい。それも全然許せるくらいの満足感で倒れそうになっていた。

初めてBABYMETALのライブを観た時、その完成度に驚いた。でも、今思うとそれは全く完成ではなかった。あのクオリティでさらに自己を高めて、上へ上へと登りつめていく。ライバルはいない。なぜなら、自分自身しか戦う相手がいないから。その精神にいつも心を突き動かされる。
そして、東京ドーム公演にも関わらず全編が実質1時間半もなく、ストイックに貫き通す姿勢に痺れる。MCもなければアンコールもなく、休むことなく音が鳴り続ける。無駄が一切なく、あらゆる角度から人々を楽しませようとする心意気にひれ伏してしまう。

SU-METALの覚醒を目撃した。あの表情からBABYMETALは新たなストーリーを歩んでいくことになるのだろう。かわいい、かっこいい、その先の道なき道が薄っすらと浮かび上がる瞬間だった。
「すっげぇもん観た。」としか言えない。
終演後は誰かに話そうとも「いや〜……」としか声が出ないくらい余韻にヤラれてしまった。心が震えているのを実感する。

SU-METALの覚醒によってあまり取り上げられなかったシーンは、『メギツネ』でYUIMETALが手拍子を促しながら「タン、タン、タン、タン」と呟く口の動き。この緩さがSU-METALが醸し出す緊張感とのギャップが凄まじく、MOAMETALの満開の笑顔はもちろん、このグループは相変わらず両極端の魅力がいつだって共存している。
とはいえ、これが完成ではない。きっと、この先今日を振り返った時にそれが分かるのだろう。

今日までBABYMETALが好きでよかった。もちろんずっと、これからも。


 (BABYMETAL 公式Twitterより)


BABYMETAL WORLD TOUR 2016
TOUR FINAL AT TOKYO DOME
LEGEND - METAL RESISTANCE -BLACK NIGHT-
2016年9月20日(火)


01:BABYMETAL DEATH
02:あわだまフィーバー
03:ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト
04:META! メタ太郎

05:Sis. Anger
06:紅月-アカツキ-
07:おねだり大作戦
08:NO RAIN, NO RAINBOW
09:ド・キ・ド・キ☆モーニング
10:メギツネ

11:ヘドバンギャー!!
12:イジメ、ダメ、ゼッタイ


過去のライブレポートはこちらをご覧ください。

2016年9月19日月曜日

BABYMETAL WORLD TOUR 2016 TOUR FINAL "LEGEND - METAL RESISTANCE -RED NIGHT-"「やがてその虚構が現実に覆い尽くされる。」



いよいよこの日がやって来た。

「この日まで絶対に生きよう」そう思うものなんて他にない。この日を逃すわけにはいかない。昨年12月、横浜アリーナで見た"TOUR FINAL at TOKYO DOME"の文字。まるで現実感がなかった。遠い未来の話のように思えた。それでもその日はやって来る。9ヶ月の時を経て、大きな音を立てて、街を食いつぶすように、BABYMETALがついに東京に舞い戻ってきた。

それは完全に非日常だった。巨大な円柱のステージを取り囲むように客席が広がり、5万5千人が皆フォックスサインを掲げる。入場時に配られたクリスタルのコルセットが『THE ONE』で一斉に光が与えられる。その光に照らされ、回転するステージで3人が思い思いの表情を見せる。
ある者は笑い、ある者は泣き、またある者はその光景を目に焼き付けようとする。三者三様であると同時に三位一体でもある。
生身の少女たちが完全体のフィクションを作り上げる、東京ドーム2Daysの第一夜 - RED NIGHT。新衣装はついに赤を無くした。黒と金で覆い尽くされた。赤に別れを告げるように、立派なお墓を建てるように、円柱ステージが荘厳な佇まいで人々を圧倒していた。
ここに来ても現実感がなかった。それでも全身に浴びる音、熱、光すべてが生々しく、いまだに足のつま先から頭のてっぺんまで焼き付いている。これが現実世界であることを示すかのように。

BABYMETALは長い長いワールドツアーから帰ってきた。世界各国の様子をリアルタイムでネットウォッチし、深夜から朝方まで時差を超えた熱狂を眺めていた。
アメリカツアーで全会場がソールドアウト、SU-METALの変顔、雨の中のダウンロードフェス・イギリスの大成功、MOAMETALの変顔、「AP Awards」にてロブ・ハルフォード(ジューダス・プリースト)との奇跡の共演、YUIMETALの変顔……
話題が尽きなかった。ライブ中、メンバーが向き合うたびに変顔を繰り出すという余裕と、遊び心と、無邪気さに力強いものを感じていた。日本人未踏の"道なき道"を突き進む、その過酷さを一切感じさせない。いつだって最高の結果だけを残す。「顔で笑って 心で泣いて」と『メギツネ』の歌詞にあるように、どんな時でも優雅に魅せ続けるチームBABYMETALの心意気をそれぞれの面白い顔から感じ取っていた。

そして、 この場所は言い過ぎではなく"約束の地"だった。




2015年1月のさいたまスーパーアリーナ『新春キツネ祭り』、6月の幕張メッセ『巨大天下一メタル武道会』、12月の横浜アリーナ『THE FINAL CHAPTER OF TRILOGY』の三点が結びつく三角形の中心が、BABYMETALのシンボル"THE ONE"の目の位置が、まさか東京ドームだったなんて。
しかもSaitama=S、Makuhari=M、Yokohama=Yとメンバーそれぞれの頭文字を表している。「すべてはキツネ様のシナリオ通り」。そんなエヴァの逆三角形の組織のセリフが聞こえてくる。

9月19日、東京ドーム。台風が日本列島に接近している。雨の中、傘と傘がぶつかり合い、スタッフが大声で呼びかけている。自分の入場する11ゲートはJR水道橋駅から遠く、傘をさしてもずぶ濡れになるような降水確率のもと、1時間近く長い長い行列に立った。
それにしても、人、人、人。赤と黒で埋め尽くされたドームシティは異様な空気感が漂い、観光客を脅かす。海の向こうから来たファンの姿をたくさん見かける。海外の掲示板によると、アルゼンチン、オーストラリア、カナダ、チリ、中国、チェコ、フィンランド、フランス、イギリス、ドイツ、インドネシア、アイルランド、イタリア、メキシコ、マレーシア、オランダ、スウェーデン、アメリカなどから来ているらしく、一番遠くてブエノスアイレス。その距離はなんと20,438km。そこまでして観に来る理由がBABYMETALにはあるのだろう。





開場が始まる。なぜか拍手が巻き起こる。顔認証を終えると、クリスタル(透明)のコルセットが配られる。そのアナウンスが始まると、「おぉ〜」と歓声が。
コルセット中央に東京ドームを模した固形物が封入され、そのバックプリントはこの日のイベントが記されている。これは一体何なんだろう。「?」という感情を抱えたまま、東京ドームの中へ。
「でっ、でっけぇ……」
東京ドームに来たのは初めて。33年間生きてきて、ドームコンサートを経験したことがない。いつもライブハウス〜アリーナレベルで、ロックフェス以外ではこのような大規模なライブは初めてだ。
それにしても、でっけぇ。中央の暗がりに円柱のステージが立ちはだかり、そこから三方向に長いステージが枝分かれしている。Aブロックの前方の座席から、あと一時間後に広がる光景を想像する。心拍数が上がっていく。低気圧でヤられた精神が徐々に回復していく。整骨院でもないのに首にコルセットを巻き始める。やがて、会場内でスタッフが拡声器でアナウンスする声が聞こえる。
「携帯電話やサイリウムなどの使用は禁止されています。光り物は入場時にお配りしたコルセットのみになります。」
「えっ、光るの?」
『シン・ゴジラ』の内閣府特命担当大臣が放つ「えっ、動くの?」同様、気の抜けたリアクションをしてしまう。後にBABYMETALの公式ツイッターでも画像付きでコルセットを巻く方向をアナウンスされる。


BABYMETAL公式Twitterより)


剃り残しが気になる。首の準備ができていない。

全身骨タイツのスタッフ・通称:骨さんが数人でフラッグを持ち歩き、各ブロックごとにヘドバンを促して熱を上げていく。開演の18時前になると、5万5千人がほとんど着席している。さあ、BABYMETALを迎え入れる準備はできている。

いよいよ!
会場が暗転する。円柱ステージ上部の360度電光板がプロデューサー・KOBAMETAL(全身骨タイツ)の姿を映し出す。「諸君、首の準備はできているか?」恒例の挨拶が始まる。もちろん、でも公式Twitterの画像の人は(清潔感の意味で)首の準備ができていなかった。首に巻くコルセットの案内や、この2日間で全ての調べを演奏することが告げられる。これまでにリリースした2枚のアルバムから、一度鳴らした調べは二度鳴らされることがないという。つまり、今日披露する曲は明日鳴らない。BABYMETALの集大成を東京ドーム2Daysに凝縮しようとしている。
オープニングムービーは「METAL RESISTANCE : EPISODE 4」の文字が浮かび上がり、『インデペンデンス・デイ』の巨大宇宙船を模したTHE ONEのシンボルマークが東京の街を覆い尽くす。『シン・ゴジラ』のパロディも盛り込まれる。さすが赤と黒同士、無視するわけがないと思っていた。毎度のことながら、有名映画のモチーフと時事ネタの扱いは健在だ。

赤い照明がサーチライトのように、四方八方を"RED NIGHT"の文字通りに赤く染める。この音は、この静けさは。これはまさか。と、光が一斉に円柱ステージに集まると、ついに本日の主役が姿を現わす。
『Road of Resistance』の始まりとともにBABYMETALがそれぞれフラッグを背負い、円柱ステージの頂に立ちはだかる。月面に降り立つかのように、フラッグを東京ドームに刺す。ゆっくりとその文字を広げる。"BABYMETAL" それは5万5千人が今求めているもの。その答えを示すように、自信に漲ったSU-METALの眼差しに鳥肌が立つ。
SU-METALが客席を割くように両手を広げるが、今日は残念ながら全席指定。ウォール・オブ・デスもサークルモッシュも発生しない。が、そんなことよりも心が今SU-に裂かれ、掻き乱されている。身体の中で暴れている。コルセットが矯正器具に思えてくる。エネルギーが体内に蓄積されていくのだ。
神バンドが一階で音を鳴らし、3人が最上階でパフォーマンスする。いきなりクライマックスだった。シンガロング付近になると、3人は一階に降りてくる。さすが5万5千人の歓声は地鳴りように響き渡り、その声のせいかMOAMETALの感極まった表情が大画面に映る。涙を拭う姿にもらい泣きし、この日が特別なものになることを予感させる。すでにライブ終盤かと錯覚してしまうほど、バトルフィールドと化した円形ステージと、壮大な声と声の掛け合いに、興奮度は臨界点を突破している。

ここから「MCもなければアンコールもない」お決まりのオープニングムービーの宣告通り、ノンストップのメタルレジスタンスが繰り広げられる。
『ヤバッ!』でステージが回転し、360度どの方向も差別なく観客と向き合い、それぞれの視線を共有していく。サビの「ヤバッ!」で静止する振り付けは大胆で、一番盛り上がる場面で緩急を余す所なく表現する発想に改めて心を打たれる。その後、/(`ω´)\みたいな表情で手をバタバタさせる仕草に心を奪われる。つまり、心が弄ばれている。ヤバッ!はこっちのセリフだ。

『いいね!』は恒例のレーザービームが東京ドームの至る所に放射し、突如としてダンスフロアと化す。コールアンドレスポンスは、やっぱり「東京ドーム!」。この人数のヘドバンは壮観で、整然と並ぶ客席から繰り出す両腕が美しく、健康的な宗教の儀式としか思えない。
聴き覚えのあるリフが何度も繰り返される。ヒントのような一節に「おお……」と言葉にならない感嘆が漏れ、その答えが光とともに姿を現わす。『シンコペーション』の全貌をとくとご覧あれ、とも読み取れるような、答えがいつだって一つであるかのような。そんなSU-METAL、YUIMETAL、MOAMETALの表情が噛み付いてくる。「回れ 回れ この世界から」で身体を軸に片腕を回す。そのあまりのかっこよさに、モッシュピットでもないのにすでに身動きが取れないでいる。

切ないピアノのメロディが鳴る。"RED NIGHT"を裏切るように青い光が覆い尽くす。『Amore -蒼星-』は映像の中でSU-METALの姿に大きな翼が重なり、まさしく翼を授かったように彼女の歌声が羽ばたいていく。ステージの頂点に佇むその姿は肉眼では確認できず、360度電光板の画面でしか見ることができない。こんなに近くにいるのに、遠く感じる。それは、同じ日本人であるはずのBABYMETALの世界的活躍にずっと感じてきたことでもある。
これが世界規模だ。世界レベルだ。その説得性に富んだ歌声でしかなかった。風が吹くように透き通るようで、炎が舞い上がるように熱くもある。大気中、人に必要な酸素全てを掴み取るような歌声に酔いしれる時間になる。
『GJ!』はお決まりの三三七拍子が鳴ると、5万5千人が一斉にその調子に合わせる。YUIMETALとMOAMETALの美しいシンメトリーが、鏡を合わせたかのような双子感が、乱雑する東京の街で失われつつある美的センスをくすぐる。それと相反する形で「もっともっとホラ」と煽りに応えるように、全席指定の客席が少しずつ乱れていく。

二重に回転するステージで、SU-METALと神バンドが逆方向に動くことで何度も交差する。ブレイクするシーンは映像がモノクロになり、全身を硬直させる。そんな『悪魔の輪舞曲』が終わると、シリアスな雰囲気を一転させる『4の歌』へ。
神々しい回転ステージが一挙にメリーゴーラウンドと化す。MOAMETALのえくぼたっぷりに、YUIMETALが目を細めて笑い、こちらも笑顔が止まらない。各ブロックがテロップによってそれぞれ勝手にチーム分けされて、自分のいるAブロックがなぜか「幸せの4」チームと名付けられる。うん、その名の通りだ。だって、YUIMETALが「みんな幸せ〜?」と尋ねながら枝分かれしたステージを歩いて近づいてくるんだもの。はい、答えは一つしかありません。
彼女たちが目の前から去っていく時に一抹の寂しさを覚えるが、心臓が止まりそうになった瞬間を目の当たりにした。MOAMETALが「次はこっちだよ〜!」と煽ると、一緒に歩いているYUIMETALが「うわ〜〜い!」みたいなテンションでぴょんぴょん飛び跳ねるのだ。あれは何なんだ。なす術がなくて姿勢を正した。楽しそうな笑顔で"幸せの4"になり果ててしまった。

神バンドのソロが始まる。枝分かれした長細いステージにそれぞれ大村氏、藤岡氏、BOH氏が煽るように観客に近づき、その名に相応しい"神"テクニックで盛り上げてくる。BABYMETALの3人とともに歩んできたワールドツアーの最終地、東京ドーム。決してバックバンドではなく、必然的なその存在感から3人がいなくても会場全体がヒートアップする。
「はいっ!はいっ!」という掛け声とともに再び姿を現した3人が、「ワン、ツー、ワンツースリーフォー」と合図する瞬間がBABYMETALのライブで最も心拍数が上がる瞬間だ。ここからかくれんぼが始まる。『Catch me if you can』は5万5千人に随時見つかっている。広いステージを堪能するかのように、いつもはその場で走る振り付けが、今日は本当に走っている。それぞれ三方向に散らばり、「とっておきの場所を発見♪」も「やだドキドキとまんなーい♪」も距離が離れた所で繰り出される。それでも"離れていても心はひとつ"なのか、サビになると3人が集まって"ぐるぐるかくれんぼ"を開始する。

「ギブミー...」と何度も呟かれ、映像の中でそのテロップが振動する。「チョコレート」と続きが呟かれると、爆発するように『ギミチョコ!!』へ。
現在(9月20日)YouTubeの再生回数が6,000万回に近づき、アメリカの人気番組「The Late Show」で披露され、世界進出の大きな名刺となったこの曲はリリースから2年半経っても色褪せない。間奏で3人が一度散らばり、再び中央に集まるシーンでステージが広いせいかSU-METALが焦った表情で駆け付けていた。ぶっちゃけると間に合ってなかった。頰をぷくっとさせて照れ笑いし、若干センターから外れた状態で踊り始める姿から、あんなにかっこいいのに自転車に乗れない。靴ひもが結べない。部屋でネギを栽培する。そんな"中元すず香"の側面が垣間見える瞬間が微笑ましい。

そんな可愛さから一転し、『KARATE』は勇ましい表情が目に飛び込んでくる。3人はヒロインそのものだ。いつだって少年にさせてくれる。年下の女の子というより、年上の女性として見える瞬間がたくさんある。
間奏でSU-METALが英語で観客に呼びかける。5万5千人の掛け声にまたしてもMOAMETALが感極まる。彼女の表情はいつだって観客の呼応に結びついているように思う。パフォーマンス中に客席の至る所に視線を配る、いわゆる"爆レス"をするのも、与えるべき人がちゃんと見えている所以だろう。首を差し出す相手に深々とお辞儀し、正々堂々と己の道を突き進む。決して他人と比べない。それはさくら学院のブログ『学院日誌』で菊地最愛として最後に書いた一文にも込められている。そのかわいさは信念に基づき、確固たる芯がある。だから、ここまで胸が締め付けられるのだろう。

ついに物語はクライマックスへ。ムービーが始まると、コルセットを付けることで時の方舟に乗り、"El Dorado"に辿り着けるというナレーション。"Tales"と、"Destinies"と、"THE ONE"。予感せざるをえない単語が散りばめられる。そしてメタルオペラというべきか、ある一つのリフで二つの曲が結びつき、あらゆる感情を掻き混ぜながらエンディングに向かっていく。

初披露となる『Tales of The Destinies』。息が詰まりそうになる。その凄まじさに微動だにできず、地蔵になってしまった。

間違いなく今日のハイライト。あの演奏を再現する神バンドの技量と、数秒ごとにカワイイとカッコイイの両極端を行き来する3人に表現力に度肝を抜かされる。喜怒哀楽を、音楽性の振り幅を、少女と女を。ありとあらゆるアンビバレンツが共存し、BABYMETALでしか出来ない表現が盛り込まれている。
何と言っても最大の目玉は、YUI&MOAがオモチャの人形のようにピアノを弾くような振り付け……周囲から悲鳴のような雄叫びが聞こえた。分かる。分かるよ。殺しにかかっているよね。「デカい」「スゴい」「ヤバい」と語彙を無くす。「かわいい」に至ってはあまりの強度に「かっ…」とため息になる。いくら大人ぶっていても、ここでは素直になってしまう。

会場が暗くなると、コルセットが白く光り出す。どよめきが走る中、何度も点灯・消灯を繰り返し、会場全体が淡く照らされる。
過去に巨大女神像崩壊(幕張メッセ・イベントホール)、回転するステージ(日本武道館)、赤い太鼓橋(さいたまスーパーアリーナ)、浮かび上がるステージ(幕張メッセ・展示ホール1〜3)、空中ゴンドラ(横浜アリーナ)とあらゆる演出が施されてきたが、BABYMETALがついに観客自身を演出に取り込んだ。
観客一人一人が演出の一つになり、今まであの曲で何度も囁かれていた"光"の意味がここで明かされる。
さあ、3人を迎え入れる準備はできた。最後の曲は『THE ONE』。それは奇跡のような光景だった。

Aブロックの目の前の長いステージにSU-METALが突然姿を表す。三方向にそれぞれ3人が登場し、ゆっくりと中央の円形ステージに歩み寄る。やがて5万5千人の光がBABYMETALを照らす。光の海に浸かるようにそれぞれの表情が煌めいていた。
東京ドーム中を見渡し、無数の光を前にSU-METALはパカッと口を開けて笑って、YUIMETALはしみじみと泣きそうで、MOAMETALはその光景を目に焼き付けているようだった。
三者三様にその表情は別々でも、三位一体にその姿は重なり合う。金色が混じった黒装束に身を包んだ3人は指先一本に魂を込めるように、宝物に触れるように、人差し指をゆっくり上げる。それに倣って客席から指を差し出し、溢れ出す想いを指先一本に込める。
まるで宇宙空間だった。地球の外側から世界を旅していた。これがBABYMETALから見える景色なのだろうか。
YUIMETALの瞳が潤んでいることで、こちらの視界も滲んで大変だった。「首に巻いたコルセットが光る」という割とシュールな出来事なのに、ここまで劇的なシーンに見えるなんて。

『THE ONE』が鳴り止み、コルセットの光が消える。物語は爆竹音によって終わり、次章へと続く。明日の東京ドーム第二夜"BLACK NIGHT"の告知で赤い夜は明けていく。

"BLACK NIGHT"の告知が表示されている中、ライブで再現化を心待ちにしている『From Dusk Till Dawn』が退場BGMに使われていた。これは単なるBGMとして使われていたのか、それともこの曲が明日の鍵を握るのか。後者に期待したい……。

日常では決して体験できない。非日常でしかなかった。それでも体験したことは日常と地続きで、生身の少女たちが表現したものを確かに受け取っている。

圧倒的なフィクションを観た。BABYMETALは明らかに「作られた」ものである。
キツネ様という神様、"新しいメタルの誕生を意味する"BABYMETALという名、そしてメタルレジスタンスという壮大な物語。
YUIMETALがスレイヤーのケリー・キングに影響を受けて、「YUIMETALになり切ろうと思いました」と発言するように、彼女たちはそれぞれ中元すず香、水野由結、菊地最愛という"世を忍ぶ仮の姿"を捨て、BABYMETALというストーリーの登場人物になり切っている。
だから映画のようにスクリーンの幕を一つ隔てたような、『いいね!』の歌詞の通り「現実逃避行〜♪」が許される非日常の世界だ。

しかし、そこで繰り出す笑顔や、潤んだ瞳や、拭う涙は、あまりにもノンフィクションだ。

作られたもの、作られないもの。

『シン・ゴジラ』よろしく"虚構VS現実"のその二つを行き来することで、特別な感情をたくさん得ることになる。

巨大な円柱ステージ。次々と噴き上がる火柱。壮大なスケールの物語。そこで戦う少女たち。BABYMETALはいつも少年心をくすぐる。それはかつて映画館で出会ったヒーローのように、宇宙船のように、巨大不明生物のように、心を躍らせてくれる。それらと一線を画すのは、彼女たちは目の前にいる。実在している。スクリーンを突き破り、フィクションでしかない物語をノンフィクションに変えて、虚構と現実を掻き混ぜる。
そこから、いまだかつてない希望が見えてくる。日本人未踏の"道なき道"を進むのは決して容易くない。全てが迎え入れられているわけではないからこそ、BABYMETALにはいつも勇気をもらっている。新しいことをチャレンジすることにおいて、いつも力強く背中を押してくれるのだ。
やがて、その虚構が現実に覆い尽くされる時が来る。その巨大宇宙船は、巨大不明生物は、この先何十年経っても姿を消すことなく現実にその大きな存在を留めるだろう。

さあ、これから何が始まるのか。
"BLACK NIGHT"から、BABYMETALの新たな伝説の幕開けを目撃したい。




BABYMETAL WORLD TOUR 2016
TOUR FINAL AT TOKYO DOME
LEGEND - METAL RESISTANCE -RED NIGHT-
2016年9月19日(月・祝)


01:Road of Resistance
02:ヤバッ!
03:いいね!
04:シンコペーション
05:Amore - 蒼星 -
06:GJ!
07:悪夢の輪舞曲
08:4の歌
09:Catch me if you can with Kami band intro
10:ギミチョコ!!
11:KARATE
12:Tales of The Destinies
13:THE ONE


過去のライブレポートはこちらをご覧ください。

2016年4月21日木曜日

BABYMETAL - APOCRYPHA Only The FOX GOD Knows@新木場STUDIO COAST 「BABYMETALは本当にいた!」



「本当にいた!」…なんて当たり前のことを言いますが。

この感覚は約5ヶ月間のブランクがそうさせたのか、彼女たちの海外での活躍がそうさせたのか。昨年12月末以来、久しぶりに目にした光景が気を動転させたのか。登場した時の恍惚感が計り知れず、"当たり前"を疑ってしまった。
BABYMETALと書かれた旗を手に持ち、後光がそれぞれのシルエットを浮かび上がらせる。3人は静かに前に歩み寄り、旗を靡かせる。それは革命児のようであり、まるで月面着陸のように記録を塗り替える彼女たち自身を象徴するかのように。

「ほ、ほ、本当にいた…!!!」

ライブビューイング、YouTube、Twitterを介することで、遠く離れた異国の地で活躍する姿を見てきた。だからこそ、この目でBABYMETALを観ることの感激を改めて味わえたのかも知れない。
中学生の頃、地元・兵庫県で初めてザ・イエローモンキーのライブで「ライブ」というものを初めて体験した時を思い出す。あの頃、神戸がまだ"被災地"と呼ばれていた。半壊した神戸国際会館の代わりに仮設ホールで開催され、「がんばろう神戸」のスローガンはこの時ばかりは置いといて、今までテレビやビデオで観ていた好きなバンドを初めて生で観ることで「イエモンは本当にいた」というスローガンが脳内で掲げられた。それはガガーリンの「地球は青かった」と同じくらい免れない真実で、感動を伴うものだった。

熊本で大きな地震が起き、"自粛"について色んな意見が交わされている。ロンドン・ウェンブリー公演のライブビューイングからたった数週間で、世の中が混沌とした。
21年前、故郷の明石で震度7を体験した。不安で夜に寝付けなかった小学生の頃を思い出す。インターネットも携帯もなかった時代、テレビだけが娯楽だった。でも、そのテレビが全てのバラエティ番組を自粛して同じようなCMを流し続けた。いつも笑っている人が急に笑わなくなったような衝撃を受け、子どもながらに恐怖心を煽られた。
テレビも大人たちも街の風景も様変わりしても、何一つ変わらず傍に居てくれたものがあった。それは音楽だった。何が起きても歌詞も音も変わることなく枕元で囁き続けてくれて、ヒーローのように頼もしかった。
何が正解なのかは分からない。ただ一つ言えることは"自粛"で全てが変わってしまっていたら、あの頃子どもだった自分は壊れていたかも知れない。
BABYMETALの今年初の国内ライブシリーズ『APOCRYPHA - Only The FOX GOD Knows -』、新木場STUDIO COAST 2Days。"THE ONE"会員限定イベントの2日目、4月21日。
そこで鳴らされた音は、魅せられたダンスは、囁かれた歌は、あの頃に感じた"音楽"のように力強かった。


昨年は落選続きでキツネ様に見放されたと落込み続けたが、今年は奇跡的に当選した。キャパ2000人台×2日間だと行きたくても行けない人で溢れ返り、素直に喜んでいいのか迷ってしまう。抽選結果が来るたびに、宇多田ヒカルの『誰かの願いが叶うころ』が頭の中で再生される。「みんなの願いは同時には叶わない」…。
整理番号が2000番近いため、17時半過ぎに会場に。雨風が強く、傘をまともに差せない。春雨といった風情は一切感じられず、凍えるくらいに寒い。そんな悪天候でも、STUDIO COASTの看板に"BABYMETAL"の文字を見つけると気分が上がる。

顔認証を終えて会場に入ると、Bring Me The Horizonの最新アルバムの楽曲が聴こえてくる。本当だったら2ヶ月前、ここで来日公演を観る予定だった。その悔しさが押し寄せてくるのを紛らわそうと、セッティングされた薄暗いステージを眺める。
番号的にフロアの階段付近が限界だったが、ここだとステージ全体を見渡せる。開演が刻一刻と迫るにつれて心拍数が上がり、このステージが明るくなる時を想像する。

やがて想像から現実へ。真っ暗になり、ステージ後方にオープニングムービーが映し出される。
ロンドン・ウェンブリーアリーナから始まった"鋼鉄の旋風"こと、メタルレジスタンス第4章。それが日出ずる国=日本に舞い戻り、渋谷(DRAGONFORCE)、両国(IRON MAIDEN)、新木場(BABYMETAL)で時を同じくして同時多発的に炸裂することを告げる。それは三者三様の旋風を巻き起こす。それぞれ場所は違っていても、
「離れていても心はひとつ」
ここでそのフレーズを出しますか。BABYMETALのムービーでさくら学院に歩み寄るのが久々に感じる。『ハートの地球』に込められた想いは『THE ONE』に近い。その精神が今でも当然のごとく基盤となっていることを示し、昨今のテレビ番組等でのBABYMETALの紹介でさくら学院が一切語られない現状を打ち消すかのようだった。

ムービーが終わる。それは目の前に現れた。

「ほ、ほ、本当にいた…!!!」

『Road of Resistance』が鳴り出すと、旗を持った3人が後光を浴びてステージに登場する。ゆっくりと前に歩み寄り、一切目移りすることなく真っ直ぐ一点を見つめた目線。サッと旗をなびかせて、この地を占領するかのごとく"国旗"を立てる。ロンドン・ウェンブリーでワンマン公演、アメリカのTV番組『The Late Show』出演、ビルボードチャート40位以内が坂本九以来53年ぶり…この数ヶ月間で旗に込める意味を広げ、休む暇なく爆音を浴びることで現実から程遠い場所に誘ってくれる。

BABYMETALは本当にいた!日本に帰ってきた!

今までたくさん観てきたはずなのにその記録が真っさらにされ、全てが上書きされる。SU-METALが両腕を左右に動かし、モーセの十戒のごとく客席を割る。ウォール・オブ・デスの準備が整う。ドラムが撃たれると、たちまちモッシュッシュピットは荒れ狂う。
この曲が1曲目からだと、その後ずっと旗がステージに掲げられているのが景色として美しい。『ド・キ・ド・キ☆モーニング』『いいね!』と1stアルバムから立て続けに披露される。そのレパートリーの豊富さからか、曲が始まった途端に今までと違って客席のどよめきが大きい。「まさかこの曲を!」そんな心の声が「おーーー!」という地鳴りのような歓声から聞こえてくる。
「しーんきばっ!」「しーんきばっ!」
曲中のコールアンドレスポンス。先ほどまで鬼神のような表情を見せていたSU-METALが、この時ばかりは自転車に乗れない中元すず香に切り替わる。が、その途端に咆哮し、"世を忍ばない真の姿"に変身する。

約5ヶ月ぶりに観る3人は、たった3曲だけでもその進化を隅から隅まで感じさせる。昨年12月末の横浜アリーナで「これ以上ねぇよ…」と遠くの空を見つめて涙を流したくなったが、「これ以上」をあっけなく超えてくる。『あわだまフィーバー』でにこやかに足をバタつかせながら両腕で輪を作る。YUIMETALとMOAMETALを見るとたとえ心がどんなにトゲトゲしていても、破顔一笑を余儀なくされる。
"かわいい"の感性は個人差がある。自分がかわいいと思うものを他人もかわいいと思うとは限らない。だが、BABYMETALはそこに"かっこいい"という全く別の要素をぶち込むことで"かわいい"に相乗効果を生む。本当にかわいいと思っているくせに「いやいや、かっこいいんで」と言い訳も作ってくれる。が、それはすぐさま見透かされる。だって、サビで何度もSU-METALが煽るんだもの。しまいには「歌って〜!」なんて言われるとそりゃまぁ、「かわいい」としか言えない。

待ってました。三三七拍子が聴こえてくる。「うわぁ!」つい声に出してしまった。ステージが照らされると、YUIMETALとMOAMETALが左右に身体を振り、リズムに合わせて手を叩く。会場全体が同じ動きになり、体温が完全に高まったら『GJ!』が軽快に打ち鳴らされる。
ウェンブリー公演のライブビューイングを観ながら、どれだけスクリーンの中に飛び込みたかったか。ここはもはや映像の中だ。この目でそのパフォーマンスを観る。この耳でその音を聴く。ズームもスイッチングもないが、その存在がどんな映像表現にも勝る迫力なのだ。2人のラップメタルが炸裂する。全てを忘れて踊りたいが、一瞬でも見逃すまいと静止したくもなる。モッシュッシュピットは容赦ない。歌詞の通りにSO SOな咆哮で押し合い!へし合い!おしくらまんじゅうでバーン!バーン!バンバン!一斉に何人も"世間の荒波"をサーフで泳ぎ、ダイブ!ダイブ!ダイブ!する。
ステージに中央に鏡でも置いているかのように、YUI&MOAの統一感に満ちたシンメトリーのダンスが美しい。見事なキレっぷり。キレッキレの動きで風を切り、「もっともっとホラ」と何度も煽られてフロアは上下・左右・前後不覚の混沌を極めていく。

昨日の1日目のセットリストと対になっているのか、SU-METALは昨日披露した『Amore - 蒼星 -』ではなく、今日は『紅月-アカツキ-』で攻める。
この2曲のように、二三四拍子の『4の歌』と三三七拍子の『GJ!』、時間帯が正反対の『ド・キ・ド・キ☆モーニング』と『ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト』、チョコの『ギミチョコ!!』とガムの『あわだまフィーバー』のお菓子シリーズ、そしてウォール・オブ・デスが発生することにおいて『Road of Resistance』と『イジメ、ダメ、ゼッタイ』はそれぞれ対になる。BABYMETALは2部作構成が多いのが面白い。昨日と今日でまた違った側面が楽しめる。
「アカツキだーーー!」
この叫びに何度奮い立たされたらいいのか。サークルモッシュが起きて驚いた。ドラムに合わせると首を激しく振りたくなり、歌に合わせるとしみじみと聴きたくなる。様々な味わい方がある。ふと目を閉じると、CDの音源と同じかそれ以上のクオリティの歌声に圧倒される。かわいい曲はかわいく、かっこいい曲はかっこよく。それは自分の部屋でネギを栽培してお姉ちゃんに怒られる中元すず香の面影を完全に無くす。

神バンドのソロの後は『Catch me if you can』。今や世界中に見つかっているくせに"かくれんぼ"が始まる。
「まーだだよ!」「もーいいよ!」ステージでかくれんぼをする3人。"ぐるぐるかくれんぼ"の歌詞の通りにサークルモッシュが至るところで発生する。
こないだの4月16日、チャールズ・チャップリンの誕生日に彼の作品を見返した。中学生の頃からチャップリン映画に没頭した自分にとって、BABYMETALのパントマイム的な振り付けに魅力を感じているのかも知れない。かくれんぼしたり、チョコ食べたり、カラテしたり。そうしたボディーランゲージな振り付けが言語の壁を取り払い、色んな国の子どもたちまで踊らせてるんだろう。
MCが一切ないライブは無声映画のようだ。チャップリンが英語圏のみならず世界中の人々を虜にしたのは、無声映画の中で繰り出される滑稽なようで切なさを滲み出すジェスチャーと、人の心に訴えかけるテーマが分かりやすかったからだろう。
楽曲のキャッチーな部分とコアな部分だけでなく、振り付けの"分かりやすい"と"難しい"の振り幅もある。一見簡単そうで真似しやすいダンスが「踊りたい!」って気持ちにさせてくれるが、それは藤子・ F・不二雄の絵のようにいざ描いてみると難しい。途端にアグレッシブなパフォーマンスに切り替わり、真似しようにも全然ついていけない。誰も同じようなドラえもんを描けない、でも描きたくなる魅力がBABYMETALにあると思う。

やって来ました、この時間。『META!メタ太郎』が始まるとこの日一番の歓声が鳴り響く。まるで待ち焦がれたヒーローを迎え入れるかのごとく、空を飛ぶようなYUIMETALとMOAMETALの振り付けに見惚れる。
客席ではメンバーの動きに合わせて敬礼のようなポーズが完璧に揃い、それが後方から観ると壮観だった。さらに助奏のメロディに合わせて「お〜お〜お〜♪」と低い声でコーラスが鳴り響いたり、この曲のおかげでライブの楽しみ方の幅がグンと広がっているように思う。大人たちが一斉に子どもに戻り、デパートの屋上ではなくSTUDIO COASTのヒーローショーを楽しんでいる。一挙に何十歳も若返らせる行き過ぎたアンチエイジングで、四方八方見渡すと大人たちの目が全員輝いている。

「き〜つ〜ね〜 き〜つ〜ね〜♪」このイントロが鳴り出すと否応なく身体が反応し、幾ら階段付近の客席後方にいたとしても温度差はなく、自分含めて周囲の人全員が『メギツネ』で「それっそれっそれっそれっ!」と踊り狂う。
キツネのお面で顔を隠したSU-METALにMOAMETALが変顔で笑わせるのが恒例となり、遠方であるがそのマンガのように曲がった口を確認できた。いわゆる"顔芸"と呼ばれるアクションはMOAMETALにしか許されない飛び道具で、彼女のありあまる表現力が垣間見れる瞬間だ。投げられたお面が客席から伸びた手で跳ね返り、ステージへ。YUIMETALがしゃがんでそれをサッと除ける。インタビュー映像などで彼女だけいつも動作が遅れる通称"ゆいラグ"を払拭するのかのごとく、この時ばかりは咄嗟の判断力。一連の出来事のせいか、モッシュッシュピットはますますヒートアップする。

『KARATE』は初めて聴いた時は「セイヤ セ セ セ セイヤ」の歌い出しからズッコケたが、今や涙なしでは観れない歌になった。
何度も聴いていると生活に馴染んでくる。彼女たち自身を歌っているようにも、直球の応援歌にも聴こえる。間奏で3人が手を取り合って互いに寄り添う姿は、観る人聴く人それぞれの姿に例えられる。MOAMETALがこの曲について「カラテは武道の中で唯一受け身がなく、突き進んでいく自分たちにぴったり」という風にコメントしているが、全てが何一つ困難もなく上手くいくとは限らない。2年前、YUIMETALの転落事故が起きた日本武道館の『天下一メタル武道会ファイナル』のその"武道会"が"空手"に繋がっているようにさえ感じてくる。あの時のようにどこかで受け身が必要になる時が来るかも知れないが、その時こそ間奏の3人の姿がより一層ドラマチックに見えるのだろう。

久々の『ヘドバンギャー!!』で存分に首を振り、終わるとステージ後方に映像が映し出される。
メタルレジスタンス第3章『キツネ祭り』『巨大天下一メタル武道会』『THE FINAL CHAPTER OF TRILOGY』の3部作とロンドン・ウェンブリー公演の写真が映し出され、この1年間の軌跡を振り返る。でも、これは奇跡ではない。ちゃんと今に裏付けされる階段を昇ってきたからこそ、運命に身を任せた物語ではないことを証明する。少しずつ実力を高めていき、3人が歩んできた道なき道を示す映像に胸が熱くなる。
その胸の鼓動が最高潮に達した時、『THE ONE』のイントロが鳴り出し、黒装束を身に纏った3人がステージに現れる。

それはウェンブリーアリーナのような大きな会場ではなくても、歌が持つ壮大なテーマがSTUDIO COASTのキャパを何倍にも広げてくれるかのようだった。
英語Ver.の歌唱はこれから始まるアメリカツアーへの決意表明なのだろうか。YUIMETALとMOAMETALが両手で作り出すトライアングルのように、一切ブレることないSU-METALの歌声。MOAMETALは口を動かして歌っているように見えた。客席ではフォックスサインが幾つも掲げられ、ここに世界各国の旗がなくてもその先の光景が浮かび上がるような美しい景色だった。
ただ、自分含めて観客が彼女の歌声に倣って「ららら〜ら〜♪」と歌うのはキーが高すぎて難しい。周囲のところどころから「ら゛ら゛ら゛ぁぁあああーーー!ら゛ぁぁあああーーー!」と目をひんずり剥くような金切り声が聞こえた。ステージは天国絵巻だが、客席は地獄絵図のようだった。あまりの苦しそうな歌声につい笑ってしまった。SU-METALがいかにこれを当たり前のように響かせているか、己自身に限界を感じるのと同時に身に沁みてその凄さが分かった。

演奏が鳴り止むと、ステージ後方の映像にメタルレジスタンス第4章のライブスケジュールがスクロールされる。アメリカやヨーロッパの各地から、日本の4大フェス、そして東京ドームまで。
BABYMETALは日本人未踏の地へ突き進む。

"Whenever we are on your side, Remember always on your side Forever..."

この言葉とともにTHE ONEのシンボルマークが浮かび上がり、『APOCRYPHA - Only The FOX GOD Knows -』は幕を閉じる。
去り際にいつもの「See You!」の挨拶がないのは珍しく、これもまた余韻が残る終わり方で胸に迫る。

定番の『ギミチョコ!!』と『イジメ、ダメ、ゼッタイ』がなくても、ここまで満足感を得られるものか。アルバム収録数と同じ12曲は新旧が織り交ぜられ、溜めた弾丸を少しずつ撃ち込んでいくようにじわじわとズタズタにされた。『シンコペーション』や『Sis.Anger』、『Tales of the Destinies』が初めて披露されるのは東京ドームか。それともアメリカかヨーロッパのツアーか。
2ndアルバム『METAL RESISTANCE』をまだライブで完全には堪能させてくれない。いいや、楽しみは後に取っておこう。お弁当のトマトはすぐに食べたいけど、最後まで残しておこうか。


しばらくBABYMETALは日本を離れる。それでも音楽はいつも傍に居て、変わらず鳴り続ける。"Whenever we are on your side" …その力強さを感じずにはいられない言葉で締めくくられ、かつて枕元で変わらず囁き続けてくれた音楽を思い出した。

この日、熊本で避難中のあるお父さんがBABYMETALの公式Twitterに向けてリプを送っていた。

http://blogs.yahoo.co.jp/humanitysingo1978/42151496.html


そのお子さんの手紙は「ベビーメタル 『いいね』 この曲大すきです」と書かれ、切実な想いが伝わるものだった。

どうか本人たちの目に留まってほしい。
1995年1月、自分が"音楽"に感じたことにあまりにも近い。その頼もしさがBABYMETALにあることを、手紙を読んで改めて思い知った。寝付けずに枕元で鳴り続けていたものがいかに心強かったか。
あの頃、自分も家で寝るのが怖かった。リビングから溢れる光を見つめながら「お父さんとお母さんがまだ起きてる」と確認することで、気持ちを落ち着かせた。自分がそんな心境で聴いた曲を21年経っても忘れないように、この女の子たちもBABYMETALを決して忘れないのだろう。
生きているといつか受け身を取らざるをえない状況に直面し、悲しくなって立ち上がれないことだってある。『KARATE』はそんな時、いつでも心に寄り添ってくれるはず。

"Whenever we are on your side, Remember always on your side Forever..."

このメッセージは、その音楽から女の子たちのもとに届いているに違いない。「君に聞こえているか? 心の声」とあるように、この子たちにとってBABYMETALはまさにメタ太郎のようなヒーローなのだろう。
それは人々に"鋼鉄"なハートをもたらすために、世界中を駆け巡る。

BABYMETALを観ることはもちろんだけど、それを聴く人の気持ちを知ることでもっとその魅力を深く知ることになる。記録より何より記憶に残る。「レディー・ガガが大ファン!」「坂本九以来の53年ぶりの快挙!」といった枕詞より、BABYMETALの音楽が誰かの心に宿ることこそが最も重要に感じる。
"自粛"について考えさせられる今、新木場で魅せられたものがすべての答えのように思う。

「BABYMETALは本当にいた…!!!」

YouTubeや映像作品などでしか観たことがなく、きっとこのような感動を待っている人たちが世界中にまだまだたくさんいるのでしょう。
BABYMETALの音楽が、メタルレジスタンス第4章でより多くの人のもとに届きますように。


「APOCRYPHA - Only The FOX GOD Knows -」
2016年4月21日

新木場STUDIO COAST

01:Road of Resistance
02:ド・キ・ド・キ☆モーニング
03:いいね!
04:あわだまフィーバー
05:GJ!
06:紅月-アカツキ-
07:Catch me if you can

08:META!メタ太郎
09:メギツネ
10:KARATE
11:ヘドバンギャー!!
12:THE ONE - English ver. -


2013年〜現在までのBABYMETALのライブレポートはこちら。

2016年4月3日日曜日

BABYMETAL WORLD TOUR 2016 in The SSE Arena, Wembley @ UK(Live Viewing) - 「たとえ世界がひとつにならなくても」

(イギリス・BBC Radio1 Rock Show 公式Twitterより)


"世界をひとつに"なんて、幼い頃は信じていたかも知れない。

「世界が平和になりますように」とか「友達100人できるかな」とか、部屋の中でゴロゴロと少年マンガを読んでいた夢見がちな頃はぼんやりと思っていた。
それでも、部屋から外へ飛び出すといつの間にかそんな希望は消え去っていた。
学校のクラスでさえ不可能だった。同じ人種なのにたった数十人でも争いごとが絶えない。陰で悪口を放ち、罵ることで溜飲を下げ、憎しみが連鎖する。テレビのニュースを見るといつでもどこでも血が流れている。ネットを開くと今日も誰かが誰かの揚げ足を取っている。嫉妬、炎上、ブロック。誰かを嫌うための新たな飛び道具が生まれていき、人が人を傷つけ続けている。
夢を見ること、それさえも持てない。光と闇の狭間、一人になる。 世界がひとつになんて、なりっこない。
そもそも、そんな夢想家の戯言に唾を吐きかけたいくらいに思うようになった。

でも。それでも。デモじゃない。「でも」だ。朝方6時頃にスクリーンに映し出される光景は、首を横に振っていた。「でも」と訴えかけていた。もちろん首を縦にも振っていた。ヘドバンしていた。
そこは異国の地。12,000人収容の巨大なアリーナ。その客席でたくさんの国旗が上がる。世界各国から来た人たちがそれぞれの国旗を掲げている。360度回転するセンターステージ。そこから見渡す少女たちの姿が映る。その目は潤んでいるように見える。その光は失いかけていた希望を取り戻すかのように力強く、決して消えることのないような確信を抱いていた。
こんなの初めて。こんなに凄いの初めて。って感想をBABYMETALで何度味わえばいいんだろう。日本人未踏のステージで繰り広げるメタル・オペラ。何度も時が止まるような感覚を味わい、非常識を常識に変えるような光景に息をのんだ。
まるで夢を見ているような、そういう気分だった。「でも」、普段は眠っている深夜4時半から朝方6時半にかけて見たものは夢なんかじゃない。
場所はロンドン・ウェンブリーアリーナ。2016年のBABYMETALのワールドツアーの幕開けは、決してひとつになるはずのない世界への希望に満ち溢れていた。

こんな時間にお台場に向かうなんて。まるで大晦日のようだ。22時頃に身支度を整える。普段なら生気を失った顔つきになる時間帯なのに、抑えきれない高揚感が笑顔にする。日出ずる国からロンドンへ想いを馳せ、Zepp Divercity Tokyoで行われるライブビューイングへ向かう。
半年以上前からロンドン・ウェンブリーアリーナでのワンマンライブの開催が発表され、BABYMETALの公式Twitterでは幾度となくそのチケットの購入を促すアナウンスがされていた。
正直、さすがに埋まらないだろうと思っていた。同じロンドンでも2014年のThe Forumは2,000人台、その次のO2 Academy Brixtonは5,000人台、そして今回は12,000人台。まるで桁が違う。今までの倍以上の見積もりから、その成功をひそかに案じていた。
だけど、今は反省している。新曲の『Sis.Anger』で叫ばれる「ばかやろ〜!」が身に沁みる。不可能を可能にし、非常識を常識に変えてきたBABYMETALに、一抹の不安なんて必要ないのだ。

発売されたばかりの2ndアルバム『METAL RESISTANCE』を聴きながら、実質今年初となるワンマンライブに期待に胸を膨らませる。新作は1st『BABYMETAL』を上回る大反響で、iTunesの世界各国のロック/メタルチャートで初登場1位を獲得した他、アメリカのAmazonの総合アルバムチャートで1位、その後イギリスの総合週間チャートで同じく初登場のWeezerやMogwaiの新作を抑えて15位にランクイン。これは歴代の日本人アーティストで最高位だという。“坂本九以来の成功”は本当になるかも知れないし、もうすでになっているのかも知れない。話題沸騰の中で開催される今日のワンマンライブは、決して見逃すわけにはいかない。
東京テレポート駅に降り立つ。ここはイギリスじゃない。神奈川県から2時間もあれば到着できる。今回のライブは全国のZepp会場でリアルタイムでライブビューイングされ、日本国内でもおよそ12,000人近い観客が遠く離れた異国の地へ向けてフォックスサインを掲げる。

その一部となる会場、Zepp Divercity Tokyoの周辺は深夜にも関わらず人だかりが見える。あろうことか、行き慣れているはずの場所なのに迷子になる。
会場のある複合施設の建物内がいつもの通路が深夜のため塞がれていて、赤と黒を基調とした服装の大人たちが一斉に右往左往している。ショッピングモールを彷徨い歩く姿がジョージ・A・ロメロ監督の映画『ゾンビ』みたいになっている。BABYMETALのライブに飢えているという点では確かにその通りだ。大勢の人々が壁の地図を何度も確認して、開いてる通路を探す。若干、『バイオハザード』みたいな楽しみ方を味わっている。全クリしたらBABYMETALのライブビューイングだ。




建物の外側を周って無事、ゲームクリア。まるでラスボスのように立ちはだかるガンダムのふもとに行列があり、そこで友人とも落ち合う。小雨が降りしきる中、妙な静けさが漂う深夜1時に黒装束は一斉にZeppに入り、もう一つの島国で始まるライブを今か今かと待ち焦がれている。
開演前はThe Forumでのワンマンのライブ映像がフル尺で上映され、全身骨タイツのスタッフがステージに上がって客席を煽る。だけどスタッフ同士にあまり統一感がなく、動作がほとんどバラバラだったのが微笑ましい。深夜のお仕事、お疲れ様です。映像のテンションとステージの骨たちが全く噛み合わず、終始シュールな光景が繰り広げられたおかげで目が冴えました。

あの日あの時、この目で観たThe Forumのワンマンライブ。目の前で観ていた少年は終始飛び跳ね、隣で観ていた女の子グループの一人はメンバーが登場すると泣き出した。奇跡のような光景の連続だった。それを記録した映像からWembleyの生中継に繋がるのは感慨深く、2年前の興奮がもう間もなくで更新されると思うと胸の高まりが収まらない。
開演の4時半が近づく。スクリーンは待機画面が続く。深夜の静けさの中、これから始まる“伝説”を思うと心拍数が上がっていく。
すると突然、BABYMETALのメッセージ映像が上映される。「皆さん、朝早くからありがとうございます!」かれこれ4時間近く立ったまま待っていても、その一言で一気に癒されるような、眠気が吹き飛ぶような。その回復力は計り知れない。

映像が切り替わり、ウェンブリーアリーナの中継が繋がる。両サイドに煌々と照らされた“BABYMETAL”の赤い文字。海外公演とは思えない規模のステージ。中央から長く伸びた花道とその先にあるセンターステージ。
そして何より、ピットとスタンド席に詰められた人の数。
それが映し出されると、Zepp Divercity Tokyoの客席で「うぉぉ…」「すげぇ…」とため息が漏れる。BABYMETAL、ほんとにウェンブリーを埋めたんだ。これ、日本じゃないんだ。開演を待つ人々の表情が映し出される。海外のファンが大半を占め、その年齢層の幅広さと人の多さから、どこを切り取っても感嘆の声が上がる。

深夜4時45分過ぎ。ついに会場内が暗くなり、現地の地鳴りのような歓声がZeppのスピーカーから鳴る。ライブビューイングの会場もそれに匹敵するくらい、大きな歓声で“伝説”を迎え入れる。
さあ、時は来た。
古びれた教会のようなセットが青白い光に照らされる中、オープニングムービーが上映される。
“METAL RESISTANCE EPISODE4”と題されたムービーは、いつものように「A long time ago in a HEAVY METAL galaxy far, far away...」と『スターウォーズ』を模したナレーションから始まる。
真っ赤な炎が宇宙空間で燃え盛り、それが地球全体を火の海に染めるイメージ。それは世界征服を意味しているのか、はたまた。「生と死。始まりと終わり。この終わりなき繰り返し。」と語りが続く中、その炎は∞(無限大)の形を描き、また新たな星を作るかのように“THE ONE”のシンボルに変わる。
"The Spirit of HEAVY METAL"という言葉が多用されるのは、昨年受賞したKerrang! Awardsの『The Spirit Of Independence Award』から来ているのか。それとも何かと縁のあるバンド・Bring Me The Horizonの最新アルバムの『That's The Spirit』からなのか。その強靭なSpirit(精神)はここにいる誰もが知っているはずだ。厳かな雰囲気を作り出すムービーが毎度ながら気持ちを高ぶらせる。
"THE ONE"のシンボルが映像の下部へフレームアウトすると、ステージセットの中央上部にそれが移動する。同時に、3人の白装束が中二階についに姿を現わす。『KARATE』MVに登場した骸骨の鉄仮面を被り、その顔は見えない。途端に大歓声が起こり、その白装束にBABYMETALの到来を誰もが信じて疑わなかった。
ところが…

「Now is the time to join the METAL RESISTANCE !」
『BABYMETAL DEATH』で雷が打ち付けるようなイントロが鳴り出し、音に合わせてステージがストロボにより激しい光で連打される。途端に、人々の視線は中二階からセンターステージへと飛躍する。
なんと、白装束はBABYMETALではなかったのだ。
顔の前でフォックスサインをクロスするメンバーがいきなりセンターステージに姿を現し、大勢の観客が不意をつかれる。さっきまで見ていたものはBABYMETALではなかった。それに向けて歓声を上げてしまった。これが“偶像”崇拝なのだろうか。この3人は『KARATE』MVでも描かれていたように、メンバーそれぞれの“もう1人の自分”なのだろうか。
最大の敵は自分自身。何かに勝つわけでもない。誰かより優れるわけではない。勝ったか負けたかは関係ない。大事なことは本気かどうかだけ。
バーン!と大きな効果音が鳴る。まるで“自分との戦い”を描くような壮大なスケールのライブが今、始まる。

ひとしきり「DEATH!」を連呼する。ロンドンの客席はじっくり観ようとする人が多いのか、少し静かな印象を受ける。Zeppでは現地から離れていようが関係なく、イギリスと日本との距離を縮めていく。まるでメンバーがすぐそこにいるかのような熱気に包まれ、身体中から汗が滲み出る。
そのままメンバーはセンターステージでトライアングルを描くように立ち、後方のステージに等間隔に並ぶ神バンド4人から援護射撃を受けながら『あわだまフィーバー』へ。Our hourは日本時間5時。 Your hourは現地時間21時。時差を掻っ攫うような熱量がスクリーンから伝わり、メンバー同様に両腕で輪っかを作って踊り出す。MOAMETALの必殺の笑顔、YUIMETALのキレッキレのダンス、SU-METALの一切ブレることのない歌声。三位一体で迫ってくる世界最強のトライアングルに酔いしれるOur hourは、まだ始まったばかりだ。

『いいね!』でその興奮はますます加速する。『METAL RESISTANCE』がリリースされたことでセットリストに幅が生まれ、聴き馴れた曲も新しい曲もどれが来ても心の準備が出来ていない。この史上最大規模の現実逃避行に、胸の鼓動が収まる気配がない。
「Yo! Yo!」と掛け声を上げながらセンターステージからメインのステージへ移動し、SU-METALが「ウェーンブリィーッ!」と可愛らしくコールを促す。「キツネだお」のヘドバンが終わった後のSU-METALの咆哮するシルエットが美しく、それがデスクトップで流れるならきっとスクショの音が鳴り止まないっ。
間髪入れず『ヤバッ!』へ。何度もライブで披露されてきたこの新曲は、ファンの間で『違う』という仮タイトルで認識されていた。リアルタイムの映像で観ると振り付けがじっくりと堪能でき、その表情も掴み取れる。YUIMETALとMOAMETALはまるでマンガのように分かりやすく、サビの「ヤバッ!」でΣ(゚Д゚)と目を大きく開いた驚いた顔から、2度目の「気になっちゃってどうしよう」から/(゚´Д`゚)゚\と困り顔で頭をパンパン叩く仕草に切り替わる。その一連の動作が顔文字で表せるくらい伝わりやすい。これが言語の壁を越える一つの要因になっているに違いない。そして、とにかく可愛らしい。

初っ端から連続するハイテンションから雰囲気が一変し、聴き覚えのあるピアノとストリングスのシリアスなメロディが。一部アレンジを加えた新バージョンのオケが鳴り、『紅月-アカツキ-』のオープニングを盛り上がらせる。
バックモニターに紅い月が浮かび上がる。センターステージに姿を現したSU-METALが「アカツキだーっ!」と叫んだ後、マントを翻して幾多も火柱が上がる花道を駆け走る。いきなり今日のハイライトか。足元から脳天まで鳥肌がゾワッと広がる。ダークヒロインのごとき佇まいが凛々しく、何かに取り憑かれたような表情を見せる。それらは時間を止め、先ほどまでノリにノっていた客席を一斉に地蔵にさせる。心が本当に揺れ動いた時、人は微動だにできないのだろう。核心に触れ、確信を持つ。泣く子を黙らせ、泣く大人を叫ばせる。そんなSU-METALの鋭い眼光が、遠く離れた彼女の生まれ故郷にまで確かに届いている。

その後はまた雰囲気が一変し、三三七拍子のドラムのリズムに沿ってYUIMETALとMOAMETALが手を叩く。『GJ!』はまるで分身したかのような2人が心を重ね合わせるように踊り、ラップメタルを炸裂させる。『おねだり大作戦』より難易度がアップしたようなキレッキレのダンスに目を奪われる。「もっともっとホラ! もっともっとホラ!」で片足を上げて、手をカモンカモンと動かして煽ってくる。この日が初披露だからか、客席ではまだその呼応が完成されていない。今後のライブでどんどん出来上がっていくのが楽しみで仕方ない。
神バンドのソロが終わると、『Catch me if you can』へ。イントロが始まるとバックモニターが真っ赤に染まり、中二階に現れた3人がシルエットに。2014年の幕張メッセ・イベントホールでのライブを彷彿とさせる演出に沸く。途中から階段を降り、メインのステージでかくれんぼを続ける。12,000人キャパの会場でその姿が見つかり、さらにその後拡散されていくのだろう。なぜなら、この後はアメリカの人気番組『The Late Show』の出演が待っているのだから。客席が映ると幸せそうな顔をした大人たちがサークルモッシュで“ぐるぐるかくれんぼ”を体現し、世界は広くてもその楽しみ方はどこも同じなんだと知ると笑ってしまう。

『ド・キ・ド・キ☆モーニング』は3人が倒れ込んでから目を覚ますタイミングのカメラのスイッチングに感謝したい。「リンリンリンッ」でカメラが激しく切り替わり、一瞬にして3人の寝起きの表情を正確に捉えていた。
そして話題を独占するであろう、『META! メタ太郎』へ。音源が発表された時はネットで賛否を見かけたが、判断するのはまだ早い気がする。BABYMETALはパフォーマンスありきで完成するのだ。
ヒーローソングのように誇り高く前進するようなマーチ調のリズムに乗り、YUIMETALとMOAMETALがウルトラマンのように片手を突き出す。トコトコと空を飛ぶように移動する。子どもが大喜びしそうな曲調だけど、その正体はバイキングメタル。図太い音に合わせてステージ上で美しいシンメトリーを作りながら移動し、一部「かっとばせ〜!」風に応援団長のように両手を広げるYUIMETALとMOAMETALと、一本足打法でフルスイングするSU-METALのパフォーマンスが楽しい。

この日2回目のムービーが始まる。『スターウォーズ』を模したテロップが流れ、“DEATH VADER(デス・ベイダー)”とされる人物のイラストが大写しに。YUIMETALとMOAMETALの持つライトセイバーのようなものが“4”の字を描き、「Goodbye, father」となんだか無視できない字幕が。
「May the 4th be with you」など、ふざけすぎているデス・ベイダーの低い声のナレーション。“EPISODE for BLACK BABYMETAL”のテロップのforが4に変わると、もうあの曲しかない。『4の歌』はYUIMETALとMOAMETALが中二階に姿を現し、イントロで肩を並べて階段を降りていく。
上手と下手と、花道を伝ってセンターステージへ。2人は英語で煽り、メタルレジスタンス第4章が4月の初っ端から4で染まる。スクリーンの中でも外でも大勢の観客が指を4に掲げる。客席では誰もが笑顔を見せ、日本より老若男女で幅広い客層に感じる。少年少女からおじさんおばさんまで、気優しそうなアイドルヲタから屈強なメタラーまで、決して混ざり合わないような人たちが「よんよんっ!」と叫んでいる。もはや当たり前になっているが、よくよく考えてみると異常な光景である。

『Amore-蒼星-』はバックモニターに大きな翼が浮かび上がり、その正面で歌い始めるSU-METALにまるで羽根が生えたように映る。初披露のこの曲は『紅月-アカツキ-』と対になっているようで、照明が終始青みがかることでその歌声と手を組んで世界観を作り上げる。
途中、SU-METALの膝が崩れてその場にひざまずく。音が鳴り止む。震える足元が映る。歓声が轟く。その声に呼応するかのように立ち上がる。再び歌い始める姿がドラマチックだ。反応せざるをえない展開を作り出し、観客のライブの楽しみ方が一斉に鑑賞ムードから参加スタイルに変わる。アクシデントの演出が功を奏し、12,000人規模の“自分との戦い”を盛り立てる。

『メギツネ』が終わり、『KARATE』へ。何度も繰り出されるパンチと、体心をブレることなく安定させるダンス。オープニングで登場した白装束=もう1人の自分は3人の心のどこかに潜み、このステージをどう見ているのだろうか。
昨年の横浜アリーナで初めて披露された時は、直前の松岡修造のイラストが出てくるムービーにちなんでファンの間で『修造』と呼ばれていた。若干ふざけた印象さえ持っていたが、今日はまるで違う。3人が倒れ込み、SU-METALがMOAMETALとYUIMETALの手を引っ張って起こし、メンバー全員が身体を引っ付け合って前進していく。この曲とずっと付き合っていくことになるんだろう。そのたびに3人が目を合わすパフォーマンスをすることで、チームワークを互いに確認し合えるような。
止まることなく突き進む“自分との戦い”は、この曲でその勝敗がつく。3人で励まし合うよう に並んで歩く姿に今日までのドラマを想像してしまう。言葉はなくても、見つめ合うことで互いに意思疎通し合っているように見える。「自分に勝つ」それはステージの大小関係なく、誰もが抱く人生のテーマだ。一切怯むことなく立ち向かう姿から、この物語がBABYMETALのみならず、それを観ている人たちの物語にもなる。次のページをめくるように、3人に背中を押される人も少なくはないはずだ。

「Why do people hurt each other?(なぜ人は傷つけ合うの?)」いつものムービーが始まると、ピットで幾つか空洞が生まれる。冒頭からウォール・オブ・デスが数カ所で発生し、YUIMETALとMOAMETALが火柱が上がるステージの端から端へ全力疾走する『イジメ、ダメ、ゼッタイ』へ。
観客が一斉にイジメ「ダメ!」キツネ「飛べ!」とジャンプする光景が映し出さると、改めてこれが日本ではないことに驚く。
人と人とが傷つけ合うこの世界を否定するように、もしくは希望を込めるかのように、両腕でXを作り出す。Zeppの会場も現地と同じような一体感に包まれ、もはや映像の中に放り込まれたかのようだ。

そして『ギミチョコ!!』へ。幾多のステージで多くの人々の視線を奪ってきたこの曲も、初披露の2013年12月の幕張メッセ・イベントホールから数えて2歳半になる。道なき道を切り開くキッカケになった。そのMVが撮られたライブテイクより遥かに成長したパフォーマンスが繰り広げられる。たとえ幾ら年を取っても衰えることなく、ますます洗練されていく。
MOAMETALが「I can't hear you!」、YUIMETALがいつもの「Louder! Louder!」と違って「Make some noise!」 と煽り、SU-METALの「Let's sing together!」で会場全体が手拍子をしながらシンガロング。当初は静かだった客席も今や喧騒の渦が発生し、ライブが進むにつれて温まってきている。それが今、最高潮に達した。

いよいよライブはクライマックスに差し迫り、ムービーが始まる。『METAL RESISTANCE in UK』と題された映像は、壮大なストリングスをBGMにイギリスにおける大きな出来事を一枚ずつ写真で見せる。
2014年の初めての海外のフェス出演・Sonisphere Fes、The Forum、O2 Academy Brixton、2015年のKerrang! Awards、Metal Hammer Golden Gods Awards、Reading&Leeds Fes。どれも印象的な出来事ばかり。道なき道を歩んできた歴史がスライドされると、そのたびに目頭が熱くなる。そしてその最後には2016年の今、“THE SSE ARENA WEMBLEY”の文字が浮かび上がる。
大歓声の中、BABYMETALの文字がたくさん光を浴びていくCGの映像が映し出される。ナレーションによると、その光は彼女たちを見つめる人々=メタルの魂を意味する。Zeppのスクリーンには「この会場の模様が映し出されます。ステージのカメラに注目してください。」などといったメッセージが突然浮かび上がり、会場にどよめきが走る。
まさか、この会場の映像がリアルタイムでロンドンに届くとは。両サイドのモニターに浮かび上がる「Whenever We are on your side. Remember Always on your side」を約束するかのごとく、ウェンブリーアリーナのステージにこの会場の映像が映し出される。ロンドンと東京がまるで鏡のようにお互いの姿を映し合い、ステージに歓声を上げる。まるでキャパシティが全国のZepp会場を合わせた24,000人に膨れ上がるかのように、すべてがひとつになる。
つまり、『THE ONE』に。

壮大なバラードが幕を開けると、中二階で3人は黒い衣装を身に纏って姿を現わす。それぞれの目は一点を見つめ、この世の理の全てを貫くように力強い。一歩一歩ゆっくりと階段を降り、SU-METALが全編英語で歌唱する。
YUIMETALとMOAMETALはその場でジッと佇み、願いを込めるかのように片方の人差し指を差し出し、夢を信じるかのようにもう片方の人差し指を差し出す。その2本の指が親指とともに三角形を作り出し、ひとつになる。
ウェンブリーの客席が映し出されると、その奇跡のような光景に胸を打たれる。
客席でその国から来た人たちがそれぞれの国旗を掲げている。日本の日の丸国旗はもちろん、アメリカからヨーロッパ諸国の国旗まで。知らない国旗もたくさん見える。様々な国旗が取り囲み、360度に回転するセンターステージが3人にそれを見せる。
BABYMETALはそこから見える景色から何を感じただろうか。感極まった様子のMOAMETALの表情が映ると、感情が堰を切るように溢れ出す。
その景色は、今まさにバラバラになりつつある世界に訴えかけているかのようだ。この歌のテーマである“世界をひとつに”が切実に感じられ、より壮大なものにする。
3月末、ベルギーのブリュッセル空港で爆破テロ事件が起きた。以前フランスのパリのコンサートホールを中心に起きた同時多発テロ事件も含めて、テロと移民問題で揺れるヨーロッパ諸国でこのような光景が繰り広げられることが胸に迫る。
ひょっとして今日のライブも、タイミングが悪ければ開催が危ぶまれたかも知れない。海外のBABYMETAL関連の掲示板を見ると、ベルギーのテロ事件を受けてフライトをキャンセルしたお客さんもいたらしい。 世界が混迷を極める中、まるでここが世界の中心のように錯覚する。いや、これは錯覚なのだろうか。
最後、3人が中央に寄り集まってフォックスサインを重ね合わせる。鳥肌が収まらず、全身の血が入れ替わるような確かな感覚を味わった。

“世界をひとつに”なんてありえないことかも知れない。だけど、今までに何度も非常識を常識に変えてきたからこそ希望を抱いてしまう。
たとえ世界がひとつにならなくても。でも…
その「でも」が力強く、説得力を帯びている。言い訳じゃない。逃げ道じゃない。輝きに溢れた「でも」に、心が激しく揺さぶられる。
時折ステージではZeppの客席が映し出される。これが“離れていても心はひとつ”なのか、3人の基盤となり続けるさくら学院のテーマを思い出す。客席の国旗の中にはさくら学院のフラッグもあり、それがひとつの国のように見えて微笑ましくもあり、3人の生まれ故郷を明確に示すかのように感じて涙腺を刺激する。 SU-METAL、YUIMETAL、MOAMETAL、神バンド。7人のステージを様々な国旗が彩り、新たなワールドツアーの開催を祝福していた。
そしてライブは終盤を迎える。ムービーにはBABYMETALの旗がたなびくイラストが映し出され、道なき道を描いたような荒野の先に3人の旗がある。
その旗を今日、ここに新たに立てにきた。
様々な国旗が掲げられる中、まるでひとつの国を作るかのように3人が旗を抱えて登場する『Road of Resistance』
それは月面着陸のごとく歴史に深く刻まれ、革命のごとく新しい時代を切り開こうとする。

新たなストーリーに自ら息吹をもたらすため、少女たちは小さな身体で見えない鞭を激しく打ち付ける。それを打たれた馬のように客席ではサークルモッシュが発生し、そのサウンドとパフォーマンスの迫力となんとか会話しようとする。
「Wow Wow」とシンガロングする中盤はすべての音が鳴り止み、観客の声だけが響く。旗を片手にセンターステージで拳を突き上げるメンバーに向けて、まるで世界をひとつにするような気概に溢れた眼差しで声を上げる。

その時の3人の表情は今までに見たことのないものだった。最後の力を振り絞るかのように呼吸を合わせてダンスするSU-METAL、YUIMETAL、MOAMETAL。それを観ている我々が知らないドラマを、この子たちは何遍も抱えてきたことだろう。
活動は決してラクなものではなく、不安とプレッシャーに押し潰されそうになった夜もあったのかも知れない。彼女たちは超人として生まれたわけではなく、日本の広島、神奈川、愛知で生まれた普通の女の子たちだ。日々を積み重ねることで力を身につけ、それぞれが歌、ダンス、アイドルへの「好き」を極めた。それがプロデューサー・KOBAMETAL氏のメタルへの熱量とクロスオーバーし、前人未到の地に降り立つことになる。プロフェッショナルなスタッフたちと手を組み、未知なる世界を開拓している。
BABYMETALを見ていると、叶わない夢なんかないじゃないかとさえ思えてくる。大事なことは、本気かどうかだけ。それさえあれば、道なき道だって見つけられるような気がしてならない。
「命が続く限り 決して背を向けたりはしない」
SU-METALの姿から、これしかない。これに懸ける。そんな迫真の表情ばかりで、ライブ中にふとその顔が大写しになると地蔵になる。突き上げていた腕も固まるくらい、その表情、歌声、気概に圧倒される。世界を迎え撃つ覚悟ができている。
YUIMETALは一時期痩せた姿に心配を隠せないこともあったが、それが失礼にさえ思える。自身の幼くて可愛らしい風体に甘えることなく、引っ込み思案な性格なのに勇敢に立ち向かっていく姿がただただかっこいい。
MOAMETALはその天真爛漫な笑顔で次から次へと人々を撃ち墜とし、最高を更新し続ける。BABYMETALから感じる“怖いもの知らず”の強さは、この子の眼差しからきている。

まるで3人を通して世界を見つめているような気持ちになる。ガッツポーズで床に滑り込むようにしゃがみ、客席もそれに倣って拳を天に突き上げる。
「We are!」「BABYMETAL!」 「We are!」「BABYMETAL!」 「We are!」「BABYMETAL!」
何度もコール&レスポンスし、中二階に登場した銅鑼をめがけて無邪気に駆け上がる。SU-METALが全身の力を振り絞るかのように銅鑼を叩くと火花が散り、音が鳴り止む。
スタンド席の観客も一斉に立ち上がり、大歓声に包まれる。その中で階段を降り、ウェンブリーアリーナを見渡す3人。SU-METALは先ほどまでの表情と打って変わり、少女のような顔になる。18歳の女の子であることをすっかり忘れていた。感極まり、少し泣いている印象を受ける。
様々な国旗がたなびく客席。どこもかしこも目を輝かせる人たちで埋まり、その光を浴びるように3人の瞳が輝いている。それは光か、はたまた涙か。それぞれが中元すず香、水野由結、菊地最愛と世を忍ぶ仮の姿へと戻るかのようで、素の表情にさえ見えた。
それは鉄仮面が壊され、もう1人の自分が現れたのかも知れない。“自分との戦い”の決着が付いたのだろう。白から黒へ、または黒から白へ反転するように、階段を降りる際は世界が熱狂するスーパーヒロインと10代の日本の女の子との間を何度も行き来していた。

MOAMETALは「You are also precious to me. I love you!」と言い、YUIMETAL「It is thanks to you that we are here today! We love London!」とそれぞれフォックスサインを掲げ、満面の笑みで挨拶する。
SU-METALが「We are going back to Japan」と発すると、少し残念がるロンドンの観客。しかし間髪入れずに「But remember we are always on your side!」と言うと、再び歓声が。
「See You!」
いつもの決まり文句で鮮やかに去っていく。最後の挨拶以外はMCは一切なく、ノンストップの“メタルレジスタンス第4章”が大歓声に包まれながら幕を閉じる。

この物語はまだまだ続く。そう確信に近いものを感じた。いつ終わるか分からないBABYMETALの物語には、きっとまだまだ先がある。

奇しくも、この日が日本人初のウェンブリーアリーナ公演になった。
いや、「なってしまった」と言うべきか、本当は3月12日にX JAPANが先陣を切ってワンマン公演を行う予定だったが、メンバーのPATAの緊急入院により開催が来年に持ち越されてしまった。それもあって、「日本人初の快挙!」と素直に喜べないところがある。
今までのBABYMETALの活動のそのほとんどがX JAPANの後追いといっても過言ではない。ダメジャンプ、クリスタルピアノ、銅鑼、「アカツキだー!」から、目黒鹿鳴館、日本武道館の『赤い夜』『黒い夜』のタイトルと「Japan...」の連呼まで、ありとあらゆる部分でリスペクトを捧げてきた。
そういう意味では、4月1日の“FOX DAY”に発表された9月19日の東京ドームまでの筋書きが崩れてしまうことになった。でも、それによりBABYMETALはついに自身の物語を歩むことになるのかも知れない。『THE ONE』の歌詞は始まりにも終わりにも読み取れる。X JAPANの東京ドームの解散ライブのタイトルは『最後の夜』。過去に『青い夜』を『赤い夜』、『白い夜』を『黒い夜』と反転させたBABYMETALのことだから、これが『最初の夜』へと反転するのか?
この壮大なストーリーは、まだ始まったばかりに違いない。

Zepp Divercity Tokyoの会場を出ると空が白みかけていた。深夜から朝にかけて観ていたことをすっかり忘れていた。まるで夢の世界から目覚めたようだけど、全部夢じゃない。でも夢を見させられた。その正体は、紛れもない現実だった。
深夜4時から朝方6時まで、感覚が最も研ぎ澄まされる時間帯のBABYMETALは格別だった。かつて不安で眠れなかった夜も思い詰めた夜も、フォックスサインを掲げた夜ですべて上書きされるだろう。
ロンドンから日本へ、時差8時間をリアルタイムで繋いでくれたライブビューイングさんに大感謝です。

BABYMETALは“メタルで世界をひとつに”という壮大なテーマを身に纏うことになった。
でも正直、世界はひとつにならなくていい。「なってほしい」その願いこそが、「なるために」そこに向かうことこそが重要に思う。
“自分との戦い”の決着は世界が決めることではない。己自身が一歩でも進むことでその景色は変わり、世界が変わる。世界はいつだってこの目で見る景色でしかない。規模が小さくても大きくても、それは変わらないのだろう。
この日のBABYMETALにはそう教えられた。

世界各国のヒットチャートを賑わそうが、前代未聞の記録を更新しようが、いつまでも根強く残る場所は人の心の中だ。
一過性のものや刹那的なものに興味はない。 そこで目にしたものは“自分との戦い”がテーマの後世に語り継がれるべき優れた作品であり、強烈な映像体験だった。
この日のライブは海外の人が9割を占めていたそうだが、その中に小さなお子さんの姿もあった。YouTubeやTwitterに投稿されたその姿はどれも、日本から来たヒロインに熱狂し、恋焦がれている様子だった。
中でも、クリスマスプレゼントにチケットをプレゼントされた姉妹が印象的だった。チケットを手に取った時は発狂レベルで大喜びしていたが、ライブになると一瞬でも見逃してたまるものかと言わんばかりに真剣に鑑賞する姿が微笑ましい。

Babymetal christmas (headphone warning)   - ウェンブリーのチケットを貰って大喜びする姉妹
Babymetal bliss - 真剣にライブを鑑賞する姉妹

そして、BABYMETALの魅力を表す写真として何よりも広めたいのが、Twitterに投稿されたこの一枚。

https://twitter.com/hayleycodd/status/716428345249021953


まさにBABYが楽しむMETAL。子どもから大人まで、アメリカからヨーロッパまで、全ての人がBABYMETALの前ではこのような顔をしているのだろう。

この少年からしてみたら、“世界をひとつに”だって信じて疑わないのかも知れない。


BABYMETAL WORLD TOUR 2016 in UK
2016.4.2 THE SSE ARENA WEMBLEY
(Zepp Divercity Tokyo - LIVE VIEWING)

01. BABYMETAL DEATH
02. あわだまフィーバー
03. いいね!
04. ヤバッ!
05. 紅月 -アカツキ-
06. GJ!
07. Catch me if you can
08. ド・キ・ド・キ☆モーニング
09. META!メタ太郎
10. 4の歌
11. Amore -蒼星-
12. メギツネ
13. KARATE
14. イジメ、ダメ、ゼッタイ
15. ギミチョコ!!
16. THE ONE - English ver. -
17. Road of Resistance


2013年〜現在までのBABYMETALのライブレポートはこちら。